はた目にも異常な走行だったという。黒い軽自動車は、T字路を左折しようとして真正面を走る線路内へ。その後、対向車線をはみ出し客待ちをしていたタクシーに追突。65歳の運転手に、全治1週間のケガを負わせた。
11月3日に危険運転致傷などの疑いで逮捕されたのは、福岡市南区に住む会社員・梅崎慎也容疑者(34)だ。
「梅崎容疑者が事故を起こしたのは、10月29日深夜2時ごろです。泥酔して、正常な運転ができない状態だったとか。自宅近くの西鉄『井尻駅』付近でタクシーと衝突。その場から逃亡します。警察の調べに対し、梅崎容疑者はこう供述しているそうです。『店でビールとウイスキーを、それぞれ2~3杯ずつ飲んだ。現場から逃げたことは間違いないが、記憶がなく事故の状況を覚えていない』と」(全国紙社会部記者)
事故当時、梅崎容疑者の呼気からは実に基準値の4倍のアルコールが検出されたという。現場から逃亡するも、犯人がスグに確保された背景には意外な理由がある。
「事故を目撃した男性が、車で梅崎容疑者を追跡。『逃げずに警察に事情を説明しろ』などと説得し、現場に連れ戻したんです。目撃者の110番通報で事件が発覚。追突されたタクシーのドライブレコーダーには、バックして逃亡する梅崎容疑者の車が映っていました」(同前)
事件の背景を、元神奈川県警の刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が解説する。
「基準値の4倍のアルコールが出たということは、容疑者が供述したビールとウイスキー2~3杯程度の酒量ではないはずです。はるかに多くの酒を飲んでいたと思われます。正常な運転をするどころか、意識がとんでいた状態だったでしょう。飲酒運転は、決して家が近いからという理由で許されるものではありません。
福岡では06年8月に、泥酔した男が運転する車に追突され乗用車が博多湾に転落するという事故がありました。3歳児を含む、乗用車に乗っていた家族5人が死傷。加害者は懲役20年の刑を受けています。この他にも、福岡では飲酒運転の事故が多い。これから年末年始にかけ、酒を飲む機会も多くなるでしょう。一人ひとりが『飲んだら絶対に乗らない』と心に誓う必要があります」
新型コロナウイルスの感染拡大で自粛していた飲み会が、今年に入り開催されるようになった。飲んで車で帰宅するなど、もってのほか。求められるのは、個々人の飲酒運転に対する強い自覚だろう。