「おっさん」を1時間1000円からレンタルできるサービス「おっさんレンタル」。このサービスでは、悩み相談から論文の添削、キャンプ同行まで、ありとあらゆる要望に対応してくれるそうだ。
【画像】大学教授からインドで悟ったおっさんまで…「おっさんレンタル」で働く人々を見る
そんな一風変わったサービスを立ち上げたのは、スタイリストとしても活躍する西本貴信さん(55)。西本さんに「おっさんレンタル」を始めた経緯や10年間続いた理由、依頼の多いレンタル内容などについて詳しく聞いた。(全2回の1回目/後編を読む)
◆◆◆
――「おっさんをレンタルできる」という突飛なサービスですが、今年で11年目を迎えました。
西本 ニーズがあるから不思議ですよね。「もうどうしようもない」という時に利用されているように思います。先日レンタルされたお客さんなんかは、「こんなサービス気持ち悪いから頼みたくない」って思ってたのにレンタルしたそうで。夫の浮気を疑っていて、男の気持ちを知りたいから話してみたいと。
西本貴信さん(55)
――「おっさん」側は利用客の悩みが解決するように何かアドバイスをするのでしょうか。
西本 アドバイスがほしいわけではなくて、ただ聞いてほしいだけという方が多いんです。誰にも言えない、知られたくないというときに利用されているみたいです。
ユーザーの8割が女性なんですが、自分の悩みを友達に聞いてもらうのは申し訳ないという人が多いです。このサービスだと2時間レンタルして言いたいだけ言って解散できる。
特にコロナ禍で流れがはっきりと変わったんですよ。直接会えない分、オンラインやリモートが一般化して、うちは完全にその波に乗っちゃった。ちょうど昨日も宮崎のお客さんからLINE電話での利用があって。決済はLINE Payで、今っぽいでしょ(笑)。リモートで手軽に利用した後、対面でのレンタルを希望するお客さんも多いです。
――そもそも10年前にこのサービスを始められたきっかけを教えてください。西本 僕が40歳ちょっとくらいの時に、電車の中にいた女子高生がおっさんの耳毛がどうのこうのって話しているのを聞いたんです。若い子の中だと、「今日の会社の飲み会におっさんが2人来るぞ」って言われたら「えー、おっさんくるのかよ」って感じでしょう。「おっさん=汚ない、臭い」「おっさんは上から目線で説教をする」というイメージを持つ人が多かったりして。そういう風に、「おっさん」に対する軽視を肌で感じていたんです。――西本さんご自身がそういう扱いをされたということでしょうか。西本 僕自身は若ぶっているつもりなんで、当時そういう扱いを直接食らったわけではないです。逆に、ずっとスタイリストの仕事をしていたから、人を外見だけで見る癖がついていたんですよ。だからどちらかというと「おっさん扱い」をする側にいた。でも、自分が40代になって、いわゆる「おっさん」の年齢に近づいてきた時に、「おっさん」への風当たりの強さを感じるようになって。 僕たちのような職業だと、人をオシャレかダサいかだけで判断する。でも外見って取り繕えるわけじゃないですか。年を重ねた時、内面が成長しているかどうか。そっちに注目したいと思うようになって。 それにマイナスイメージのある「おっさん」が「ありがとう」とお礼を言われる機会を作ったら、「おっさん」っていいものだぞ、みたいなアピールができるかなと思ったんですよね。「おっさんレンタル」での男女トラブル――「おっさん」のマイナスイメージの原因は何なのでしょう。西本 説教をされそうってところですよね。話を被せてきたりマウントを取ったり……でもその一方で「おっさん」のほうが心が開ける、というユーザーさんも多いんですよ。 立ち上げ当初、レンタルできる「おっさん」は僕だけだったんで、全国のお客さんに対応していました。最初は、1000円もらうんだから何か面白いこととかギャグを挟まなあかんのかなと思ったりしてたけど、ただ聞いてほしいんだと言われることが多くて。その時に、これは“傾聴”なんやなと思ったんですよ。ただ話を聞くだけで誰かのためになるんだなって。――女性の利用者が多いとなると、男女トラブルなども連想されますが。西本 公序良俗に反する依頼や営利目的の依頼はNGにしているので、トラブルって全然ないんですよ。強いて言えば宗教の勧誘に遭うくらいかな。 お客さんからお叱りを受けることはあります。「お説教臭かった」とか「上から目線だった」とかが多いです。3回クレームの入った「おっさん」とは契約解除をするようにしていますが、今のところ契約解除になった「おっさん」はいないですね。 このサービスで働く「おっさん」は、まず一度でも他人から「おっさん」と呼ばれた経験がある人に限定していて。応募してくれた人と面談して、採用となったら年会費6万円を払ってもらって登録します。「おっさんレンタル」のレンタル料はまるごと「おっさん」のもので、僕がもらっているのはその年会費だけ。 最初にそのお金を出せる人だけが登録できるから、精神的な余裕があったり、「おっさんレンタル」の仕事に対する意気込みがある人がくるんです。だから出会い系と勘違いするような人は来ない。今70人の「おっさん」が在籍していますが、この登録フローによってクオリティが保てていると思います。1か月で200~300人の応募があったことも――システム的な面でも上手くいっているんですね。西本 1時間1000円っていう値段設定もよかったんじゃないかな。気軽に呼べるし、この値段ならハードルが低いというか。――在籍する「おっさん」はどうやって募集しているんですか?西本 最近は在籍中の「おっさん」からの紹介が増えました。人気の「おっさん」からの紹介だとやっぱりやる気のある方がほとんどなので。そういう他薦が増えてきましたね。 仕事を定年退職した人もいますし、現役の会社員という方もいます。あと意外と高学歴な人も多いですね。元NHKのアナウンサーとか芸能関係の人もたまにいます。 最近、「おっさんレンタル」がネットニュースで取り上げられたときは1か月で200~300人の応募がありました。「おっさん」のバリエーションもかなり豊富になって、大学生から論文を見てほしいなんて依頼もありますよ。