先月29日、大麻に含まれる成分を原料とした医薬品について、厚生労働省は国の承認を得た場合、輸入・製造と使用が可能になるよう法改正する方針を示した。
【映像】「大麻」成分 医薬品解禁OKの国(画像あり) 大麻の成分は条件付きで治験が可能だったが、医療における使用は禁止されている。一方で、現場から「てんかんに効果がある」といった意見があり、法改正を求める声が上がっていた。 てんかんとは、突然意識を失って無反応になるなどの発作を繰り返し起こす病気のことだ。中には、治療が難しいケースもあり、Twitterでは「娘が難治性のてんかんだ。心待ちにしていた」「まだ第一歩。てんかん以外の病気でも使えるようにしてほしい」といった期待の声がある一方、依存や危険性などが指摘されている。

生後3カ月でウエスト症候群(点頭てんかん)を発症した娘を持つ宮部貴幸氏は「やっとか」と話す。「厚労省の取りまとめの話を聞いたのは、1年以上前。ようやくここまできた。使用できる人がかなり限定されているので、この先、他の人にも広がるのかどうか疑問はある。そのあたりは早く議論が進んでほしい。娘は手術や投薬、いろいろしてもダメだった。最終的に、脳の一部を切除する手術する直前でCBDを始めた。飲み始めたら発作が3週間で止まって、今も2年ほど、ずっと止まっている」 CBCとTHCは、大麻草などに含まれる大麻成分(カンナビノイド)のことだ。脳の一部を切除する直前だった症状が、CBDを飲むだけで止まったのか。「当時は投薬も並行していたが、てんかんの中で2年間発作が止まると、治ったと診断される。その2年を越えたあたりから、投薬をやめて、今はCBDを継続している。普通のてんかんは気絶して倒れるイメージがあるかもしれないが、ウエスト症候群(点頭てんかん)は、子供のモロー反射に似たような症状だ。体がピクッピクッと動くまでがワンセットで、7回から10回くらい、1日何回も繰り返す感じだ。それが長く続くと、気絶してしまう。CBDを飲むようになって、最初は症状が出ることもあったが、2週間を過ぎたあたりから急にピタッと止まった」 CBCの副作用について、「今はそんなに大変なことはない」と語る宮部氏。「一番心配なのは、やはりこのまま飲み続けて、大きくなったとき、子供が病気を再発するかどうか。それを個人的には一番心配している」とした上で、費用に関して、こう話す。「医薬品となると保険適用される。難病の診断名がついている子に関しては、おそらくほぼ全部公費負担で出してもらえる形になるだろう。でも、今回の法改正の方針であるエピディオレックスは娘のウエスト症候群に使えない。だから、自分で製品を作って、販売している。原料を仕入れて自分たちで作って使っている。費用としてはそんなに高くはないが、やはり月に数万円以上はかかっている」 一般社団法人「GREEN ZONE JAPAN」代表理事で内科医の正高佑志氏は、YouTubeやTwitterで大麻成分を使った医薬品の必要性を発信している。正高氏は「報道で『医療大麻解禁へ』と書かれると『がんの患者さんが使えるようになるのでは』『うつ病の人が大麻を吸えるようになるのではないか』といった声が出るが、今回、認められようとしているのは一部の疾患だ。特に難治てんかんに対して、医薬品として医師が処方できるといった限定的なものだ」と指摘する。 実際に海外ではどのように使われているのか。正高氏によるとドイツなどでは「花の部分をジョイントにして吸えるものもあって、漢方薬のように使用できる」という。今回の決定では、厚生労働省がそういった使い方を認めることはないようだ。「大麻取締法ができたのは1948年だ。70年以上前の、まだCBDもTHCも見つかっていなかった頃に作られた法律で、ある種、時代遅れだ。成分について書かれていなくて、代わりに花がダメで茎はOKといったルールになっている。今、国内で流通しているものは茎から取れているCBDだけ。数々あるCBD製品の中のごく一部だけOKだったものを今回厚労省は『医薬品として流通しているものは花からできているので、使えるようにしよう』と言っている」 要は医薬品としては認められない中、医薬品ではないCBDを使っている製品(サプリメント)が使われている。 てんかんの患者会を運営している正高氏は「薬を5種類、6種類飲んでも発作が止まらなかった子がピタッと止まっている例が何例も出ている」と明かす。「サプリメントで流通しているCBDは、医薬品のように大量に飲むケースが多いので、非常にお金がかかる。月額で10万円ほどかかるので、簡単かつ気軽に使える金額ではない。