期待の若手県議と、老舗酒造会社を切り盛りする妻との間に何が――。長野県塩尻市で、県議の丸山大輔容疑者(48)が妻の希美さん(当時47歳)を殺害したとして逮捕されてから5日で1週間が経過した。丸山容疑者はこれまで、事件当日は約60キロ離れた長野市内にいたと主張。約1年2カ月に及んだ捜査で県警が注力したのは、そのアリバイを崩すことだった。
妻殺害容疑で長野県議を逮捕 昨年9月、自宅で窒息死深夜から未明に往復か 希美さんは2021年9月29日朝、首を絞められて窒息死しているのが見つかった。発見されたのは丸山容疑者が経営する明治時代創業の老舗「笑亀酒造」の事務所兼自宅だった。

捜査関係者によると、丸山容疑者は任意の調べに、「9月28日夜は長野市内で飲食し、そのまま議員会館に泊まった」と説明。事件当時は塩尻市にはいなかったと強調していた。 県警は当初、希美さんが事務所の金庫近くで倒れていたことから、窃盗目的の犯行の可能性も視野に入れていた。しかし、そうした捜査を進める一方、丸山容疑者の交友関係や経営を巡り、夫婦間でトラブルがあったとの情報が寄せられ、捜査線上に丸山容疑者が浮かんだ。 「防犯カメラを見せてもらえませんか」。事件後、現場近くの民家に県警の捜査員が訪れた。カメラの画像には酒造会社に続く道が映されていた。民家の住人が映像を見せると、捜査員は熱心に確認を続けたという。 塩尻市内のタクシー会社は、事件前後の時間帯に運行していたタクシーのドライブレコーダーの映像の提供を要請され、2台分の記録を提供した。 長野市から塩尻市までは直線距離で約60キロ。高速道路を使えば片道約1時間あまりだが、他にも国道や山間部を走る県道など複数のルートがある。 県警は、防犯カメラの他、その時間帯に走行していた車のドライブレコーダーの映像を分析。今年10月には議員会館を捜索し、丸山容疑者が長野市内の議員会館から現場まで自分の車を運転して往復したと結論付けた。さらに関係者への聴取を進め、逮捕に踏み切った。急逝した父の後を継ぎ 丸山容疑者は慶応大を卒業後、3代目だった父が02年に急逝したため、27歳で帰郷し家業を継いだ。 オーダーメードでの日本酒の受注や、国登録有形文化財の酒蔵を利用したイベントの企画など積極的に活動。塩尻青年会議所(JC)の理事長を務め、JCの仲間と飲食することも多かったという。 15年には初めて立候補した県議選でトップ当選した。夫婦そろってあいさつに回り、支援者は「(丸山容疑者は)『奥さんが快く支えてくれることが一番重要』と言っていた」と振り返る。 初当選後は会社経営には経理などで希美さんが携わることが多く「経営には奥さんの働きが大きかった。奥さんが配達に来ることもあった」と近所の住民は証言する。夫婦の関係 「残念だったね。早く捕まるといいね」。希美さんの葬儀で住民が声をかけると丸山容疑者は「そうですね」と淡々と答えたという。 丸山容疑者の後援会関係者によると、今年の8月ごろに丸山容疑者から「東京の会社が経営に参画し、経営者が代わる」という旨の話を聞き、「笑亀の名前は残してほしい」と伝えたという。経営方針や丸山容疑者の交友関係などを原因として「夫婦はあまりうまくいっていなかった」と話す人もいた。 議員会館に捜索が入った10月ごろから、丸山容疑者の事件への関与が取り沙汰されるようになった。 捜査を意識していたかは不明だが、逮捕される約2週間前、地元関係者の間で丸山容疑者が携帯電話に出ないと話題になった。 11月26日昼に地元市議に丸山容疑者から着信があった。番号が変わっていたので理由を尋ねると、丸山容疑者は「もう少ししたら(以前使っていた携帯が)戻ってくる」と答えたという。市議は「議員の仕事をしている人間が番号を変えるのはおかしい」と不審に思ったという。 4月の統一地方選に向けて3選出馬の準備をしていたという丸山容疑者。逮捕後、所属する自民党県議団の風間辰一団長は「若手として期待される議員だった」と肩を落とした。【竹田直人、渡辺薫、田倉直彦】