――大学の論文を?西本 そうです。うち、教授が2人いるので。専門は生物と工学だったかな? まあ、1時間1000円なのでどの程度やっているかはわからないですけど(笑)。 いろんなスキルを持っている人が集まってきたので、検索なんかで引っかかってきてくれるユーザーも増えました。コロナ前は海外の利用客も多かったんです。外国語を話せる「おっさん」も多いので、「東京観光を案内してほしい」という依頼もあって。 あとはパチンコ店に並ぶとか、ストーカー対策のために呼ばれるとか。自主映画に死人の役でエキストラ出演を依頼されたこともありました。変わった依頼が多くて、飽きないですね(笑)。 最近は、「おっさん」のプロダクションみたいな感じになってますよ。YouTubeのモデルとか、海外ミュージシャンのプロモーションに出た「おっさん」もいます。「おっさんレンタル」のリピーター――同じ「おっさん」をレンタルし続ける利用者は多いのでしょうか。西本 同じ「おっさん」をレンタルする人もいれば、いろんな「おっさん」を試してるお客さんもいますね。最終的にお気に入りの「おっさん」、「推しのおっさん」みたいなのを見つける人もいます。ほとんど全員を利用して、最後に僕をレンタルして総評を言ってきたお客さんもいますよ(笑)。――このサービスで働いている「おっさん」にアドバイスしていることは何かありますか。西本さんが考える「おっさん」へのアドバイス西本 基本的には、最低限のこと以外はこちらから何か言うことはないですね。「おっさん」の成長を待つというか。 レンタルがなかなか入らなくてショックを受けたりする人もいるんです。例えばベンチャービジネスで成功してるような、社会人としてはしっかりした「おっさん」なのに、なかなかレンタルが入らないとか。 写真やプロフィールを見ると、オラオラ系に見えて敬遠されてるんじゃないかな、という感じなんです。こっちからは言わないけど、最後に僕に聞いてきた時に「写真を少し変えてみた方がいいかしれない」とアドバイスをすることはあります。――成長を見守っているんですね。西本 僕が「このおっさんはどうなんやろうか」と思う「おっさん」が人気あったりもするからあまり口出さない方がいいのかなって。 例えば工場勤務で出会いもなくずっと1人ぼっちだった「おっさん」で、自分を変えたいと登録してきた人。見た目は地味な感じなんですけど……声のトーンとかなのか、聞くのが上手なんでしょうね。すごく人気が出たんです。 そういう風にはっきり人気が出る「おっさん」もいるけど、仮に年間10件しかレンタルがなくても人生が変わるくらいインパクトがあるらしいんです。会社でのパワハラでうつ病になった「おっさん」がこのサービスで働いて精神面で安定した例もあります。人に会うことで変わってくる。 会費を1年分先払いしてもらっているので契約から1年経ったら継続するかメールで聞くんですけど、ほとんど100%大感謝の返事がきます。「こんな俺でも求められてるんだ」とか、「ありがとうと言われるのが嬉しい」「悩んでいたことがスッキリした」と。多分「おっさん」って家でも会社でも、感謝される機会が少ないんですよ。――確かに、中年になって管理職になると言われる機会が少なくなるような気もしますね。西本 それで自分に自信がない「おっさん」というのがいるんですよね。レンタルされて自信がついてきた人は多いです。――そうすると、当初の目的の「おっさんのイメージアップ」にはつながっているんでしょうか。「おっさんレンタル」で働いて夫婦関係が改善した人も西本 そうですね。貢献できているんじゃないかな。リピーターのお客さんもいるわけだし、たくさん応募をいただくところなんかを見ると、「おっさん」側でも興味を持ってくれている方は多いように感じますね。 最初に「おっさんレンタル」を考えたとき、スーパーマンのイメージがあったんですよ。会社では冴えないおじさんが、宇宙人が襲来したら公衆電話で着替えて強くなる。そういうイメージやったんです。 会社で冴えない「おっさん」が、今日16時からレンタルあるってなったらそこで人助けしてるわけ。しかも、それを見た他の「おっさん」が「俺も……」って思う。 仕事が人生の全てじゃないし、いくつになってもまだ挑戦できるというか。「おっさんレンタル」で経験を積んで開業した人なんかもいますし。――キャリアを転換する機会にもなっている。西本 かもしれないですね。 レンタルに行き出して奥さんとの関係が改善したおっさんもおったり。「あんた、レンタル依頼来るやん、なかなかやるやん」みたいな(笑)。人生がいろいろ交錯しますね。 それと、海外だと年を取ったら社会貢献をする人も多いじゃないですか。そこで自己実現をするというか……日本だとそういう機会が少ない。その代わりに、収益目的よりも何か人を応援したい、助けたいという人が登録してくれている感じがします。 例えばベビーシッターの免許を持つ「おっさん」の評価がすごく高いんですが、それを商売にするのは嫌なんだそうで。ビジネスじゃなく、社会貢献がしたいみたいです。「ルールだからもらってください」って言ってるけど、本当はレンタル代はもらいたくないという「おっさん」も少なくないですよ。写真=杉山秀樹/文藝春秋「おっさんレンタル」創業者(55)に聞いた、ヤバすぎる依頼内容とは…「不倫相談や死体役のエキストラ、M-1の相方役をお願いされたことも」 へ続く(宿無の翁)
――そもそも10年前にこのサービスを始められたきっかけを教えてください。
西本 僕が40歳ちょっとくらいの時に、電車の中にいた女子高生がおっさんの耳毛がどうのこうのって話しているのを聞いたんです。若い子の中だと、「今日の会社の飲み会におっさんが2人来るぞ」って言われたら「えー、おっさんくるのかよ」って感じでしょう。
「おっさん=汚ない、臭い」「おっさんは上から目線で説教をする」というイメージを持つ人が多かったりして。そういう風に、「おっさん」に対する軽視を肌で感じていたんです。
――西本さんご自身がそういう扱いをされたということでしょうか。
