ひと気のない未明の駅構内を巡回していた警備員は、その姿を見てギョッとしただろう。
ベンチに仰向けに横たわる男性は、全身に大火傷を負っていたのだ。顔の皮膚は剥がれ落ち、肌は無残にただれている。警備員が119番通報し、スグに病院へ搬送。男性は、集中治療室で6日間にわたり治療を受け一命をとりとめた――。
10月4日、警視庁捜査1課は三菱UFJ銀行の子会社「三菱UFJインフォメーションテクノロジー」社員の奥村啓志容疑者(33、東京都墨田区)を逮捕した。30代の知人男性Aさんに熱湯をかけ、全治3ヵ月の重傷を負わせた傷害の疑いが持たれている。
「Aさんは、奥村容疑者の大学院の1学年先輩です。卒業後も、たまに旅行に行く仲だったとか。Aさんは今年5月、奥村容疑者に仕事上のトラブルの相談をもちかけます。奥村容疑者は『問題解決のために200万円を反社会的勢力から借りて立て替えた』とウソをついて、カネを要求したそうです。
Aさんが要求を渋ると、『反社が取りたてにいくぞ』と脅迫。6月から現金など、250万円相当を騙し取ったそうです。奥村容疑者は、さらに『借金の支払いが足りない』などと1000通にのぼるメッセージをAさんに送信。実際には借金はなかったそうですが、Aさんは洗脳されたような状態だったと聞いています」(全国紙社会部記者)
事件が起きたのは8月27日だ。奥村容疑者は「カネを返せ。午前2時までに来い」と、SNSでAさんを港区新橋のホテルへ呼び出す。浴室で行われたのは、凄惨な暴行だった。
「Aさんを四つん這いにさせ、服の上から備えつけの電気ケトルで沸騰した熱湯を数十回にわたり浴びせたそうです。Aさんは午前4時から午後2時にかけホテルに滞在中、2時間にわたり熱湯をかけられたとか。火傷は、全身の4割におよんだそうです。犯行後、しばらくAさんは水風呂につかっていたと聞いています。
奥村容疑者に『帰っていいぞ』と言われホテルを出たAさんは、歩いて10分ほどの距離にある地下鉄・芝公園駅で休憩。その後、午後8時半ごろにはJR川崎駅に到着しました。ベンチに横たわると、そのまま意識不明に。構内を巡回中の警備員に発見されたのは、翌日未明の午前2時過ぎでした」(同前)
集中治療室で手術を受けたAさんは、事件から1週間ほどしてようやく意識を取り戻す。Aさんの証言や防犯カメラの映像などから、奥村容疑者の犯行が明らかに。奥村容疑者は犯行を認め、「(Aさんが)ウソばかり言うので腹が立った」「借金の返済に応じてもらえなかった」などと証言しているという。
三菱UFJ銀行は「子会社社員が逮捕されたことは誠に遺憾です」とのコメントを発表。警視庁は架空の借金返済をAさんに迫っていたとみて、恐喝の疑いでも奥村容疑者を調べる方針だ。