愛知県愛西市で、新型コロナワクチンの接種後に40代の女性が死亡してから、1か月が経った12月5日、妻を失った男性を改めて取材した。妻はなぜなくなったのか、男性はその答えを求め続けていた。 ■玄関には帰りを待ち続ける愛猫…“ワクチン接種後に女性死亡”から1か月 愛西市に住む、飯岡英治(いいおか・えいじ 45)さん。 1か月前、17年間連れ添った最愛の妻・綾乃さん(42)を突然失った。 飯岡英治さん:「1か月ですね、今日で。これだけ長いこと離れていることが今までなかったので、すごく寂しくて、つらくて、もう会えないと思うと…悲しいですね」
可愛がっていた猫のキクちゃんは、いまも玄関に座り綾乃さんの帰りを待っている。 飯岡さん:「ペットたちも、妻が急にいなくなったから元気なくしてしまいましたし。これからもっと一緒に2人で幸せになろうと思っとったのに、何でこんなことになったのかな…」 ■開示された資料はほとんどが黒塗り 遺族「何をこんなに隠すことが…」 11月5日、亡くなる直前に綾乃さんが向かったのは、新型コロナワクチンの集団接種会場だった。 愛西市などによると、BA.5に対応したファイザー社製のワクチンを接種(4回目の接種)した5分後に容体が急変。 綾乃さんは息苦しさを訴えたが治療薬は投与されないまま、血の泡を吹くなどすると心肺停止に…。 搬送先の病院で死亡が確認。死因は急性心不全とされた。 愛知県医師会の渡辺嘉郎(わたなべ・よしろう)理事:「看護師が女性の体調変化に気づいた時点で救護室に運ばず、その場でアドレナリンの筋注(筋肉注射)をできなかった体制に問題がありました」 11月17日、愛知県医師会は独自の検証結果を報告。「アナフィラキシーが強く疑われた」としたうえで、当時の接種会場における体制の問題を指摘した。 また、アナフィラキシーだった場合には「最重症型」とみられ、アドレナリンを打ったとしても救命できなかった可能性が高いとしたものの、遺体が解剖されていないため病態の解明に至らなかったとしている。 愛知県医師会の野田正治(のだ・まさはる)副会長:「カルテの記載では解剖の話もしたんだけれども、それについては(夫が)お答えにならなかった」 しかし…。飯岡さん:「このカルテには、解剖のことは一切書いていない」 飯岡さんは説明を受けていないと言い、入手した病院のカルテにも解剖のことは記されていなかった。 また、飯岡さんや東海テレビが情報公開を求めて開示された資料は、ほとんどが黒く塗りつぶされていた。 飯岡さん:「何をこんなに隠すことがあるんでしょうね。やった内容まで隠す必要ないじゃないですか。ってことは、何か不都合なことがあるから隠しているってことですもんね」<綾乃さんの日記>「11月2日」「コレクションボードとソファを購入。来るのが楽しみだ」 ミニチュアづくりが趣味だった綾乃さん。それらを飾るために、生前に夫婦で選び楽しみしていたキャビネットが届いたのは、亡くなって10日あまりが経ったころだった。 飯岡さん:「心の整理がつかないと、作ったものをここまで運ぶのにたぶん泣き崩れて運べない。今後は彼女の思い出を、全部ここに飾って入れようかなと思っています」 ■月命日に市職員が遺族を訪問も話は平行線のまま… 綾乃さんが亡くなって1か月が経った12月5日、飯岡さんを訪ねた市の職員。 飯岡さん:「市長にまず、妻に挨拶させてよ。線香あげてよ。もう1か月だぜ、妻が亡くなって1か月経っているのに…何も思わん?」医師や弁護士ら第三者で構成する「医療事故調査委員会」を、12月中にも立ち上げる方針と報告した。 また、県医師会が問題があったと指摘した接種会場の「体制」については、マニュアルの徹底や注意喚起を実施したと説明した。 愛西市の担当者:「より早く対応ができる体制について、今一度話し合いをしたということですね」別の愛西市の担当者:「今まで以上に時間をかけて…」飯岡さん:「今までの時間が短かったっていうことですよね?