斎藤健法相は9日、名古屋刑務所(愛知県みよし市)で、職員が受刑者に対して暴行を繰り返していた疑いがあることを臨時会見で発表した。映画やドラマの悪役のような「悪い看守」が今も実在するということなのか。元山口組系「義竜会」会長で、暴力団組員の更生を支援するNPO法人「五仁會」主宰の竹垣悟氏が、過去に5回服役した経験を振り返りつつ実態を解説する。
【写真を見る】6代目山口組「司組長」の誕生会に招かれた銀座の有名ママ、もともと高山姓だった弘道会幹部のその後 まず事件の概要を見ておこう。

「暴行に関与していた刑務官は22人で、去年11月上旬から今年8月下旬にかけ、60代、50代、40代の男性の受刑者3人に、顔や手をたたいたり、アルコールスプレーを顔に噴射したり、お尻をサンダルでたたいたりしていたということです。関係した刑務官らは20代~30代で、採用から3年未満の者がほとんどでした」緊急会見で発表した斎藤健法相 と、社会部デスク。「今年8月下旬、60代の受刑者が全治5日程度のケガを負っているのを職員が見つけたことで、コトが露見したようです。刑務官らは聞き取りに対し、受刑者が指示に従わず大声を出したり要求を繰り返したりしたため、暴行に及んだと述べているようです」(同)厳しい刑務官を選りすぐり 名古屋刑務所では2001年に、男性受刑者(当時43)が肛門に消防用ホースで放水された後に死亡する事件などが発生している。「その事件では刑務官らが、特別公務員暴行陵虐致死罪などで起訴され、有罪判決を受けました。今回も名古屋地検が捜査に着手し、立件を視野に入れています」(同) 初犯から3度、神戸刑務所で、その後に京都、大阪刑務所と計5度の服役を経験した竹垣氏は、さぞや刑務官の振る舞いに義憤を感じていることだろうと思いきや、そうでもないようだ。「暴行は決して許される行為ではありませんが、刑務官の側にも言い分があるのだと思います。受刑者のことを“懲役”と呼びますが、彼らが現場の刑務官をナメきっていることがよくあるんです。現場担当の言うことをきかない場合、シメる(規律を厳しく保とうとする)ことになっていくのでしょう」 と話し、こう続ける。「刑務所でマジメにふるまえない者が、社会に出て物事をちゃんと務められるわけがないというのが私の考えです。そういった懲役が多い刑務所には厳しい刑務官を各地から選りすぐり、その空気を変えてしまおうとすることがあると聞いたことがあります」(同)もっとも厳しい刑務所とは? 先述のように名古屋では死亡事件が発生し、刑務官らが有罪判決を受けている。「あのような痛ましい事件があったせいで懲役に対して厳しく接することができなくなっていたのか判然とはしませんが、現場が態度の悪い懲役の扱いに手を焼いていたことは間違いないでしょう」(同) 竹垣氏によれば、現在もっとも厳しいのが神戸刑務所で、逆に一番緩めだとされているのが、沖縄刑務所なのだとか。LB刑務所、つまり執行刑期が10年以上かつ反社会的勢力など犯罪傾向の進んだ懲役が収容される刑務所では刑務官は特に規律を厳しく保とうとするのだという。「トイレも含めて畳2枚くらいの広さしかなかったでしょうかね……。私は刑務所では常にマジメにというか規律を守った日々を送っていたので、刑務官も丁寧に接してくれていました。中には刑務所出てからも付き合いが続いた者もいますし、収容された若い衆が私の組織の名を出すと“よくしてもらった”とも聞きました」(同)懲罰房に置かれていた1冊とは ヤクザは刑務所に出たり入ったりの業界だけに、そういった人間関係がモノを言うのだろう。ちなみに、なぜか懲罰房には松下幸之助著『道をひらく』だけが置いてあったという。「佐木隆三さんが書いて、『すばらしき世界』という映画にもなった『身分帳』というノンフィクション・ノベルがありますね。身分帳とは、刑務所にいる懲役がその間、何をしたかについて事細かにメモされているもので実際に存在します。マジメにふるまえない者は身分帳にそのように記載されるので、シメられるターゲットとなりやすいと思います」(同) 竹垣氏の服役していた頃の神戸刑務所は、平和が保たれていたのだろうか、こんなこともあったという。「私が入っていた1979年ごろ、同時に竹中正久4代目山口組組長も懲役でした。当時は3代目の若頭補佐だったと思います。剣道の防具をマジメに作っていたと後に聞いたことがありました」(同)山本若頭が島倉千代子を 当時、3代目山口組の山本健一若頭は竹中組長をとても評価しており、可能な範囲で激励のイベントを行うようにしていたのです。 その1つが慰問で、山本若頭が仲の良い島倉千代子さんを神戸刑務所に呼んだというか派遣したこともありました。その際にはあの細木数子さんも同行し、私らの工場にもやってきました。私たちの食事の中からたくあんをつまんで、“刑務所のたくあんって美味しいのね”と言っていたのが印象的でした」(同) 細木さんは当時まだ40代で、テレビで「地獄に落ちるわよ」と言ってブレイクする遥か前のことになる。「神戸刑務所では、工場の壁に『遵法精神』と大きく貼ってあってありました。もちろん懲役への戒めであるわけですが、今回のような事件が起こると、刑務官に対してもある種のブレーキのように作用していたこともあったのかなと思ったりもしますね」デイリー新潮編集部
