世間は不況でも、歌舞伎町のホストクラブでは今日も「太客」が大金を使っている。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、女性の平均年収は302万円。そんななかで太客たちは、毎月、平気で数十万円以上をホストクラブに落としている。彼女たちはいったい、どんな職業に就いているのだろうか。
「ホストに通うために、ひたすら″バイト″を詰め込んでいます。休日はほとんどないですね」
そう語るエミ(仮名・27)の職業は医師だ。彼女は普段の病院勤務に加え、高額なスポットアルバイトを行っているという。
「夜勤は時給が高いから、普段勤務している病院では希望して深夜帯に働いています。スポットアルバイトでは、人手不足の病院に行ったり、大規模会場でコロナのワクチンを打ったり。割の良いバイトだと、時給1万円を超えることもありますね。いまは20代で体力があるからこの働き方ができているけど、今後年を重ねたら開業医にならないと厳しいかな……」
エミのホストクラブでの出費は平均して月40万円前後。十分な大金だ。
「好きな人に会いたい。そのモチベーションがあるから仕事も頑張れる。おかげで、今年は過去最高年収になりました。稼ぐ目的があるって大事だなって痛感しています」
太客にはエミのような医師が多いが、なかでも羽振りがいいのは美容外科医だ。人気美容外科医のナユカ(仮名・32)が語る。
「インセンティブ制なので、個人の業績を上げれば上げるほど、給料は増えます。いかに客をつけるか、という点では、ホストとあまり変わらないかもしれないですね(笑)」
仕事漬けの日々の中で、息抜きとしてホストクラブに通っているというが、そのお金の使い方は派手である。
「やっぱり、お金を使ってこそホストクラブは楽しいですからね。毎回、会計は数十万円になります。その代わり、行く回数は少ないですね。仕事は淡々とこなしていると気づいたら勝手にお金が貯まっていく。それを使う機会があることで、自分の頑張りを認められるような気がしています」
医者しか太客になれないのか、というとそうでもない。リサコ(仮名・35)は大手企業のサラリーマンとして働きながら毎月ホストクラブに通い、多いときは月に3桁以上を落とす。
「激務ではあります。その上、副業もしている。ボーナスがあったときとかにドカンと使うけど、普段も50万~80万円くらいは払っています(笑)。受験勉強を頑張って大学に入って、大手に入社してからもサボらずに仕事してきましたから、それくらいのお金なら何とかなる」
こうしたバリキャリ系のホス狂は意外に多く、コンサルやベンチャーなどさまざまな業種に太客が存在する。また、経営者や漫画家・作家なども健在だ。
それらに加え、最近ではユーチューバーやインスタグラマーといった、インフルエンサーの太客も台頭しつつある。彼女たちに共通するのは、才能がありながらそれに慢心せず、努力を続けてきたという自負があることだ。
昼職にしろ夜職にしろ、大金を稼ぐのは生半可なことではない。働くモチベーションになっていることを考えれば、ホストクラブの存在はある意味女性の社会進出に一役買っているのかもしれない。
佐々木チワワ’00年、東京生まれ。小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。『歌舞伎町モラトリアム』(KADOKAWA)が好評発売中
『FRIDAY』2023年1月6・13日号より
取材・文:佐々木チワワ