お化けや災害、はたまた厳しい上司など、世の中には「こわい」ものがたくさんあります。 この「こわい」という言葉には「怖い」「恐い」といった表記がありますが、この2つは何が違うのでしょう。今回は「怖い」と「恐い」の違いについて解説していきます。 「怖い」と「恐い」の意味国語辞典では、「怖い」「恐い」はいずれも「こわい」と読む同じ意味の語として扱われています。 『大辞林 4.0』(三省堂)【こわい】(怖い・恐い) 1.危害を加えられそうで逃げ出したい感じだ。自分に危険なことが起こりそうで身がすくむ思いだ。 2.悪い結果が予想されて不安だ。先行きが心配で避けたい。 3.軽視できない。予想以上に大した力をもっている。 また、個別の漢字の意味としても、「怖」「恐」を「こわい」と読む場合、いずれも「悪いことが起こりそうだったり、自分に害を与えそうだったりして避けたい気持ちである」(『新潮日本語漢字辞典』新潮社)という同じ意味を表すとされています。 「怖い」と「恐い」に大きな意味の違いはないと考えてよいでしょう。 「怖い」と「恐い」の違いでは、この2つは何が違うのかというと、常用漢字表に記載されているかどうかです。 常用漢字表は、公用文などの正式な文書や、新聞・放送など、多くの人が目にするもので使われる、誰にでも伝わりやすい一般的な漢字表記の目安をまとめたものです。 この常用漢字表では、「こわい」と読むのは「怖い」のみで、「恐い」は載っていません。 ビジネス文書などでも、「恐い」は使わず、「怖い」とする方がよいでしょう。 「こわい」と「おそろしい」「怖」や「恐」は「こわい」以外に、「おそろしい」とも読む漢字です。 この「おそろしい」は、「こわい」と意味のよく似た言葉ですが、漢字で表記する場合、「こわい」とは逆に「怖」ではなく「恐」を使う方がよいと考えられます。 常用漢字表では、「怖」には「おそろしい」の読みが記載されておらず常用外とされているほか、国語辞典でも、「おそろしい」の項には「恐ろしい」の漢字表記しか記載がないものも多く、「怖ろしい」という表記は一般的ではないと考えられるためです。
「怖」と「恐」はいずれも「こわい」「おそろしい」と共通した読み方をする漢字ですが、一般的には、「こわい」は「怖い」、「おそろしい」は「恐ろしい」と表記するのがよいでしょう。
「こわい」と「おそろしい」の違いでは「こわい」と「おそろしい」はどのように使い分ければよいのでしょう。 まず、あらためて「おそろしい」の意味を確認します。 『大辞林 4.0』(三省堂)【おそろしい】 ゞ寡櫃箘攘匹稜阿魎兇困襦 ◆幣来のことを心配して)避けたい。警戒しなければならない。 D度が並外れている。驚くほど立派だ。 ど垰弋弔澄説明がつかない。
「こわい」と同様に、恐怖などを意味するほか、畏敬の念や、程度が甚だしいというような意味も持つ語です。 また、「こわい」と「おそろしい」の意味や使い方の違いについて、『大辞林 4.0』には、以下の説明が加えられています。 ・「こわい」という語は「おそろしい」に似ているが、それよりも主観性が強く、また口語的である。 ・「こわい」は身に危険が感じられて、激しく気持ちをおびえさせる心情を主観的に表す語である。それに対して「おそろしい」はある事物に自分の身を押しつぶすほどの強度の力や意志が感じられ、激しい恐怖や畏敬の念をいだくさまを客観的にいう つまり、恐怖のうち、口語的で主観的な表現である「こわい」は「怖い」、客観性を伴う表現である「おそろしい」という場合は「恐ろしい」とするのがよさそうです。
用例を使って具体的に使い分け方を示します。
「怖い」の例文 ・暗い夜道を一人で歩くのは怖い。 ・お化け屋敷に入れないなんて、君は怖がりだね。 ・そんなことを言っていると、あとが怖いよ。 「恐ろしい」の例文 ・不正に手を染めるという恐ろしい考えが頭をよぎる。 ・事故の際の恐ろしい光景が頭から離れない。 ・彼は恐ろしく力が強い。 「こわい」は「怖い」 「おそろしい」は「恐ろしい」危険や不安を感じて逃げ出したくなるような気持ちを表す「こわい」や「おそろしい」は、どちらも「怖」や「恐」の漢字で表される言葉です。 似た意味の言葉、似た意味を持つ漢字ですので使い分けは難しいところですが、より主観的な「こわい」の場合は「怖い」、客観性のある「おそろしい」の場合は「恐ろしい」とするのがよいでしょう。