「関係者の皆さま、それから視聴者の皆さま、訂正して謝罪致します。申し訳ございませんでした」
9月29日放映の「羽鳥慎一 モーニングショー」(テレビ朝日系)で、コメンテーターの玉川徹氏はいつになく神妙な表情で謝罪の弁を述べた。問題となっているのは、その前々日に執り行われた安倍晋三元総理の国葬を巡る発言だった。
【写真】“最敬礼”よりも深く、額を机ぎりぎりまで近づけて謝罪する「玉川氏」 吉田茂元総理以来、55年ぶりとなった国葬でとりわけ注目を集めたのは、菅義偉前総理の弔辞であろう。官房長官として長らく安倍政権を支えた菅氏は、“友人代表”という立場で安倍元総理への思いを読み上げた。

多くの人々の心を揺さぶったのは「銀座の焼鳥屋」での秘話だった。番組内で謝罪した玉川氏<総理、あなたは一度、持病が悪くなって総理の座を退きました。そのことを負い目に思って、二度目の自民党総裁選出馬をずいぶんと迷っておられました。最後には、二人で銀座の焼鳥屋に行き、私は一生懸命あなたを口説きました。それが使命だと思ったからです。三時間後には、ようやく首をタテに振ってくれた。私はこのことを、菅義偉生涯最大の達成として、いつまでも誇らしく思うであろうと思います>「趣味は安倍晋三」と語ることもあった菅氏らしい、ふたりの結びつきの強さを象徴するエピソードだ。この弔辞については多くのニュース番組、ワイドショーで取り上げられている。それは「モーニングショー」も同じだった。「これこそが国葬の政治的意図」 9月28日に放映された同番組ではこの弔辞の内容をパネルにして紹介。菅氏の写真入りのテロップには<声を詰まらせ…昭恵夫人も涙 会場から拍手>と書かれている。だが、菅氏の弔辞について見解を求められた、レギュラーコメンテーターの玉川徹氏は次のように語り出したのだ。「まぁ、これこそが国葬の政治的意図だと思うんですよね」「個人的な付き合いのあった人は、当然、悲しい思いを持って、その心情を吐露したのを見ればですね、同じ人間として胸に刺さる部分はあると思うんですよ。しかし、たとえばこれが国葬じゃなくて、自民党、内閣葬だった場合に、テレビでこれだけ取り上げたり、また、この番組でもパネルで紹介したり、さっきのVTRを流したりしたかというと、なってないですよね。つまり、国葬にしたからこそ、そういう風な部分を我々は見る形になる。僕も仕事上、見ざるを得ない」「僕は演出側の人間ですからね」 もちろん、国葬に賛否の声があったのは事実だが、菅氏の弔辞を「これこそが国葬の政治的意図」とはさすがに言い過ぎの感がある。だが、玉川氏はさらに続けるのだ。「国葬というものがありました。あの時には、ああいう風な胸に刺さる言葉がありました。そういう風な形で既成事実として残るんですよ。これこそが国葬の意図なんですね。だから、僕は、国葬自体がやっぱりない方がこの国にはいいんじゃないか。これが政治的な意図だと思うから」「僕は演出側の人間ですからね。テレビのディレクターをやってきましたから。それはそういう風に作りますよ、当然ながら。政治的意図がにおわないように、それは、制作者としては考えますよ。当然、これ、電通が入ってますからね」 これでは番組の視聴者が、菅氏の読み上げた弔辞は電通が用意したものだったと捉えても仕方あるまい。 おそらくテレ朝局内でも問題視されたのであろう。翌日の「モーニングショー」で玉川氏は、「昨日のパネルコーナーのなかで、私が安倍元総理の国葬に電通が関与しているという風にコメントしたんですけれども。この発言はですね、事実ではありませんでした。さらに、電通はですね、全く関わっていないということが分かりました」と述べ、冒頭の謝罪へと繋がるのである。問われるテレビ朝日の見識 玉川氏の発言について、政治部記者は次のように指摘する。「玉川さんの発言には、安倍元総理の国葬に反対する層の溜飲を下げたいという意図があったのだと思います。また、菅政権下で開催された東京五輪を巡っては、電通の元専務である高橋治之容疑者が逮捕された。それらをないまぜにして、国葬に“政治的意図”を感じると話したわけです。ただ、安倍さんと菅さんに深い親交があったのは紛れもない事実で、弔辞の内容は明らかに菅さん自身の経験がベースになっています。歯に衣着せない発言で知られる玉川さんは、これまで何度も『モーニングショー』で謝罪を繰り返していますが、今回の失言は過去の案件と比べてもはるかに問題です。一国の総理経験者が述べた弔辞に意見するのであれば、それなりの根拠が必要でしょう。そもそも、玉川さんが番組内で単に謝罪しただけで済む問題なのか。テレビ朝日としての見識が問われる事態だと思います」 当のテレビ朝日に質問すると、以下の回答が寄せられた。<電通が安倍元総理の国葬に関わっているというスタジオ内での発言が事実誤認であったため訂正と謝罪を行いました。この件で、抗議などはありません。今後はより一層、事実関係の確認を徹底してまいります> 一読して、木で鼻をくくったような内容という印象は否めない。また、社としての対応についても尋ねたが、明確な返答はなかった。玉川氏はテレ朝の看板番組のなかで「これこそが国葬の政治的意図」、「当然、これ、電通が入ってますからね」と断じているわけで、それを単なる“事実誤認”のひと言で済ませて視聴者は納得するだろうか。デイリー新潮編集部