今、治験が始まろうとしているのは、難治てんかんの中でもごく一部の病気だけ。全ての子供たちに行き渡るわけではないが、一歩前進だと思っている」 サプリメントの効果・効能は、治療薬としての大麻成分と比較して何か違いがあるのだろうか。正高氏は「基本的には中身は同じと思っていい」と答える。「ただ、サプリメントとして使われているものの方が、実は薬としての切れ味がいいのではないかと言われている。CBDという成分だけを単体で使っているのが薬だ。その他にも大麻にはいろいろな有効成分が入っている。THCは、日本では悪者にされているような成分だが、これにも抗てんかん作用がある。少量入っていた方が薬として切れがいいといった意見もある。一方で、いろいろ成分が入ってしまうと、品質管理において、ばらつきが出る。医薬品は品質管理を厳密にやらないといけない。それで矛盾が出てきてしまう」 海外では、サプリメントのようなものが主流になっているのだろうか。「海外でも大麻を医療用途に使っている90%以上が、サプリメントや食品などだ。たとえば、オイルで皮膚に塗るようなもの、グミのようにして食べるもの、電子たばこみたいに吸うものなど、いろいろある。日本国内でも、我々の調査で、痛みや不安、不眠、うつなど、そういう症状に対して使っている方が多いと明らかになっている」 副作用など、使用上における注意点はあるのだろうか。正高氏は「ちょっと眠気が出るので車の運転は気を付けたほうがいい。あと、薬物の相互作用がある。血中濃度が上がってしまうので、てんかん薬の一部でも効きすぎてしまって、他のてんかん薬の副作用が出てしまうケースがある。大量に摂るときは、お医者さんの診療が必要だ。ただ、少量に使う分には非常に安全性が高い。海外の一部の国でも、食品として流通しているくらいだ」 厚労省の取りまとめでは「グリーン・ラッシュ」といった表現がある。今後10年において、有害性のない大麻由来の成分を使った製品などの市場規模が7~8兆円になるという試算が出ている。厚労省は、安全性を確保しながら、仕組みをきちんと作っていく必要がある。 これについて、正高氏は「すでにCBDは、ここ数年でかなり盛り上がっている。去年の時点で日本国内の市場規模がだいたい200億円弱だ。これが2025年には800億円になる試算もある。800億円がどのくらいかというと、家庭用のドレッシングと市場規模が同じくらいだ」と話した。(「ABEMA Prime」より)
大麻の成分は条件付きで治験が可能だったが、医療における使用は禁止されている。一方で、現場から「てんかんに効果がある」といった意見があり、法改正を求める声が上がっていた。
てんかんとは、突然意識を失って無反応になるなどの発作を繰り返し起こす病気のことだ。中には、治療が難しいケースもあり、Twitterでは「娘が難治性のてんかんだ。心待ちにしていた」「まだ第一歩。てんかん以外の病気でも使えるようにしてほしい」といった期待の声がある一方、依存や危険性などが指摘されている。
生後3カ月でウエスト症候群(点頭てんかん)を発症した娘を持つ宮部貴幸氏は「やっとか」と話す。
「厚労省の取りまとめの話を聞いたのは、1年以上前。ようやくここまできた。使用できる人がかなり限定されているので、この先、他の人にも広がるのかどうか疑問はある。そのあたりは早く議論が進んでほしい。娘は手術や投薬、いろいろしてもダメだった。最終的に、脳の一部を切除する手術する直前でCBDを始めた。飲み始めたら発作が3週間で止まって、今も2年ほど、ずっと止まっている」
CBCとTHCは、大麻草などに含まれる大麻成分(カンナビノイド)のことだ。脳の一部を切除する直前だった症状が、CBDを飲むだけで止まったのか。
「当時は投薬も並行していたが、てんかんの中で2年間発作が止まると、治ったと診断される。その2年を越えたあたりから、投薬をやめて、今はCBDを継続している。普通のてんかんは気絶して倒れるイメージがあるかもしれないが、ウエスト症候群(点頭てんかん)は、子供のモロー反射に似たような症状だ。体がピクッピクッと動くまでがワンセットで、7回から10回くらい、1日何回も繰り返す感じだ。それが長く続くと、気絶してしまう。CBDを飲むようになって、最初は症状が出ることもあったが、2週間を過ぎたあたりから急にピタッと止まった」
CBCの副作用について、「今はそんなに大変なことはない」と語る宮部氏。「一番心配なのは、やはりこのまま飲み続けて、大きくなったとき、子供が病気を再発するかどうか。それを個人的には一番心配している」とした上で、費用に関して、こう話す。