西本 僕自身は若ぶっているつもりなんで、当時そういう扱いを直接食らったわけではないです。逆に、ずっとスタイリストの仕事をしていたから、人を外見だけで見る癖がついていたんですよ。だからどちらかというと「おっさん扱い」をする側にいた。でも、自分が40代になって、いわゆる「おっさん」の年齢に近づいてきた時に、「おっさん」への風当たりの強さを感じるようになって。
僕たちのような職業だと、人をオシャレかダサいかだけで判断する。でも外見って取り繕えるわけじゃないですか。年を重ねた時、内面が成長しているかどうか。そっちに注目したいと思うようになって。
それにマイナスイメージのある「おっさん」が「ありがとう」とお礼を言われる機会を作ったら、「おっさん」っていいものだぞ、みたいなアピールができるかなと思ったんですよね。
「おっさんレンタル」での男女トラブル――「おっさん」のマイナスイメージの原因は何なのでしょう。西本 説教をされそうってところですよね。話を被せてきたりマウントを取ったり……でもその一方で「おっさん」のほうが心が開ける、というユーザーさんも多いんですよ。 立ち上げ当初、レンタルできる「おっさん」は僕だけだったんで、全国のお客さんに対応していました。最初は、1000円もらうんだから何か面白いこととかギャグを挟まなあかんのかなと思ったりしてたけど、ただ聞いてほしいんだと言われることが多くて。その時に、これは“傾聴”なんやなと思ったんですよ。ただ話を聞くだけで誰かのためになるんだなって。――女性の利用者が多いとなると、男女トラブルなども連想されますが。西本 公序良俗に反する依頼や営利目的の依頼はNGにしているので、トラブルって全然ないんですよ。強いて言えば宗教の勧誘に遭うくらいかな。 お客さんからお叱りを受けることはあります。「お説教臭かった」とか「上から目線だった」とかが多いです。3回クレームの入った「おっさん」とは契約解除をするようにしていますが、今のところ契約解除になった「おっさん」はいないですね。 このサービスで働く「おっさん」は、まず一度でも他人から「おっさん」と呼ばれた経験がある人に限定していて。応募してくれた人と面談して、採用となったら年会費6万円を払ってもらって登録します。「おっさんレンタル」のレンタル料はまるごと「おっさん」のもので、僕がもらっているのはその年会費だけ。 最初にそのお金を出せる人だけが登録できるから、精神的な余裕があったり、「おっさんレンタル」の仕事に対する意気込みがある人がくるんです。だから出会い系と勘違いするような人は来ない。今70人の「おっさん」が在籍していますが、この登録フローによってクオリティが保てていると思います。1か月で200~300人の応募があったことも――システム的な面でも上手くいっているんですね。西本 1時間1000円っていう値段設定もよかったんじゃないかな。気軽に呼べるし、この値段ならハードルが低いというか。――在籍する「おっさん」はどうやって募集しているんですか?西本 最近は在籍中の「おっさん」からの紹介が増えました。人気の「おっさん」からの紹介だとやっぱりやる気のある方がほとんどなので。そういう他薦が増えてきましたね。 仕事を定年退職した人もいますし、現役の会社員という方もいます。あと意外と高学歴な人も多いですね。元NHKのアナウンサーとか芸能関係の人もたまにいます。 最近、「おっさんレンタル」がネットニュースで取り上げられたときは1か月で200~300人の応募がありました。「おっさん」のバリエーションもかなり豊富になって、大学生から論文を見てほしいなんて依頼もありますよ。――大学の論文を?西本 そうです。うち、教授が2人いるので。専門は生物と工学だったかな? まあ、1時間1000円なのでどの程度やっているかはわからないですけど(笑)。 いろんなスキルを持っている人が集まってきたので、検索なんかで引っかかってきてくれるユーザーも増えました。コロナ前は海外の利用客も多かったんです。外国語を話せる「おっさん」も多いので、「東京観光を案内してほしい」という依頼もあって。 あとはパチンコ店に並ぶとか、ストーカー対策のために呼ばれるとか。自主映画に死人の役でエキストラ出演を依頼されたこともありました。変わった依頼が多くて、飽きないですね(笑)。 最近は、「おっさん」のプロダクションみたいな感じになってますよ。YouTubeのモデルとか、海外ミュージシャンのプロモーションに出た「おっさん」もいます。「おっさんレンタル」のリピーター――同じ「おっさん」をレンタルし続ける利用者は多いのでしょうか。西本 同じ「おっさん」をレンタルする人もいれば、いろんな「おっさん」を試してるお客さんもいますね。最終的にお気に入りの「おっさん」、「推しのおっさん」みたいなのを見つける人もいます。ほとんど全員を利用して、最後に僕をレンタルして総評を言ってきたお客さんもいますよ(笑)。――このサービスで働いている「おっさん」にアドバイスしていることは何かありますか。西本さんが考える「おっさん」へのアドバイス西本 基本的には、最低限のこと以外はこちらから何か言うことはないですね。「おっさん」の成長を待つというか。 レンタルがなかなか入らなくてショックを受けたりする人もいるんです。例えばベンチャービジネスで成功してるような、社会人としてはしっかりした「おっさん」なのに、なかなかレンタルが入らないとか。 写真やプロフィールを見ると、オラオラ系に見えて敬遠されてるんじゃないかな、という感じなんです。こっちからは言わないけど、最後に僕に聞いてきた時に「写真を少し変えてみた方がいいかしれない」とアドバイスをすることはあります。――成長を見守っているんですね。西本 僕が「このおっさんはどうなんやろうか」と思う「おっさん」が人気あったりもするからあまり口出さない方がいいのかなって。 例えば工場勤務で出会いもなくずっと1人ぼっちだった「おっさん」で、自分を変えたいと登録してきた人。見た目は地味な感じなんですけど……声のトーンとかなのか、聞くのが上手なんでしょうね。すごく人気が出たんです。 そういう風にはっきり人気が出る「おっさん」もいるけど、仮に年間10件しかレンタルがなくても人生が変わるくらいインパクトがあるらしいんです。