警察官2人が大麻所持、盗撮の疑いで書類送検され、島根県警が懲戒処分にしたことが10、11月に相次いで判明した。
県警はうち1人について氏名や所属を明かさず、別の1人は今も事件自体を発表していない。懲戒処分の発表を巡っては、島根県や県教委は原則全て公表しており、対応が分かれる。「身内に甘いのでは」との批判もあり、識者は「警察はより高い倫理観が求められている。積極的に発表するべきだ」と指摘する。(林興希、玉田響子)
■「不信感放置できず」
「身内びいきの対応だと多くの批判が寄せられている。県警への不信感を放置することはできない」
30日、県議会の議場。一般質問に立った共産党の尾村利成県議は、県警が詳細を明かしていない二つの事件に触れ、そう指摘した。
県警は10月、自宅で大麻を所持したとして巡査長を大麻取締法違反容疑で、益田署内の女性用仮眠室に盗撮目的で小型カメラを設置したとして別の巡査長を県迷惑行為防止条例違反容疑で、それぞれ書類送検している。
県警の中井淳一本部長は、尾村県議から非公表とした理由を聞かれ、「警察庁の指針を参考にした」と答弁。県公安委員会の高橋美佐子委員長も「警察官だからとの忖度(そんたく)はなかったと承知している」などと述べた。
■警察庁指針を参考
警察庁は都道府県警に対し、懲戒処分の発表基準について指針を示している。
この指針では、発表対象となる処分は〈1〉職務上の行為に関する処分〈2〉私的な行為に関する処分のうち、停職以上の処分〈3〉職責や影響を勘案し発表が適当と認められる処分――と規定する。
県警監察課によると、盗撮事件は「私的な行為」の「停職未満」の処分となり、対象にあたらない。また、大麻事件は「停職以上」で対象となるが、同指針で「処分対象者らのプライバシーに配慮する」とあり、匿名にしたという。
通常の事件・事故の発表としてはどうだろうか。
県警は逮捕を伴う事件の発表時は原則、容疑者の氏名を明らかにし、逮捕を伴わない場合は事件自体を発表しない。このため、いずれも「容疑者の逃亡の恐れがない」などとして、逮捕しなかった二つの事件は、この基準では対象外となる。
大麻事件は懲戒処分として警察庁の指針に従って公表したが、盗撮事件はいずれの公表基準にもひっかからないことになる。
■免職は氏名公表も
だがこうした判断基準は、県民の理解を得にくいだろう。実際、県警の後ろ向きな姿勢は、他の行政機関と比べても際立っている。
県は原則、わいせつ事案など被害関係者に配慮する場合を除き、戒告や減給、停職、免職といった懲戒処分はすべて事案を公表し、最も重い免職では当該職員の氏名も明らかにする。
県教委は同様の基準に加え、飲酒運転による停職の場合は学校名、氏名、年齢などを全て公表する立場だ。学校企画課は「公表されるという職員の共通認識が、不祥事の抑止につながると考えている」としている。
同志社大学政策学部の太田肇教授(組織論)は「警察組織は、事件に関する情報公開に慎重にならざるを得ない部分もある。だが内部の不祥事は別であり、公務員の中でもより厳しい基準が必要ではないか」と話している。