患者や家族とのトラブルで身の危険を感じた経験がある訪問診療医は4割近くに上ることが、全国在宅療養支援医協会による実態調査でわかった。
恐怖を感じる脅しや暴言が目立ち、刃物が持ち出されたケースもあった。同協会などは調査結果を踏まえ、在宅医療の安全性を確保するための提言をまとめる方針だ。
埼玉県ふじみ野市の民家で今年1月、医師ら2人が患者の遺族に散弾銃で撃たれ死傷する事件が起きた。これを受け、協会は2月、会員の医師ら970人を対象にアンケート調査を実施。うち150人から回答(回答率は15・4%)を得た。
身の危険を感じる経験をしたと回答したのは39%(59人)。具体例(複数回答可)として回答があった57件では、恐怖を感じる脅しや暴言が17件で最も多かった。ハサミ・刃物による脅しや危険行為(10件)、暴力行為(9件)、長時間患者宅に軟禁(5件)などもあった。
理不尽な要求やクレームを経験したという回答は81%(122人)に上り、在宅医療は、患者とのトラブルが発生しやすい環境にあることが浮き彫りになった。治療方針などに関するものが多いが、中には「夫を生き返らせてほしい」、「120歳まで生きるはずだった」などと言われたケースもあった。
調査結果を取りまとめた同協会事務局次長の島田潔医師は、「在宅医療では患者の終末期にかかわる場面が多く、治療が難しくなった時などに患者や家族が医師への不信感を抱き、不満が医師への暴言などにつながる可能性がある。医師の安全を守る取り組みを考えなくてはいけない」と話した。