会社でのパワハラでうつ病になった「おっさん」がこのサービスで働いて精神面で安定した例もあります。人に会うことで変わってくる。 会費を1年分先払いしてもらっているので契約から1年経ったら継続するかメールで聞くんですけど、ほとんど100%大感謝の返事がきます。「こんな俺でも求められてるんだ」とか、「ありがとうと言われるのが嬉しい」「悩んでいたことがスッキリした」と。多分「おっさん」って家でも会社でも、感謝される機会が少ないんですよ。――確かに、中年になって管理職になると言われる機会が少なくなるような気もしますね。西本 それで自分に自信がない「おっさん」というのがいるんですよね。レンタルされて自信がついてきた人は多いです。――そうすると、当初の目的の「おっさんのイメージアップ」にはつながっているんでしょうか。「おっさんレンタル」で働いて夫婦関係が改善した人も西本 そうですね。貢献できているんじゃないかな。リピーターのお客さんもいるわけだし、たくさん応募をいただくところなんかを見ると、「おっさん」側でも興味を持ってくれている方は多いように感じますね。 最初に「おっさんレンタル」を考えたとき、スーパーマンのイメージがあったんですよ。会社では冴えないおじさんが、宇宙人が襲来したら公衆電話で着替えて強くなる。そういうイメージやったんです。 会社で冴えない「おっさん」が、今日16時からレンタルあるってなったらそこで人助けしてるわけ。しかも、それを見た他の「おっさん」が「俺も……」って思う。 仕事が人生の全てじゃないし、いくつになってもまだ挑戦できるというか。「おっさんレンタル」で経験を積んで開業した人なんかもいますし。――キャリアを転換する機会にもなっている。西本 かもしれないですね。 レンタルに行き出して奥さんとの関係が改善したおっさんもおったり。「あんた、レンタル依頼来るやん、なかなかやるやん」みたいな(笑)。人生がいろいろ交錯しますね。 それと、海外だと年を取ったら社会貢献をする人も多いじゃないですか。そこで自己実現をするというか……日本だとそういう機会が少ない。その代わりに、収益目的よりも何か人を応援したい、助けたいという人が登録してくれている感じがします。 例えばベビーシッターの免許を持つ「おっさん」の評価がすごく高いんですが、それを商売にするのは嫌なんだそうで。ビジネスじゃなく、社会貢献がしたいみたいです。「ルールだからもらってください」って言ってるけど、本当はレンタル代はもらいたくないという「おっさん」も少なくないですよ。写真=杉山秀樹/文藝春秋「おっさんレンタル」創業者(55)に聞いた、ヤバすぎる依頼内容とは…「不倫相談や死体役のエキストラ、M-1の相方役をお願いされたことも」 へ続く(宿無の翁)
――「おっさん」のマイナスイメージの原因は何なのでしょう。
西本 説教をされそうってところですよね。話を被せてきたりマウントを取ったり……でもその一方で「おっさん」のほうが心が開ける、というユーザーさんも多いんですよ。
立ち上げ当初、レンタルできる「おっさん」は僕だけだったんで、全国のお客さんに対応していました。最初は、1000円もらうんだから何か面白いこととかギャグを挟まなあかんのかなと思ったりしてたけど、ただ聞いてほしいんだと言われることが多くて。その時に、これは“傾聴”なんやなと思ったんですよ。ただ話を聞くだけで誰かのためになるんだなって。
――女性の利用者が多いとなると、男女トラブルなども連想されますが。西本 公序良俗に反する依頼や営利目的の依頼はNGにしているので、トラブルって全然ないんですよ。強いて言えば宗教の勧誘に遭うくらいかな。 お客さんからお叱りを受けることはあります。「お説教臭かった」とか「上から目線だった」とかが多いです。3回クレームの入った「おっさん」とは契約解除をするようにしていますが、今のところ契約解除になった「おっさん」はいないですね。 このサービスで働く「おっさん」は、まず一度でも他人から「おっさん」と呼ばれた経験がある人に限定していて。応募してくれた人と面談して、採用となったら年会費6万円を払ってもらって登録します。「おっさんレンタル」のレンタル料はまるごと「おっさん」のもので、僕がもらっているのはその年会費だけ。 最初にそのお金を出せる人だけが登録できるから、精神的な余裕があったり、「おっさんレンタル」の仕事に対する意気込みがある人がくるんです。だから出会い系と勘違いするような人は来ない。今70人の「おっさん」が在籍していますが、この登録フローによってクオリティが保てていると思います。1か月で200~300人の応募があったことも――システム的な面でも上手くいっているんですね。西本 1時間1000円っていう値段設定もよかったんじゃないかな。気軽に呼べるし、この値段ならハードルが低いというか。――在籍する「おっさん」はどうやって募集しているんですか?西本 最近は在籍中の「おっさん」からの紹介が増えました。人気の「おっさん」からの紹介だとやっぱりやる気のある方がほとんどなので。そういう他薦が増えてきましたね。 仕事を定年退職した人もいますし、現役の会社員という方もいます。あと意外と高学歴な人も多いですね。元NHKのアナウンサーとか芸能関係の人もたまにいます。 最近、「おっさんレンタル」がネットニュースで取り上げられたときは1か月で200~300人の応募がありました。「おっさん」のバリエーションもかなり豊富になって、大学生から論文を見てほしいなんて依頼もありますよ。――大学の論文を?西本 そうです。うち、教授が2人いるので。専門は生物と工学だったかな? まあ、1時間1000円なのでどの程度やっているかはわからないですけど(笑)。 いろんなスキルを持っている人が集まってきたので、検索なんかで引っかかってきてくれるユーザーも増えました。コロナ前は海外の利用客も多かったんです。外国語を話せる「おっさん」も多いので、「東京観光を案内してほしい」という依頼もあって。 あとはパチンコ店に並ぶとか、ストーカー対策のために呼ばれるとか。自主映画に死人の役でエキストラ出演を依頼されたこともありました。変わった依頼が多くて、飽きないですね(笑)。 