本来は海に生息するエイが、都市部の川などで相次いで目撃されています。そして、エイに刺される被害も出ています。
■毒針に刺され「電流突き抜ける衝撃」
ヒラヒラと舞うように優雅に泳ぐエイ。普段は、海底の砂地に潜って生活をしているエイが…。
映像が撮影されたのは、都内屈指の高級住宅街・田園調布の横を流れる多摩川です。
今月、河口から10キロ以上も離れた場所で、エイが目撃されました。撮影した人に案内してもらいました。
エイを目撃した人:「ちょうど、あの辺りですかね。川の真ん中。当日は、せせらぎになってるぐらいの浅さでした。何だろうと思って、のぞき込んだらエイで、ちょっとびっくりして」「(Q.大きさは、どのくらいだった?)幅1メートル弱くらいかなと思う」
多摩川で見つかったのは、尻尾に毒針を持つ、アカエイ。
多摩川でアカエイに刺された佐々木友和さん:「水位はほとんどない状態で10センチくらい。普通にザバザバ歩いてたら、急に足の裏から、ものすごい衝撃が来まして」
今年4月、多摩川で釣りをしていたところ、誤ってエイを踏んでしまったといいます。
佐々木さん:「足の裏から、足を伝って脳天まで突き抜けるような衝撃。ビリビリビリビリビりって」
トゲは分厚いゴムのブーツを突き抜け、くるぶしにまで。履いていた靴下が血で真っ赤に染まりました。
佐々木さん:「痛さというよりか、しびれ。しびれてくる感覚ですね。『歩けなくなるかもしれない』というくらいの痛みになりましたね」
刺された箇所の周りには毒が回り、青黒く腫れてしまったという男性。すぐに救急車で搬送され、治療をしましたが…。
佐々木さん:「もう5カ月経つんですけど、傷はまだ残っている状態で。若干、内側がまだ内出血。今も軽くトントンってやると、ピリピリッピリピリッって指先に向かって、しびれが残っている状態ですね」
■川遊び不安…「見つけても触らないで」
アカエイのトゲは、のこぎりの歯のようになっていて、一度刺さると抜けにくくなっています。無理に抜こうとすると、傷口が広がってしまう可能性もあります。
釣りをする人:「子どもとかも、たまにここで遊んでいるんですよ。危ないと思います」
エイが見つかった場所は、生き物観察する課外活動の際に小学生が素足で入ることもあるといいます。
課外活動の関係者:「子どもたちがいる時には、(エイは)いてほしくないです。中に入るので、底に張り付いている魚だから踏む可能性があるので」
近所の住民:「水の中でボール遊びしたりとか、結構自由に皆、遊んでいるので…」
近所の高校生:「皆、多摩川に入るのが楽しみで、大好きな行事なので。なくなったりしたら、ちょっと嫌ですよね」
海にいるはずの毒を持つエイが、普段、水遊びなどをする多摩川にいることに、住民は不安の声を上げます。
水族館の飼育員は、こう警鐘を鳴らします。
マクセル アクアパーク品川 飼育担当・萬倫一さん:「川で遊ぶ人たちが不用意に触ってしまって、けがをしてしまう可能性はあると思います。まず、見つけたら触らないことですね。毒針を持っていますので、けがをする危険があります。『見つけても触らない』これを守って頂きたいですね」
■“全国各地の川”で目撃
本来、海に生息しているエイ。姿を現したのは、多摩川だけではありません。
千葉県習志野市を流れる菊田川では、1匹のエイが…。千葉市では3匹のエイが連なって泳ぐ姿がありました。
横浜市の街中を流れる川でも、悠々と泳いでいくエイがいました。
また、島根県では水草の上を優雅に泳ぐエイも発見されました。
その他にも、大阪、福岡、広島といった全国各地の川などで、エイの姿が確認されています。
■兵庫運河で相次ぐ目撃情報
兵庫では、神戸市の兵庫運河で、エイの目撃情報が相次いで寄せられているということです。
運河沿いを見てみると、ひれをひらりとさせ、優雅に泳ぐエイ。1メートルを超えているであろう、大きなエイもいました。
兵庫漁業協同組合・糸谷末二郎組合長:「今年は、ちょっと頻繁に見るようになりましたね」
取材班が確認しただけでも、その数10匹以上。
エイを見に来た人:「本当びっくりですよね」「(Q.改めて見て、どう?)でもエイって、やっぱりかわいいですよね。僕としては」「エイがいるっていうのを1週間くらい前かな。聞いて、即刻飛んできました」
住宅街の近くということもあり、エイの姿を一目見ようと多くの人が集まりました。
■アサリ“爆食”「本当に困る」
しかし、漁業関係者にとっては…。
糸谷組合長:「エイは一番外敵」
兵庫運河に大量に現れたのはナルトビエイ。その特徴が、カキやアサリなどの2枚貝が好物で、丈夫な歯を使って食べていきます。
糸谷組合長:「兵庫運河全体でえさのあるところに寄ってきています。アサリを育成している場所だから、そこにやっぱりエイもアサリを食べに寄ってきているのかなと思います」
以前は、汚染が深刻だったという兵庫運河。
水質改善の効果があるアサリを育成することで、多くの生き物が生息できる運河になってきたのですが…。
大切に育てたアサリがエイの出現により被害に遭っているといいます。
糸谷組合長:「エイがすごく大きいから、すごい食欲旺盛で。我々が、せっかく何年もかけて稚魚から育て上げたアサリを食べられたら、もうほんと困るので。我々にしたら、アサリのほうが大事だということで。対策は徹底的にやろうと思っています」
漁業組合では、ネットを取り付けて対策していますが。
糸谷組合長:「人的、動力的なことが負担やわね。ネットを大々的に張って、それもだめだったら、他の対策を練って。最終的には、駆除ということも考えないといけない」