理解できないようなことをやっていたと」別の愛西市の担当者:「短いということではないですが、より入念に確認をしているということです」 また、開示された資料の「黒塗り」については…。飯岡さん:「でも黒塗り出してきたぜ?」愛西市の担当者:「検証させていただくことになります。委員会では、きちっと資料として…」飯岡さん:「それは僕ももらえるの?その資料」愛西市の担当者:「その資料は、あのー…」飯岡さん:「そりゃ、もらえんとおかしいでしょ。僕はね、ただ妻が何で亡くなったかを知りたいだけなんだよ。ずっとそうやって言っとるんだよ。何を隠すことがあるの?」 約2時間、話は平行線のまま。飯岡さんは、市の説明が不十分だとして詳しいスケジュールなどを改めて報告するよう求めた。 ■市議会でも市の対応について取り上げられる 市長「まずは医療事故調査委員会をしっかりと開催」 一夜明けた12月6日。 吉川三津子(よしかわ・みつこ)愛西市議:「市は発注者としての責任をどう考えているのか、お伺いいたします」市議会でも、市の対応についての質問が出た。吉川市議:「こういったマニュアルを当日のスタッフ等に共有できていたのか?」市の担当者:「集団接種を始める前に、そういった部分の共有はされております」海部医師会が作成したマニュアルについて、接種会場のスタッフへの共有は十分だったと説明した市の担当者。 また、飯岡さんが強く求めていた市長の弔問については…。吉川市議:「今でも遅くないので。(飯岡さんは)市長を責めるつもりでおっしゃっているわけでは決してないんです。線香一本あげてほしいという思いなんですが…」日永貴章(ひなが・たかあき)愛西市長:「責任が非常に、我々としてもあるんではないかという風に考えております。まずは、医療事故調査委員会をしっかりと開催して、その調査結果を真摯に受け止め対応させていただくべきだという風に判断いたしております」 飯岡さん:「市が言う誠意のある対応っていうのが、実際何なのかというのが一切見えてこない。調査委員会はもちろんやって欲しいです。人間として遺族に向き合う、市として、ちゃんと心の通った対応をしてもらいたいんです」
愛知県愛西市で、新型コロナワクチンの接種後に40代の女性が死亡してから、1か月が経った12月5日、妻を失った男性を改めて取材した。妻はなぜなくなったのか、男性はその答えを求め続けていた。
愛西市に住む、飯岡英治(いいおか・えいじ 45)さん。
1か月前、17年間連れ添った最愛の妻・綾乃さん(42)を突然失った。
飯岡英治さん:「1か月ですね、今日で。これだけ長いこと離れていることが今までなかったので、すごく寂しくて、つらくて、もう会えないと思うと…悲しいですね」
可愛がっていた猫のキクちゃんは、いまも玄関に座り綾乃さんの帰りを待っている。
飯岡さん:「ペットたちも、妻が急にいなくなったから元気なくしてしまいましたし。これからもっと一緒に2人で幸せになろうと思っとったのに、何でこんなことになったのかな…」
11月5日、亡くなる直前に綾乃さんが向かったのは、新型コロナワクチンの集団接種会場だった。
愛西市などによると、BA.5に対応したファイザー社製のワクチンを接種(4回目の接種)した5分後に容体が急変。
綾乃さんは息苦しさを訴えたが治療薬は投与されないまま、血の泡を吹くなどすると心肺停止に…。
搬送先の病院で死亡が確認。死因は急性心不全とされた。
愛知県医師会の渡辺嘉郎(わたなべ・よしろう)理事:「看護師が女性の体調変化に気づいた時点で救護室に運ばず、その場でアドレナリンの筋注(筋肉注射)をできなかった体制に問題がありました」
11月17日、愛知県医師会は独自の検証結果を報告。「アナフィラキシーが強く疑われた」としたうえで、当時の接種会場における体制の問題を指摘した。
