福岡県篠栗(ささぐり)町で2020年4月に碇翔士郎(いかり・しょうじろう)ちゃん(当時5歳)が十分な食事を与えられずに餓死した事件を巡り、保護責任者遺棄致死罪などに問われた赤堀恵美子被告(49)の裁判員裁判は29日、福岡地裁で初公判を迎える。翔士郎ちゃんの母親の「ママ友」で、母親を精神的に支配し食事制限を指示したとされるが、弁護側は全面的に無罪を主張するとみられる。一方、同罪に問われ、6月に言い渡された母親への判決は、母親の証言などから赤堀被告による支配を認定しており、ママ友と母親との全面対決の構図となりそうだ。
懲役5年の判決言い渡し後、裁判長は母を諭した 「これから私の裁判があるので、答えることはしない」。福岡地裁で6月にあった母親の碇利恵被告(40)の裁判。一連の事件の関係で、証人として法廷に初めて立った赤堀被告はこう証言を拒み続けた。翔士郎ちゃんが餓死したことにも「答えません」などと話したため、休廷などを挟み尋問は約20分で終了した。 碇被告の公判は、赤堀被告との関係を地裁がどう判断するかが焦点となった。 公判で碇被告は、暴力団関係者の「ボス」が背景にいるという赤堀被告のうそを「本当に信じていた」といい「怖くて逆らえなかった」と証言。赤堀被告のうそを信じて夫とも別れ、離婚を巡る訴訟があるという架空の話も信じ込み「ボス」に支払う和解金名目などで生活費全般を渡すようになったなどと説明した。 判決は碇被告の証言をほぼ採用し、赤堀被告が碇被告にうそを信じ込ませ、生活費全般を提供させて碇家に厳しい食事制限を指示したと認定。「(碇被告は)判断能力も低下していた中、赤堀被告の指示に従わざるを得ないと考え犯行に及んだ」として赤堀被告による支配の影響を認めた。 検察側は懲役10年を求刑していたが、判決は碇被告を非難しながらも、これらの事情から「(碇被告には)被害者としての側面がある」などと判断。懲役5年と求刑を大きく下回る判決となった。ただ、碇被告側は執行猶予付きの判決を求めていたこともあり、減刑を求めて控訴している。 これに対し、赤堀被告は捜査段階から関与を全面的に否定している。 関係者によると赤堀被告は、碇被告の判決が認定した食事制限などの指示も「していない」などと否認。赤堀被告は碇被告から計約198万円をだまし取ったなどとして詐欺と窃盗罪でも起訴されているが、こちらも否認しているという。 赤堀被告の公判には、碇被告も証言に立つ見通しで、両者が法廷で対峙(たいじ)する場面もありそうだ。 起訴状によると、赤堀被告は碇被告と共謀し、19年8月ごろから碇被告の子供の食事の量や回数を減らし、同10月ごろからは翔士郎ちゃんに食事を数日間にわたり一切与えないことを複数回継続。20年3月下旬ごろには翔士郎ちゃんが重度の低栄養状態となったのに十分な食事を与えず、同4月自宅で餓死させたとされる。また、19年6月~20年6月、碇被告から裁判費用などの名目で児童手当や生活保護費など計約198万円をだまし取るなどしたとされる。【平塚雄太】
「これから私の裁判があるので、答えることはしない」。福岡地裁で6月にあった母親の碇利恵被告(40)の裁判。一連の事件の関係で、証人として法廷に初めて立った赤堀被告はこう証言を拒み続けた。翔士郎ちゃんが餓死したことにも「答えません」などと話したため、休廷などを挟み尋問は約20分で終了した。
碇被告の公判は、赤堀被告との関係を地裁がどう判断するかが焦点となった。
公判で碇被告は、暴力団関係者の「ボス」が背景にいるという赤堀被告のうそを「本当に信じていた」といい「怖くて逆らえなかった」と証言。赤堀被告のうそを信じて夫とも別れ、離婚を巡る訴訟があるという架空の話も信じ込み「ボス」に支払う和解金名目などで生活費全般を渡すようになったなどと説明した。
判決は碇被告の証言をほぼ採用し、赤堀被告が碇被告にうそを信じ込ませ、生活費全般を提供させて碇家に厳しい食事制限を指示したと認定。「(碇被告は)判断能力も低下していた中、赤堀被告の指示に従わざるを得ないと考え犯行に及んだ」として赤堀被告による支配の影響を認めた。
検察側は懲役10年を求刑していたが、判決は碇被告を非難しながらも、これらの事情から「(碇被告には)被害者としての側面がある」などと判断。懲役5年と求刑を大きく下回る判決となった。ただ、碇被告側は執行猶予付きの判決を求めていたこともあり、減刑を求めて控訴している。
これに対し、赤堀被告は捜査段階から関与を全面的に否定している。
関係者によると赤堀被告は、碇被告の判決が認定した食事制限などの指示も「していない」などと否認。赤堀被告は碇被告から計約198万円をだまし取ったなどとして詐欺と窃盗罪でも起訴されているが、こちらも否認しているという。
赤堀被告の公判には、碇被告も証言に立つ見通しで、両者が法廷で対峙(たいじ)する場面もありそうだ。
起訴状によると、赤堀被告は碇被告と共謀し、19年8月ごろから碇被告の子供の食事の量や回数を減らし、同10月ごろからは翔士郎ちゃんに食事を数日間にわたり一切与えないことを複数回継続。20年3月下旬ごろには翔士郎ちゃんが重度の低栄養状態となったのに十分な食事を与えず、同4月自宅で餓死させたとされる。また、19年6月~20年6月、碇被告から裁判費用などの名目で児童手当や生活保護費など計約198万円をだまし取るなどしたとされる。【平塚雄太】