最近は、「おっさん」のプロダクションみたいな感じになってますよ。YouTubeのモデルとか、海外ミュージシャンのプロモーションに出た「おっさん」もいます。「おっさんレンタル」のリピーター――同じ「おっさん」をレンタルし続ける利用者は多いのでしょうか。西本 同じ「おっさん」をレンタルする人もいれば、いろんな「おっさん」を試してるお客さんもいますね。最終的にお気に入りの「おっさん」、「推しのおっさん」みたいなのを見つける人もいます。ほとんど全員を利用して、最後に僕をレンタルして総評を言ってきたお客さんもいますよ(笑)。――このサービスで働いている「おっさん」にアドバイスしていることは何かありますか。西本さんが考える「おっさん」へのアドバイス西本 基本的には、最低限のこと以外はこちらから何か言うことはないですね。「おっさん」の成長を待つというか。 レンタルがなかなか入らなくてショックを受けたりする人もいるんです。例えばベンチャービジネスで成功してるような、社会人としてはしっかりした「おっさん」なのに、なかなかレンタルが入らないとか。 写真やプロフィールを見ると、オラオラ系に見えて敬遠されてるんじゃないかな、という感じなんです。こっちからは言わないけど、最後に僕に聞いてきた時に「写真を少し変えてみた方がいいかしれない」とアドバイスをすることはあります。――成長を見守っているんですね。西本 僕が「このおっさんはどうなんやろうか」と思う「おっさん」が人気あったりもするからあまり口出さない方がいいのかなって。 例えば工場勤務で出会いもなくずっと1人ぼっちだった「おっさん」で、自分を変えたいと登録してきた人。見た目は地味な感じなんですけど……声のトーンとかなのか、聞くのが上手なんでしょうね。すごく人気が出たんです。 そういう風にはっきり人気が出る「おっさん」もいるけど、仮に年間10件しかレンタルがなくても人生が変わるくらいインパクトがあるらしいんです。会社でのパワハラでうつ病になった「おっさん」がこのサービスで働いて精神面で安定した例もあります。人に会うことで変わってくる。 会費を1年分先払いしてもらっているので契約から1年経ったら継続するかメールで聞くんですけど、ほとんど100%大感謝の返事がきます。「こんな俺でも求められてるんだ」とか、「ありがとうと言われるのが嬉しい」「悩んでいたことがスッキリした」と。多分「おっさん」って家でも会社でも、感謝される機会が少ないんですよ。――確かに、中年になって管理職になると言われる機会が少なくなるような気もしますね。西本 それで自分に自信がない「おっさん」というのがいるんですよね。レンタルされて自信がついてきた人は多いです。――そうすると、当初の目的の「おっさんのイメージアップ」にはつながっているんでしょうか。「おっさんレンタル」で働いて夫婦関係が改善した人も西本 そうですね。貢献できているんじゃないかな。リピーターのお客さんもいるわけだし、たくさん応募をいただくところなんかを見ると、「おっさん」側でも興味を持ってくれている方は多いように感じますね。 最初に「おっさんレンタル」を考えたとき、スーパーマンのイメージがあったんですよ。会社では冴えないおじさんが、宇宙人が襲来したら公衆電話で着替えて強くなる。そういうイメージやったんです。 会社で冴えない「おっさん」が、今日16時からレンタルあるってなったらそこで人助けしてるわけ。しかも、それを見た他の「おっさん」が「俺も……」って思う。 仕事が人生の全てじゃないし、いくつになってもまだ挑戦できるというか。「おっさんレンタル」で経験を積んで開業した人なんかもいますし。――キャリアを転換する機会にもなっている。西本 かもしれないですね。 レンタルに行き出して奥さんとの関係が改善したおっさんもおったり。「あんた、レンタル依頼来るやん、なかなかやるやん」みたいな(笑)。人生がいろいろ交錯しますね。 それと、海外だと年を取ったら社会貢献をする人も多いじゃないですか。そこで自己実現をするというか……日本だとそういう機会が少ない。その代わりに、収益目的よりも何か人を応援したい、助けたいという人が登録してくれている感じがします。 例えばベビーシッターの免許を持つ「おっさん」の評価がすごく高いんですが、それを商売にするのは嫌なんだそうで。ビジネスじゃなく、社会貢献がしたいみたいです。「ルールだからもらってください」って言ってるけど、本当はレンタル代はもらいたくないという「おっさん」も少なくないですよ。写真=杉山秀樹/文藝春秋「おっさんレンタル」創業者(55)に聞いた、ヤバすぎる依頼内容とは…「不倫相談や死体役のエキストラ、M-1の相方役をお願いされたことも」 へ続く(宿無の翁)
――女性の利用者が多いとなると、男女トラブルなども連想されますが。
西本 公序良俗に反する依頼や営利目的の依頼はNGにしているので、トラブルって全然ないんですよ。強いて言えば宗教の勧誘に遭うくらいかな。
お客さんからお叱りを受けることはあります。「お説教臭かった」とか「上から目線だった」とかが多いです。3回クレームの入った「おっさん」とは契約解除をするようにしていますが、今のところ契約解除になった「おっさん」はいないですね。
このサービスで働く「おっさん」は、まず一度でも他人から「おっさん」と呼ばれた経験がある人に限定していて。応募してくれた人と面談して、採用となったら年会費6万円を払ってもらって登録します。「おっさんレンタル」のレンタル料はまるごと「おっさん」のもので、僕がもらっているのはその年会費だけ。
最初にそのお金を出せる人だけが登録できるから、精神的な余裕があったり、「おっさんレンタル」の仕事に対する意気込みがある人がくるんです。だから出会い系と勘違いするような人は来ない。今70人の「おっさん」が在籍していますが、この登録フローによってクオリティが保てていると思います。
――システム的な面でも上手くいっているんですね。
西本 1時間1000円っていう値段設定もよかったんじゃないかな。気軽に呼べるし、この値段ならハードルが低いというか。
――在籍する「おっさん」はどうやって募集しているんですか?