また、アナフィラキシーだった場合には「最重症型」とみられ、アドレナリンを打ったとしても救命できなかった可能性が高いとしたものの、遺体が解剖されていないため病態の解明に至らなかったとしている。
愛知県医師会の野田正治(のだ・まさはる)副会長:「カルテの記載では解剖の話もしたんだけれども、それについては(夫が)お答えにならなかった」
しかし…。
飯岡さん:「このカルテには、解剖のことは一切書いていない」
飯岡さんは説明を受けていないと言い、入手した病院のカルテにも解剖のことは記されていなかった。
また、飯岡さんや東海テレビが情報公開を求めて開示された資料は、ほとんどが黒く塗りつぶされていた。
飯岡さん:「何をこんなに隠すことがあるんでしょうね。やった内容まで隠す必要ないじゃないですか。ってことは、何か不都合なことがあるから隠しているってことですもんね」
<綾乃さんの日記>「11月2日」「コレクションボードとソファを購入。来るのが楽しみだ」
ミニチュアづくりが趣味だった綾乃さん。それらを飾るために、生前に夫婦で選び楽しみしていたキャビネットが届いたのは、亡くなって10日あまりが経ったころだった。
飯岡さん:「心の整理がつかないと、作ったものをここまで運ぶのにたぶん泣き崩れて運べない。今後は彼女の思い出を、全部ここに飾って入れようかなと思っています」
綾乃さんが亡くなって1か月が経った12月5日、飯岡さんを訪ねた市の職員。
飯岡さん:「市長にまず、妻に挨拶させてよ。線香あげてよ。もう1か月だぜ、妻が亡くなって1か月経っているのに…何も思わん?」
医師や弁護士ら第三者で構成する「医療事故調査委員会」を、12月中にも立ち上げる方針と報告した。
また、県医師会が問題があったと指摘した接種会場の「体制」については、マニュアルの徹底や注意喚起を実施したと説明した。
愛西市の担当者:「より早く対応ができる体制について、今一度話し合いをしたということですね」
別の愛西市の担当者:「今まで以上に時間をかけて…」
飯岡さん:「今までの時間が短かったっていうことですよね?理解できないようなことをやっていたと」
別の愛西市の担当者:「短いということではないですが、より入念に確認をしているということです」
また、開示された資料の「黒塗り」については…。
飯岡さん:「でも黒塗り出してきたぜ?」
愛西市の担当者:「検証させていただくことになります。委員会では、きちっと資料として…」
飯岡さん:「それは僕ももらえるの?その資料」
愛西市の担当者:「その資料は、あのー…」
飯岡さん:「そりゃ、もらえんとおかしいでしょ。僕はね、ただ妻が何で亡くなったかを知りたいだけなんだよ。ずっとそうやって言っとるんだよ。何を隠すことがあるの?」
約2時間、話は平行線のまま。飯岡さんは、市の説明が不十分だとして詳しいスケジュールなどを改めて報告するよう求めた。
一夜明けた12月6日。
吉川三津子(よしかわ・みつこ)愛西市議:「市は発注者としての責任をどう考えているのか、お伺いいたします」
市議会でも、市の対応についての質問が出た。
吉川市議:「こういったマニュアルを当日のスタッフ等に共有できていたのか?」
市の担当者:「集団接種を始める前に、そういった部分の共有はされております」
海部医師会が作成したマニュアルについて、接種会場のスタッフへの共有は十分だったと説明した市の担当者。
また、飯岡さんが強く求めていた市長の弔問については…。
吉川市議:「今でも遅くないので。(飯岡さんは)市長を責めるつもりでおっしゃっているわけでは決してないんです。線香一本あげてほしいという思いなんですが…」
飯岡さん:「市が言う誠意のある対応っていうのが、実際何なのかというのが一切見えてこない。調査委員会はもちろんやって欲しいです。人間として遺族に向き合う、市として、ちゃんと心の通った対応をしてもらいたいんです」