埼玉県川口市の准看護師学校「大橋医療高等専修学校」で、理事長のパワハラが原因とみられる自主退学が相次いでいることが「週刊文春」の取材でわかった。生徒の約半数が退学しているという。
【画像】授業をしたかのように書かされた学級日誌
問題が起こっているのは、学校法人愛輪学園が運営する「大橋医療高等専修学校」。2016年に設立され、医師や看護師の指示で診療補助を行う准看護師を養成する2年制の学校で、大橋ひとみ氏が理事長を務めている。
「『生徒同士が助け合うアットホームな雰囲気』という説明会の言葉で、入学を決心しました」(現役生徒) だが説明会の言葉とは裏腹に、同校の卒業率は低い。例えば今年3月卒業の5期生は31人が入学し、卒業したのは15人と約半数だ。日本医師会の調査によると、准看護師学校の卒業率は約75%。半数というのは異常な数字である。また現在も通っている6期生は37人が入学し、2年生に上がったのは19人だけである。一体なぜなのか。「原因は大橋先生のパワハラです」 こう語るのは別の生徒だ。同校は大橋氏も授業を持つが、まともに授業をしないことが頻繁にあるという。大橋医療高等専修学校の入るビル「説教が長い。例えば授業中に指され、少し答えに窮すると、『何で分からないの』と説教が始まる。時には90分×2コマ分、説教で終わることもあるし、『カス』『アホ』『認知症』などの暴言を吐くこともある」(同前) 昼休みも説教を続け、慌てて副校長が「昼食を食べさせて!」と、飛び込んできたこともあるという。また、日直が学級日誌を書かなければならないが、「ほぼ説教だけで授業が終わった日も、ちゃんと授業が行われたと書くよう、大橋先生から指示される。実際はやっていない授業内容を記載したり、今後の目標を何となく書くしかないのです」(同前) 大橋氏に耐えかねた生徒たちは、授業の音声を録音。今回、小誌は約30時間分の音声の提供を受けたが、実際、大橋氏の暴言は凄まじいものだった(音声は電子版で公開)。パワハラ音声の内容は… 例えば6月28日。前日の病院実習の休憩中、生徒が笑ったことを、「何回言ったら分かるんだ。うちの猫だって1回で分かるよ!」と一喝。そして、こう吐き捨てるように言った。「守りたい。利用者を、患者さんを、ヘルパーさんを。あなた達から。下品な害虫から!」 生徒を罵倒した音声は他にもある。6月15日の授業で、今年3月に卒業した5期生についてこう語っている。「自分を守るために、自分を正当化して。5期生がそうでした。常識のある子はみんな辞めちゃったの。残ったのはカスだけだったの。楽だよね、カスは」 卒業を盾に生徒を脅すこともあった。6月15日の音声では、次のように大橋氏は明言している。「次やったら全員実習中止だよ。そしたらみんな卒業できない。お願いされたって無理だから。どうする?」 元生徒が呆れて言う。「授業が説教で潰れたら、学習予定の単元は、自分で勉強しないと資格試験に受からない。それゆえ時間の無駄だと、辞めていく生徒が後を絶たないのです」 旬報法律事務所の佐々木亮弁護士が指摘する。「理事長の立場を背景に生徒に暴言を吐くのはパワハラであり、他の生徒の前で言うのは悪質性が高い。また、学校と生徒は准看護師を養成する契約を結んでいます。理事長の行為が原因で自主退学した生徒たちに対し、学校には債務不履行責任、理事長には損害賠償責任が生じる可能性がある」 大橋氏はどう答えるのか。学校前で直撃すると、「辞めた子たちが言ってるんでしょ? お答えできません」。電話すると無言で記者の質問を聞き取って、そのまま電話は切られた。SMSで質問を送っても返事はなし。学校に質問書を送るも、事務員が「何もお答えできません」と言うのみだった。 このほか、大橋氏が「カス」と呼ぶ5期生に課した課題、授業で語った生徒を卒業させない理由、資格試験に受かったのに留年させられた生徒など、9月14日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および9月15日(木)発売の「週刊文春」で詳報している。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2022年9月22日号)
「『生徒同士が助け合うアットホームな雰囲気』という説明会の言葉で、入学を決心しました」(現役生徒)
だが説明会の言葉とは裏腹に、同校の卒業率は低い。例えば今年3月卒業の5期生は31人が入学し、卒業したのは15人と約半数だ。日本医師会の調査によると、准看護師学校の卒業率は約75%。半数というのは異常な数字である。また現在も通っている6期生は37人が入学し、2年生に上がったのは19人だけである。一体なぜなのか。
「原因は大橋先生のパワハラです」
こう語るのは別の生徒だ。同校は大橋氏も授業を持つが、まともに授業をしないことが頻繁にあるという。
大橋医療高等専修学校の入るビル
「説教が長い。例えば授業中に指され、少し答えに窮すると、『何で分からないの』と説教が始まる。時には90分×2コマ分、説教で終わることもあるし、『カス』『アホ』『認知症』などの暴言を吐くこともある」(同前)
昼休みも説教を続け、慌てて副校長が「昼食を食べさせて!」と、飛び込んできたこともあるという。また、日直が学級日誌を書かなければならないが、
「ほぼ説教だけで授業が終わった日も、ちゃんと授業が行われたと書くよう、大橋先生から指示される。実際はやっていない授業内容を記載したり、今後の目標を何となく書くしかないのです」(同前)