「医薬品となると保険適用される。難病の診断名がついている子に関しては、おそらくほぼ全部公費負担で出してもらえる形になるだろう。でも、今回の法改正の方針であるエピディオレックスは娘のウエスト症候群に使えない。だから、自分で製品を作って、販売している。原料を仕入れて自分たちで作って使っている。費用としてはそんなに高くはないが、やはり月に数万円以上はかかっている」
一般社団法人「GREEN ZONE JAPAN」代表理事で内科医の正高佑志氏は、YouTubeやTwitterで大麻成分を使った医薬品の必要性を発信している。正高氏は「報道で『医療大麻解禁へ』と書かれると『がんの患者さんが使えるようになるのでは』『うつ病の人が大麻を吸えるようになるのではないか』といった声が出るが、今回、認められようとしているのは一部の疾患だ。特に難治てんかんに対して、医薬品として医師が処方できるといった限定的なものだ」と指摘する。
実際に海外ではどのように使われているのか。正高氏によるとドイツなどでは「花の部分をジョイントにして吸えるものもあって、漢方薬のように使用できる」という。今回の決定では、厚生労働省がそういった使い方を認めることはないようだ。
「大麻取締法ができたのは1948年だ。70年以上前の、まだCBDもTHCも見つかっていなかった頃に作られた法律で、ある種、時代遅れだ。成分について書かれていなくて、代わりに花がダメで茎はOKといったルールになっている。今、国内で流通しているものは茎から取れているCBDだけ。数々あるCBD製品の中のごく一部だけOKだったものを今回厚労省は『医薬品として流通しているものは花からできているので、使えるようにしよう』と言っている」
要は医薬品としては認められない中、医薬品ではないCBDを使っている製品(サプリメント)が使われている。
てんかんの患者会を運営している正高氏は「薬を5種類、6種類飲んでも発作が止まらなかった子がピタッと止まっている例が何例も出ている」と明かす。
「サプリメントで流通しているCBDは、医薬品のように大量に飲むケースが多いので、非常にお金がかかる。月額で10万円ほどかかるので、簡単かつ気軽に使える金額ではない。今、治験が始まろうとしているのは、難治てんかんの中でもごく一部の病気だけ。全ての子供たちに行き渡るわけではないが、一歩前進だと思っている」
サプリメントの効果・効能は、治療薬としての大麻成分と比較して何か違いがあるのだろうか。正高氏は「基本的には中身は同じと思っていい」と答える。
「ただ、サプリメントとして使われているものの方が、実は薬としての切れ味がいいのではないかと言われている。CBDという成分だけを単体で使っているのが薬だ。その他にも大麻にはいろいろな有効成分が入っている。THCは、日本では悪者にされているような成分だが、これにも抗てんかん作用がある。少量入っていた方が薬として切れがいいといった意見もある。一方で、いろいろ成分が入ってしまうと、品質管理において、ばらつきが出る。医薬品は品質管理を厳密にやらないといけない。それで矛盾が出てきてしまう」
海外では、サプリメントのようなものが主流になっているのだろうか。
「海外でも大麻を医療用途に使っている90%以上が、サプリメントや食品などだ。たとえば、オイルで皮膚に塗るようなもの、グミのようにして食べるもの、電子たばこみたいに吸うものなど、いろいろある。日本国内でも、我々の調査で、痛みや不安、不眠、うつなど、そういう症状に対して使っている方が多いと明らかになっている」
副作用など、使用上における注意点はあるのだろうか。正高氏は「ちょっと眠気が出るので車の運転は気を付けたほうがいい。あと、薬物の相互作用がある。血中濃度が上がってしまうので、てんかん薬の一部でも効きすぎてしまって、他のてんかん薬の副作用が出てしまうケースがある。大量に摂るときは、お医者さんの診療が必要だ。ただ、少量に使う分には非常に安全性が高い。海外の一部の国でも、食品として流通しているくらいだ」
厚労省の取りまとめでは「グリーン・ラッシュ」といった表現がある。今後10年において、有害性のない大麻由来の成分を使った製品などの市場規模が7~8兆円になるという試算が出ている。厚労省は、安全性を確保しながら、仕組みをきちんと作っていく必要がある。
これについて、正高氏は「すでにCBDは、ここ数年でかなり盛り上がっている。去年の時点で日本国内の市場規模がだいたい200億円弱だ。これが2025年には800億円になる試算もある。800億円がどのくらいかというと、家庭用のドレッシングと市場規模が同じくらいだ」と話した。(「ABEMA Prime」より)