吉田茂元総理以来、55年ぶりとなった国葬でとりわけ注目を集めたのは、菅義偉前総理の弔辞であろう。官房長官として長らく安倍政権を支えた菅氏は、“友人代表”という立場で安倍元総理への思いを読み上げた。
多くの人々の心を揺さぶったのは「銀座の焼鳥屋」での秘話だった。
<総理、あなたは一度、持病が悪くなって総理の座を退きました。そのことを負い目に思って、二度目の自民党総裁選出馬をずいぶんと迷っておられました。最後には、二人で銀座の焼鳥屋に行き、私は一生懸命あなたを口説きました。それが使命だと思ったからです。三時間後には、ようやく首をタテに振ってくれた。私はこのことを、菅義偉生涯最大の達成として、いつまでも誇らしく思うであろうと思います>
「趣味は安倍晋三」と語ることもあった菅氏らしい、ふたりの結びつきの強さを象徴するエピソードだ。この弔辞については多くのニュース番組、ワイドショーで取り上げられている。それは「モーニングショー」も同じだった。
9月28日に放映された同番組ではこの弔辞の内容をパネルにして紹介。菅氏の写真入りのテロップには<声を詰まらせ…昭恵夫人も涙 会場から拍手>と書かれている。だが、菅氏の弔辞について見解を求められた、レギュラーコメンテーターの玉川徹氏は次のように語り出したのだ。
「まぁ、これこそが国葬の政治的意図だと思うんですよね」
「個人的な付き合いのあった人は、当然、悲しい思いを持って、その心情を吐露したのを見ればですね、同じ人間として胸に刺さる部分はあると思うんですよ。しかし、たとえばこれが国葬じゃなくて、自民党、内閣葬だった場合に、テレビでこれだけ取り上げたり、また、この番組でもパネルで紹介したり、さっきのVTRを流したりしたかというと、なってないですよね。つまり、国葬にしたからこそ、そういう風な部分を我々は見る形になる。僕も仕事上、見ざるを得ない」
もちろん、国葬に賛否の声があったのは事実だが、菅氏の弔辞を「これこそが国葬の政治的意図」とはさすがに言い過ぎの感がある。だが、玉川氏はさらに続けるのだ。
「国葬というものがありました。あの時には、ああいう風な胸に刺さる言葉がありました。そういう風な形で既成事実として残るんですよ。これこそが国葬の意図なんですね。だから、僕は、国葬自体がやっぱりない方がこの国にはいいんじゃないか。これが政治的な意図だと思うから」
「僕は演出側の人間ですからね。テレビのディレクターをやってきましたから。それはそういう風に作りますよ、当然ながら。政治的意図がにおわないように、それは、制作者としては考えますよ。当然、これ、電通が入ってますからね」
これでは番組の視聴者が、菅氏の読み上げた弔辞は電通が用意したものだったと捉えても仕方あるまい。
おそらくテレ朝局内でも問題視されたのであろう。翌日の「モーニングショー」で玉川氏は、「昨日のパネルコーナーのなかで、私が安倍元総理の国葬に電通が関与しているという風にコメントしたんですけれども。この発言はですね、事実ではありませんでした。さらに、電通はですね、全く関わっていないということが分かりました」と述べ、冒頭の謝罪へと繋がるのである。
玉川氏の発言について、政治部記者は次のように指摘する。
「玉川さんの発言には、安倍元総理の国葬に反対する層の溜飲を下げたいという意図があったのだと思います。また、菅政権下で開催された東京五輪を巡っては、電通の元専務である高橋治之容疑者が逮捕された。それらをないまぜにして、国葬に“政治的意図”を感じると話したわけです。ただ、安倍さんと菅さんに深い親交があったのは紛れもない事実で、弔辞の内容は明らかに菅さん自身の経験がベースになっています。歯に衣着せない発言で知られる玉川さんは、これまで何度も『モーニングショー』で謝罪を繰り返していますが、今回の失言は過去の案件と比べてもはるかに問題です。一国の総理経験者が述べた弔辞に意見するのであれば、それなりの根拠が必要でしょう。そもそも、玉川さんが番組内で単に謝罪しただけで済む問題なのか。テレビ朝日としての見識が問われる事態だと思います」
当のテレビ朝日に質問すると、以下の回答が寄せられた。
<電通が安倍元総理の国葬に関わっているというスタジオ内での発言が事実誤認であったため訂正と謝罪を行いました。この件で、抗議などはありません。今後はより一層、事実関係の確認を徹底してまいります>
一読して、木で鼻をくくったような内容という印象は否めない。また、社としての対応についても尋ねたが、明確な返答はなかった。玉川氏はテレ朝の看板番組のなかで「これこそが国葬の政治的意図」、「当然、これ、電通が入ってますからね」と断じているわけで、それを単なる“事実誤認”のひと言で済ませて視聴者は納得するだろうか。
デイリー新潮編集部