大橋氏に耐えかねた生徒たちは、授業の音声を録音。今回、小誌は約30時間分の音声の提供を受けたが、実際、大橋氏の暴言は凄まじいものだった(音声は電子版で公開)。パワハラ音声の内容は… 例えば6月28日。前日の病院実習の休憩中、生徒が笑ったことを、「何回言ったら分かるんだ。うちの猫だって1回で分かるよ!」と一喝。そして、こう吐き捨てるように言った。「守りたい。利用者を、患者さんを、ヘルパーさんを。あなた達から。下品な害虫から!」 生徒を罵倒した音声は他にもある。6月15日の授業で、今年3月に卒業した5期生についてこう語っている。「自分を守るために、自分を正当化して。5期生がそうでした。常識のある子はみんな辞めちゃったの。残ったのはカスだけだったの。楽だよね、カスは」 卒業を盾に生徒を脅すこともあった。6月15日の音声では、次のように大橋氏は明言している。「次やったら全員実習中止だよ。そしたらみんな卒業できない。お願いされたって無理だから。どうする?」 元生徒が呆れて言う。「授業が説教で潰れたら、学習予定の単元は、自分で勉強しないと資格試験に受からない。それゆえ時間の無駄だと、辞めていく生徒が後を絶たないのです」 旬報法律事務所の佐々木亮弁護士が指摘する。「理事長の立場を背景に生徒に暴言を吐くのはパワハラであり、他の生徒の前で言うのは悪質性が高い。また、学校と生徒は准看護師を養成する契約を結んでいます。理事長の行為が原因で自主退学した生徒たちに対し、学校には債務不履行責任、理事長には損害賠償責任が生じる可能性がある」 大橋氏はどう答えるのか。学校前で直撃すると、「辞めた子たちが言ってるんでしょ? お答えできません」。電話すると無言で記者の質問を聞き取って、そのまま電話は切られた。SMSで質問を送っても返事はなし。学校に質問書を送るも、事務員が「何もお答えできません」と言うのみだった。 このほか、大橋氏が「カス」と呼ぶ5期生に課した課題、授業で語った生徒を卒業させない理由、資格試験に受かったのに留年させられた生徒など、9月14日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および9月15日(木)発売の「週刊文春」で詳報している。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2022年9月22日号)
大橋氏に耐えかねた生徒たちは、授業の音声を録音。今回、小誌は約30時間分の音声の提供を受けたが、実際、大橋氏の暴言は凄まじいものだった(音声は電子版で公開)。
例えば6月28日。前日の病院実習の休憩中、生徒が笑ったことを、「何回言ったら分かるんだ。うちの猫だって1回で分かるよ!」と一喝。そして、こう吐き捨てるように言った。
「守りたい。利用者を、患者さんを、ヘルパーさんを。あなた達から。下品な害虫から!」
生徒を罵倒した音声は他にもある。6月15日の授業で、今年3月に卒業した5期生についてこう語っている。
「自分を守るために、自分を正当化して。5期生がそうでした。常識のある子はみんな辞めちゃったの。残ったのはカスだけだったの。楽だよね、カスは」
卒業を盾に生徒を脅すこともあった。6月15日の音声では、次のように大橋氏は明言している。
「次やったら全員実習中止だよ。そしたらみんな卒業できない。お願いされたって無理だから。どうする?」
元生徒が呆れて言う。
「授業が説教で潰れたら、学習予定の単元は、自分で勉強しないと資格試験に受からない。それゆえ時間の無駄だと、辞めていく生徒が後を絶たないのです」
旬報法律事務所の佐々木亮弁護士が指摘する。「理事長の立場を背景に生徒に暴言を吐くのはパワハラであり、他の生徒の前で言うのは悪質性が高い。また、学校と生徒は准看護師を養成する契約を結んでいます。理事長の行為が原因で自主退学した生徒たちに対し、学校には債務不履行責任、理事長には損害賠償責任が生じる可能性がある」 大橋氏はどう答えるのか。学校前で直撃すると、「辞めた子たちが言ってるんでしょ? お答えできません」。電話すると無言で記者の質問を聞き取って、そのまま電話は切られた。SMSで質問を送っても返事はなし。学校に質問書を送るも、事務員が「何もお答えできません」と言うのみだった。 このほか、大橋氏が「カス」と呼ぶ5期生に課した課題、授業で語った生徒を卒業させない理由、資格試験に受かったのに留年させられた生徒など、9月14日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および9月15日(木)発売の「週刊文春」で詳報している。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2022年9月22日号)
旬報法律事務所の佐々木亮弁護士が指摘する。
「理事長の立場を背景に生徒に暴言を吐くのはパワハラであり、他の生徒の前で言うのは悪質性が高い。また、学校と生徒は准看護師を養成する契約を結んでいます。理事長の行為が原因で自主退学した生徒たちに対し、学校には債務不履行責任、理事長には損害賠償責任が生じる可能性がある」
大橋氏はどう答えるのか。学校前で直撃すると、「辞めた子たちが言ってるんでしょ? お答えできません」。電話すると無言で記者の質問を聞き取って、そのまま電話は切られた。SMSで質問を送っても返事はなし。学校に質問書を送るも、事務員が「何もお答えできません」と言うのみだった。
このほか、大橋氏が「カス」と呼ぶ5期生に課した課題、授業で語った生徒を卒業させない理由、資格試験に受かったのに留年させられた生徒など、9月14日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および9月15日(木)発売の「週刊文春」で詳報している。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2022年9月22日号)