まず事件の概要を見ておこう。
「暴行に関与していた刑務官は22人で、去年11月上旬から今年8月下旬にかけ、60代、50代、40代の男性の受刑者3人に、顔や手をたたいたり、アルコールスプレーを顔に噴射したり、お尻をサンダルでたたいたりしていたということです。関係した刑務官らは20代~30代で、採用から3年未満の者がほとんどでした」
と、社会部デスク。
「今年8月下旬、60代の受刑者が全治5日程度のケガを負っているのを職員が見つけたことで、コトが露見したようです。刑務官らは聞き取りに対し、受刑者が指示に従わず大声を出したり要求を繰り返したりしたため、暴行に及んだと述べているようです」(同)
名古屋刑務所では2001年に、男性受刑者(当時43)が肛門に消防用ホースで放水された後に死亡する事件などが発生している。
「その事件では刑務官らが、特別公務員暴行陵虐致死罪などで起訴され、有罪判決を受けました。今回も名古屋地検が捜査に着手し、立件を視野に入れています」(同)
初犯から3度、神戸刑務所で、その後に京都、大阪刑務所と計5度の服役を経験した竹垣氏は、さぞや刑務官の振る舞いに義憤を感じていることだろうと思いきや、そうでもないようだ。
「暴行は決して許される行為ではありませんが、刑務官の側にも言い分があるのだと思います。受刑者のことを“懲役”と呼びますが、彼らが現場の刑務官をナメきっていることがよくあるんです。現場担当の言うことをきかない場合、シメる(規律を厳しく保とうとする)ことになっていくのでしょう」
と話し、こう続ける。
「刑務所でマジメにふるまえない者が、社会に出て物事をちゃんと務められるわけがないというのが私の考えです。そういった懲役が多い刑務所には厳しい刑務官を各地から選りすぐり、その空気を変えてしまおうとすることがあると聞いたことがあります」(同)
先述のように名古屋では死亡事件が発生し、刑務官らが有罪判決を受けている。
「あのような痛ましい事件があったせいで懲役に対して厳しく接することができなくなっていたのか判然とはしませんが、現場が態度の悪い懲役の扱いに手を焼いていたことは間違いないでしょう」(同)
竹垣氏によれば、現在もっとも厳しいのが神戸刑務所で、逆に一番緩めだとされているのが、沖縄刑務所なのだとか。LB刑務所、つまり執行刑期が10年以上かつ反社会的勢力など犯罪傾向の進んだ懲役が収容される刑務所では刑務官は特に規律を厳しく保とうとするのだという。
「トイレも含めて畳2枚くらいの広さしかなかったでしょうかね……。私は刑務所では常にマジメにというか規律を守った日々を送っていたので、刑務官も丁寧に接してくれていました。中には刑務所出てからも付き合いが続いた者もいますし、収容された若い衆が私の組織の名を出すと“よくしてもらった”とも聞きました」(同)
ヤクザは刑務所に出たり入ったりの業界だけに、そういった人間関係がモノを言うのだろう。ちなみに、なぜか懲罰房には松下幸之助著『道をひらく』だけが置いてあったという。
「佐木隆三さんが書いて、『すばらしき世界』という映画にもなった『身分帳』というノンフィクション・ノベルがありますね。身分帳とは、刑務所にいる懲役がその間、何をしたかについて事細かにメモされているもので実際に存在します。マジメにふるまえない者は身分帳にそのように記載されるので、シメられるターゲットとなりやすいと思います」(同)
竹垣氏の服役していた頃の神戸刑務所は、平和が保たれていたのだろうか、こんなこともあったという。
「私が入っていた1979年ごろ、同時に竹中正久4代目山口組組長も懲役でした。当時は3代目の若頭補佐だったと思います。剣道の防具をマジメに作っていたと後に聞いたことがありました」(同)
当時、3代目山口組の山本健一若頭は竹中組長をとても評価しており、可能な範囲で激励のイベントを行うようにしていたのです。
その1つが慰問で、山本若頭が仲の良い島倉千代子さんを神戸刑務所に呼んだというか派遣したこともありました。その際にはあの細木数子さんも同行し、私らの工場にもやってきました。私たちの食事の中からたくあんをつまんで、“刑務所のたくあんって美味しいのね”と言っていたのが印象的でした」(同)
細木さんは当時まだ40代で、テレビで「地獄に落ちるわよ」と言ってブレイクする遥か前のことになる。
「神戸刑務所では、工場の壁に『遵法精神』と大きく貼ってあってありました。もちろん懲役への戒めであるわけですが、今回のような事件が起こると、刑務官に対してもある種のブレーキのように作用していたこともあったのかなと思ったりもしますね」
デイリー新潮編集部