山口県下関市で卸売業者の建物が倒壊し、下敷きになった55歳の従業員が死亡しました。会見で社長は「亡くなった従業員は兄のような存在だった」と、涙を流しながら話しました。
■社長「申し訳ないの一言に尽きる」
建物が倒壊した会社「辻豊」・辻賀光社長(50):「亡くなられた従業員のご冥福をお祈り申し上げます。大変、申し訳ございませんでした」
額に汗をかき、体を震わせながら謝罪したのは、下関市の卸売り会社「辻豊」の辻社長です。
辻社長:「申し訳ないの一言に尽きます。亡くなられたのは、言っていいのか分からないのですけど、私のいとこにあたります。年も私より上で、もう兄のような存在で。もう本当、もう奥さんに何と言ったらいいのか。先ほど(亡くなられた男性の)奥さんとお姉さんには、病院でお話ができたんですけど、もうひたすら謝るしかありません」
■現場付近の人「崩れる音がした」
事故は、会見のおよそ8時間前に起きました。
建物倒壊現場の上空から見ると、屋根や壁が完全に崩れ落ちています。複数の車が下敷きになり、落し潰されています。消防隊により、懸命な救助作業が行われていました。
むき出しになった鉄骨や木材。室内にあった棚も、飛び出しています。
事故前の画像を見ると、建物の下に車が並んでいて、普段から駐車スペースとして使われていたことが分かります。
下敷きになったのは、7台の車。そのうち3台には、辻豊の従業員が乗っていました。
建物が倒壊し、骨組み部分が出てきてしまっています。消防がクレーン車を使って、救助活動を行っているものとみられます。
事故当時、現場近くにいた人は、何が起きたのか分からないほどの衝撃音を聞いていました。
現場近くで働く女性:「すごい音がして、車の防犯のクラクションがずっと鳴っていて。事故かと思って出たら、砂煙がすごかったです」「(Q.どんな音でした?)ダダダダダーといって、崩れる音がしたので。まさかですね」
現場近くで働く男性:「たぶん社長だと思うけど、車の中に3人いると、大きな声で叫んでいました」
■コロナ対策 車中で「休憩・食事」
辻社長は、事故を従業員から聞き、現場に駆け付けたといいます。
辻社長:「まずは本当、頭が真っ白になりました。車の中に従業員が乗っていると聞いたので、慌てて声掛けしましたね。2人は反応がありました。そして、亡くなられた方は、反応がなかったです。呼び掛けて、何度も呼び掛けても反応はなかったです」
呼び掛けに反応した40歳と54歳の従業員2人は救助されましたが、背骨を折るなどの重軽傷。反応がなかった55歳の従業員は、心配停止の状態で病院に搬送され、その後、死亡が確認されました。
亡くなった従業員が乗っていた車は、前方部分は原形をとどめていますが、運転席部分は潰れています。
亡くなった従業員について、辻社長は次のように話します。
辻社長:「もう、真面目な社員です。本当に真面目で、口数の少ない、本当に私の兄のような存在でした」
事故が起きた7日午後1時15分ごろは、会社の昼休みの時間。新型コロナ対策のため、3人は車で休憩や昼食をとっていたといいます。辻社長も、直前まで車で昼食をとっていました。
辻社長:「実際、私もコロナ禍ということで、普段は外食していたのですが、弁当買って、車の中で食事を私はとっていました」
■社長「建物の老朽化が原因の一つ」
創業95年で、ヘアブラシや化粧品などの卸を行う辻豊。倒壊した建物は、1970年に建てられ、翌年に3階部分を増築。建設から50年以上が経過しています。
建物には、雨や日差しを防ぐための、ひさしが付いていましたが、そのひさしから、上の部分が一気に崩れ落ちたとみられています。
倒壊した場所から少しは離れた窓の上の辺り、長さ1メートル以上はあるでしょうか。真横にひびが入っているのが確認できます。
社長は1年前から、建物の異常に気付いていました。
辻社長:「通常の雨では雨漏りはなかったのですけど、極端な豪雨の時はちょっと雨漏りはしておりました。雨漏りに対しては修理を多少行いまして、一時は雨漏りしなくなったのですけど、数週間前の豪雨で、雨漏りがひどくなりまして。今後、また修繕は必要かなと考えておりました。やはり、建物の老朽化が(事故の)原因の一つではないかなと思っております。やはり、建て替えを考えなければいけなかったと思ってます」