西本 最近は在籍中の「おっさん」からの紹介が増えました。人気の「おっさん」からの紹介だとやっぱりやる気のある方がほとんどなので。そういう他薦が増えてきましたね。
仕事を定年退職した人もいますし、現役の会社員という方もいます。あと意外と高学歴な人も多いですね。元NHKのアナウンサーとか芸能関係の人もたまにいます。
最近、「おっさんレンタル」がネットニュースで取り上げられたときは1か月で200~300人の応募がありました。「おっさん」のバリエーションもかなり豊富になって、大学生から論文を見てほしいなんて依頼もありますよ。――大学の論文を?西本 そうです。うち、教授が2人いるので。専門は生物と工学だったかな? まあ、1時間1000円なのでどの程度やっているかはわからないですけど(笑)。 いろんなスキルを持っている人が集まってきたので、検索なんかで引っかかってきてくれるユーザーも増えました。コロナ前は海外の利用客も多かったんです。外国語を話せる「おっさん」も多いので、「東京観光を案内してほしい」という依頼もあって。 あとはパチンコ店に並ぶとか、ストーカー対策のために呼ばれるとか。自主映画に死人の役でエキストラ出演を依頼されたこともありました。変わった依頼が多くて、飽きないですね(笑)。 最近は、「おっさん」のプロダクションみたいな感じになってますよ。YouTubeのモデルとか、海外ミュージシャンのプロモーションに出た「おっさん」もいます。「おっさんレンタル」のリピーター――同じ「おっさん」をレンタルし続ける利用者は多いのでしょうか。西本 同じ「おっさん」をレンタルする人もいれば、いろんな「おっさん」を試してるお客さんもいますね。最終的にお気に入りの「おっさん」、「推しのおっさん」みたいなのを見つける人もいます。ほとんど全員を利用して、最後に僕をレンタルして総評を言ってきたお客さんもいますよ(笑)。――このサービスで働いている「おっさん」にアドバイスしていることは何かありますか。西本さんが考える「おっさん」へのアドバイス西本 基本的には、最低限のこと以外はこちらから何か言うことはないですね。「おっさん」の成長を待つというか。 レンタルがなかなか入らなくてショックを受けたりする人もいるんです。例えばベンチャービジネスで成功してるような、社会人としてはしっかりした「おっさん」なのに、なかなかレンタルが入らないとか。 写真やプロフィールを見ると、オラオラ系に見えて敬遠されてるんじゃないかな、という感じなんです。こっちからは言わないけど、最後に僕に聞いてきた時に「写真を少し変えてみた方がいいかしれない」とアドバイスをすることはあります。――成長を見守っているんですね。西本 僕が「このおっさんはどうなんやろうか」と思う「おっさん」が人気あったりもするからあまり口出さない方がいいのかなって。 例えば工場勤務で出会いもなくずっと1人ぼっちだった「おっさん」で、自分を変えたいと登録してきた人。見た目は地味な感じなんですけど……声のトーンとかなのか、聞くのが上手なんでしょうね。すごく人気が出たんです。 そういう風にはっきり人気が出る「おっさん」もいるけど、仮に年間10件しかレンタルがなくても人生が変わるくらいインパクトがあるらしいんです。会社でのパワハラでうつ病になった「おっさん」がこのサービスで働いて精神面で安定した例もあります。人に会うことで変わってくる。 会費を1年分先払いしてもらっているので契約から1年経ったら継続するかメールで聞くんですけど、ほとんど100%大感謝の返事がきます。「こんな俺でも求められてるんだ」とか、「ありがとうと言われるのが嬉しい」「悩んでいたことがスッキリした」と。多分「おっさん」って家でも会社でも、感謝される機会が少ないんですよ。――確かに、中年になって管理職になると言われる機会が少なくなるような気もしますね。西本 それで自分に自信がない「おっさん」というのがいるんですよね。レンタルされて自信がついてきた人は多いです。――そうすると、当初の目的の「おっさんのイメージアップ」にはつながっているんでしょうか。「おっさんレンタル」で働いて夫婦関係が改善した人も西本 そうですね。貢献できているんじゃないかな。リピーターのお客さんもいるわけだし、たくさん応募をいただくところなんかを見ると、「おっさん」側でも興味を持ってくれている方は多いように感じますね。 最初に「おっさんレンタル」を考えたとき、スーパーマンのイメージがあったんですよ。会社では冴えないおじさんが、宇宙人が襲来したら公衆電話で着替えて強くなる。そういうイメージやったんです。 会社で冴えない「おっさん」が、今日16時からレンタルあるってなったらそこで人助けしてるわけ。しかも、それを見た他の「おっさん」が「俺も……」って思う。 仕事が人生の全てじゃないし、いくつになってもまだ挑戦できるというか。「おっさんレンタル」で経験を積んで開業した人なんかもいますし。――キャリアを転換する機会にもなっている。西本 かもしれないですね。 レンタルに行き出して奥さんとの関係が改善したおっさんもおったり。「あんた、レンタル依頼来るやん、なかなかやるやん」みたいな(笑)。人生がいろいろ交錯しますね。 それと、海外だと年を取ったら社会貢献をする人も多いじゃないですか。そこで自己実現をするというか……日本だとそういう機会が少ない。その代わりに、収益目的よりも何か人を応援したい、助けたいという人が登録してくれている感じがします。 例えばベビーシッターの免許を持つ「おっさん」の評価がすごく高いんですが、それを商売にするのは嫌なんだそうで。ビジネスじゃなく、社会貢献がしたいみたいです。「ルールだからもらってください」って言ってるけど、本当はレンタル代はもらいたくないという「おっさん」も少なくないですよ。写真=杉山秀樹/文藝春秋「おっさんレンタル」創業者(55)に聞いた、ヤバすぎる依頼内容とは…「不倫相談や死体役のエキストラ、M-1の相方役をお願いされたことも」 へ続く(宿無の翁)
