新人消防士の育成のためだとして、大阪府堺市消防局がふるさと納税を活用した100万円のクラウドファンディングを始め、なぜ税金を使わないのかとネット上で疑問が相次いでいる。
集めたお金は、消防士の活動服などに充てられるという。クラファンにした理由について、市消防局の見解を聞いた。
「新人消防士応援プロジェクト」と題したクラファンの実施について、堺市の永藤英機市長は2022年10月6日にツイッターでこう呼びかけた。
このプロジェクトは、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」で3日から年末までの90日間の日程でスタートした。そのページでは、寄付金を募る趣旨について、次のように説明した。
目標額に達しなかったり、それ以上の寄付が集まったりした場合も、消防士の服購入費などに使うとした。
寄付した人に対しては、通常の返礼品を送るほか、返礼品を選ばない場合には、特典を用意した。「極・消防体験ツアー」として、4月にオープンした堺市総合防災センターで、消防士になりきって消防車に乗って走行したり、普段見ることのできない施設の裏側を見せたりするという内容だ。ツアーは、23年3月21日の祝日に先着200人を対象にそれぞれ2回に分けて行う。
寄付額は、1口5000円として、1口当たり2人までツアーに参加できるとしている。
永藤市長がツイッターでプロジェクトへの応援を呼びかけると、リプライで疑問の声が相次ぎ寄せられた。
クラファンの形にしたことへの反発が多く、「え? 大阪の消防署は民間経営?」「市民と職員の安全に直結する部分をCFって」「普通は市が予算を組んで行うべきことでは」といった意見が続々寄せられている。
永藤市長や市職員の報酬・給与アップが伝えられているだけに、なぜ消防士育成のために人件費などを削らないのかとの声も多かった。
堺市消防局の総務課は10月7日、消防士育成費用をクラファンに頼った理由は大きく3つあると、J-CASTニュースの取材に答えた。
1つは、財政の危機宣言にかかわらず、最低限必要な経費の予算は確保しており、プラスアルファの事業として行うことだとした。
2つ目は、寄付することを通じて市民などに消防を身近に感じてもらい、消防士も購入した服を着て意欲向上につなげるという。3つ目は、総合防災センターを利用してもらうことで活性化させ、防災意識の高揚にもつなげることだとしている。
堺市民以外は、返礼品か特典の体験ツアーかを選べるが、市民については、返礼品を受け取れないため、特典の体験ツアーだけ申し込めるとした。
クラファンは、7日21時現在では、19人から計23万円の寄付があった。このことについては、「募集を始めてから、すぐに反応していただきましたので、驚いています。市外からも含め、数件の問い合わせがあり、『子供を体験させたい』『どんなことができるのか』といった声が届いています」と話した。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)