深夜から未明に往復か
希美さんは2021年9月29日朝、首を絞められて窒息死しているのが見つかった。発見されたのは丸山容疑者が経営する明治時代創業の老舗「笑亀酒造」の事務所兼自宅だった。
捜査関係者によると、丸山容疑者は任意の調べに、「9月28日夜は長野市内で飲食し、そのまま議員会館に泊まった」と説明。事件当時は塩尻市にはいなかったと強調していた。
県警は当初、希美さんが事務所の金庫近くで倒れていたことから、窃盗目的の犯行の可能性も視野に入れていた。しかし、そうした捜査を進める一方、丸山容疑者の交友関係や経営を巡り、夫婦間でトラブルがあったとの情報が寄せられ、捜査線上に丸山容疑者が浮かんだ。
「防犯カメラを見せてもらえませんか」。事件後、現場近くの民家に県警の捜査員が訪れた。カメラの画像には酒造会社に続く道が映されていた。民家の住人が映像を見せると、捜査員は熱心に確認を続けたという。
塩尻市内のタクシー会社は、事件前後の時間帯に運行していたタクシーのドライブレコーダーの映像の提供を要請され、2台分の記録を提供した。
長野市から塩尻市までは直線距離で約60キロ。高速道路を使えば片道約1時間あまりだが、他にも国道や山間部を走る県道など複数のルートがある。
県警は、防犯カメラの他、その時間帯に走行していた車のドライブレコーダーの映像を分析。今年10月には議員会館を捜索し、丸山容疑者が長野市内の議員会館から現場まで自分の車を運転して往復したと結論付けた。さらに関係者への聴取を進め、逮捕に踏み切った。
急逝した父の後を継ぎ
丸山容疑者は慶応大を卒業後、3代目だった父が02年に急逝したため、27歳で帰郷し家業を継いだ。
オーダーメードでの日本酒の受注や、国登録有形文化財の酒蔵を利用したイベントの企画など積極的に活動。塩尻青年会議所(JC)の理事長を務め、JCの仲間と飲食することも多かったという。
15年には初めて立候補した県議選でトップ当選した。夫婦そろってあいさつに回り、支援者は「(丸山容疑者は)『奥さんが快く支えてくれることが一番重要』と言っていた」と振り返る。
初当選後は会社経営には経理などで希美さんが携わることが多く「経営には奥さんの働きが大きかった。奥さんが配達に来ることもあった」と近所の住民は証言する。
夫婦の関係
「残念だったね。早く捕まるといいね」。希美さんの葬儀で住民が声をかけると丸山容疑者は「そうですね」と淡々と答えたという。
丸山容疑者の後援会関係者によると、今年の8月ごろに丸山容疑者から「東京の会社が経営に参画し、経営者が代わる」という旨の話を聞き、「笑亀の名前は残してほしい」と伝えたという。経営方針や丸山容疑者の交友関係などを原因として「夫婦はあまりうまくいっていなかった」と話す人もいた。
議員会館に捜索が入った10月ごろから、丸山容疑者の事件への関与が取り沙汰されるようになった。
捜査を意識していたかは不明だが、逮捕される約2週間前、地元関係者の間で丸山容疑者が携帯電話に出ないと話題になった。
11月26日昼に地元市議に丸山容疑者から着信があった。番号が変わっていたので理由を尋ねると、丸山容疑者は「もう少ししたら(以前使っていた携帯が)戻ってくる」と答えたという。市議は「議員の仕事をしている人間が番号を変えるのはおかしい」と不審に思ったという。
4月の統一地方選に向けて3選出馬の準備をしていたという丸山容疑者。逮捕後、所属する自民党県議団の風間辰一団長は「若手として期待される議員だった」と肩を落とした。【竹田直人、渡辺薫、田倉直彦】