最近、「おっさんレンタル」がネットニュースで取り上げられたときは1か月で200~300人の応募がありました。「おっさん」のバリエーションもかなり豊富になって、大学生から論文を見てほしいなんて依頼もありますよ。
――大学の論文を?
西本 そうです。うち、教授が2人いるので。専門は生物と工学だったかな? まあ、1時間1000円なのでどの程度やっているかはわからないですけど(笑)。
いろんなスキルを持っている人が集まってきたので、検索なんかで引っかかってきてくれるユーザーも増えました。コロナ前は海外の利用客も多かったんです。外国語を話せる「おっさん」も多いので、「東京観光を案内してほしい」という依頼もあって。
あとはパチンコ店に並ぶとか、ストーカー対策のために呼ばれるとか。自主映画に死人の役でエキストラ出演を依頼されたこともありました。変わった依頼が多くて、飽きないですね(笑)。
最近は、「おっさん」のプロダクションみたいな感じになってますよ。YouTubeのモデルとか、海外ミュージシャンのプロモーションに出た「おっさん」もいます。
――同じ「おっさん」をレンタルし続ける利用者は多いのでしょうか。
西本 同じ「おっさん」をレンタルする人もいれば、いろんな「おっさん」を試してるお客さんもいますね。最終的にお気に入りの「おっさん」、「推しのおっさん」みたいなのを見つける人もいます。ほとんど全員を利用して、最後に僕をレンタルして総評を言ってきたお客さんもいますよ(笑)。
――このサービスで働いている「おっさん」にアドバイスしていることは何かありますか。
西本 基本的には、最低限のこと以外はこちらから何か言うことはないですね。「おっさん」の成長を待つというか。
レンタルがなかなか入らなくてショックを受けたりする人もいるんです。例えばベンチャービジネスで成功してるような、社会人としてはしっかりした「おっさん」なのに、なかなかレンタルが入らないとか。
写真やプロフィールを見ると、オラオラ系に見えて敬遠されてるんじゃないかな、という感じなんです。こっちからは言わないけど、最後に僕に聞いてきた時に「写真を少し変えてみた方がいいかしれない」とアドバイスをすることはあります。
――成長を見守っているんですね。
西本 僕が「このおっさんはどうなんやろうか」と思う「おっさん」が人気あったりもするからあまり口出さない方がいいのかなって。
例えば工場勤務で出会いもなくずっと1人ぼっちだった「おっさん」で、自分を変えたいと登録してきた人。見た目は地味な感じなんですけど……声のトーンとかなのか、聞くのが上手なんでしょうね。すごく人気が出たんです。
そういう風にはっきり人気が出る「おっさん」もいるけど、仮に年間10件しかレンタルがなくても人生が変わるくらいインパクトがあるらしいんです。会社でのパワハラでうつ病になった「おっさん」がこのサービスで働いて精神面で安定した例もあります。人に会うことで変わってくる。 会費を1年分先払いしてもらっているので契約から1年経ったら継続するかメールで聞くんですけど、ほとんど100%大感謝の返事がきます。「こんな俺でも求められてるんだ」とか、「ありがとうと言われるのが嬉しい」「悩んでいたことがスッキリした」と。多分「おっさん」って家でも会社でも、感謝される機会が少ないんですよ。――確かに、中年になって管理職になると言われる機会が少なくなるような気もしますね。西本 それで自分に自信がない「おっさん」というのがいるんですよね。レンタルされて自信がついてきた人は多いです。――そうすると、当初の目的の「おっさんのイメージアップ」にはつながっているんでしょうか。「おっさんレンタル」で働いて夫婦関係が改善した人も西本 そうですね。貢献できているんじゃないかな。リピーターのお客さんもいるわけだし、たくさん応募をいただくところなんかを見ると、「おっさん」側でも興味を持ってくれている方は多いように感じますね。 最初に「おっさんレンタル」を考えたとき、スーパーマンのイメージがあったんですよ。会社では冴えないおじさんが、宇宙人が襲来したら公衆電話で着替えて強くなる。そういうイメージやったんです。 会社で冴えない「おっさん」が、今日16時からレンタルあるってなったらそこで人助けしてるわけ。しかも、それを見た他の「おっさん」が「俺も……」って思う。 仕事が人生の全てじゃないし、いくつになってもまだ挑戦できるというか。「おっさんレンタル」で経験を積んで開業した人なんかもいますし。――キャリアを転換する機会にもなっている。西本 かもしれないですね。 レンタルに行き出して奥さんとの関係が改善したおっさんもおったり。「あんた、レンタル依頼来るやん、なかなかやるやん」みたいな(笑)。人生がいろいろ交錯しますね。 それと、海外だと年を取ったら社会貢献をする人も多いじゃないですか。そこで自己実現をするというか……日本だとそういう機会が少ない。その代わりに、収益目的よりも何か人を応援したい、助けたいという人が登録してくれている感じがします。 例えばベビーシッターの免許を持つ「おっさん」の評価がすごく高いんですが、それを商売にするのは嫌なんだそうで。ビジネスじゃなく、社会貢献がしたいみたいです。「ルールだからもらってください」って言ってるけど、本当はレンタル代はもらいたくないという「おっさん」も少なくないですよ。写真=杉山秀樹/文藝春秋「おっさんレンタル」創業者(55)に聞いた、ヤバすぎる依頼内容とは…「不倫相談や死体役のエキストラ、M-1の相方役をお願いされたことも」 へ続く(宿無の翁)
そういう風にはっきり人気が出る「おっさん」もいるけど、仮に年間10件しかレンタルがなくても人生が変わるくらいインパクトがあるらしいんです。会社でのパワハラでうつ病になった「おっさん」がこのサービスで働いて精神面で安定した例もあります。人に会うことで変わってくる。
会費を1年分先払いしてもらっているので契約から1年経ったら継続するかメールで聞くんですけど、ほとんど100%大感謝の返事がきます。
「こんな俺でも求められてるんだ」とか、「ありがとうと言われるのが嬉しい」「悩んでいたことがスッキリした」と。多分「おっさん」って家でも会社でも、感謝される機会が少ないんですよ。
――確かに、中年になって管理職になると言われる機会が少なくなるような気もしますね。
西本 それで自分に自信がない「おっさん」というのがいるんですよね。レンタルされて自信がついてきた人は多いです。
――そうすると、当初の目的の「おっさんのイメージアップ」にはつながっているんでしょうか。
西本 そうですね。貢献できているんじゃないかな。リピーターのお客さんもいるわけだし、たくさん応募をいただくところなんかを見ると、「おっさん」側でも興味を持ってくれている方は多いように感じますね。
最初に「おっさんレンタル」を考えたとき、スーパーマンのイメージがあったんですよ。会社では冴えないおじさんが、宇宙人が襲来したら公衆電話で着替えて強くなる。そういうイメージやったんです。
会社で冴えない「おっさん」が、今日16時からレンタルあるってなったらそこで人助けしてるわけ。しかも、それを見た他の「おっさん」が「俺も……」って思う。
仕事が人生の全てじゃないし、いくつになってもまだ挑戦できるというか。「おっさんレンタル」で経験を積んで開業した人なんかもいますし。
――キャリアを転換する機会にもなっている。西本 かもしれないですね。 レンタルに行き出して奥さんとの関係が改善したおっさんもおったり。「あんた、レンタル依頼来るやん、なかなかやるやん」みたいな(笑)。人生がいろいろ交錯しますね。 それと、海外だと年を取ったら社会貢献をする人も多いじゃないですか。そこで自己実現をするというか……日本だとそういう機会が少ない。その代わりに、収益目的よりも何か人を応援したい、助けたいという人が登録してくれている感じがします。 例えばベビーシッターの免許を持つ「おっさん」の評価がすごく高いんですが、それを商売にするのは嫌なんだそうで。ビジネスじゃなく、社会貢献がしたいみたいです。「ルールだからもらってください」って言ってるけど、本当はレンタル代はもらいたくないという「おっさん」も少なくないですよ。写真=杉山秀樹/文藝春秋「おっさんレンタル」創業者(55)に聞いた、ヤバすぎる依頼内容とは…「不倫相談や死体役のエキストラ、M-1の相方役をお願いされたことも」 へ続く(宿無の翁)
――キャリアを転換する機会にもなっている。
西本 かもしれないですね。
レンタルに行き出して奥さんとの関係が改善したおっさんもおったり。「あんた、レンタル依頼来るやん、なかなかやるやん」みたいな(笑)。人生がいろいろ交錯しますね。
それと、海外だと年を取ったら社会貢献をする人も多いじゃないですか。そこで自己実現をするというか……日本だとそういう機会が少ない。その代わりに、収益目的よりも何か人を応援したい、助けたいという人が登録してくれている感じがします。
例えばベビーシッターの免許を持つ「おっさん」の評価がすごく高いんですが、それを商売にするのは嫌なんだそうで。ビジネスじゃなく、社会貢献がしたいみたいです。「ルールだからもらってください」って言ってるけど、本当はレンタル代はもらいたくないという「おっさん」も少なくないですよ。
写真=杉山秀樹/文藝春秋「おっさんレンタル」創業者(55)に聞いた、ヤバすぎる依頼内容とは…「不倫相談や死体役のエキストラ、M-1の相方役をお願いされたことも」 へ続く(宿無の翁)
「おっさんレンタル」創業者(55)に聞いた、ヤバすぎる依頼内容とは…「不倫相談や死体役のエキストラ、M-1の相方役をお願いされたことも」 へ続く
(宿無の翁)