「事故を起こし走り去ったのは確かですが、電柱か何かにぶつかったと思いました。人をはねた認識はなかった。ひき逃げだとは思っていません」
警察に対しこう話していた容疑者の供述が、白々しく感じる事実が明らかになった。1月16日、産経新聞や共同通信などの取材で男が事故直前に居酒屋2軒で飲酒していたことが判明。泥酔状態だった可能性が高いのだ――。
大阪府堺市の市道で事故が起きたのは、昨年12月27日深夜11時半過ぎのことだった。自動車運転処罰法違反(過失致死傷)と道路法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕されたのは、同市内に住む建設作業員の猪木康之容疑者(49)。夜間パトロールを行っていた、いずれも40代の男性4人を運転する車ではね、2人が死亡、2人に軽傷を負わせたとされる。猪木容疑者は、適切な処置をすることなく走り去った。
「パトロールに参加していたのは、地元の町内会の男性8人です。現場の市道は片側1車線で幅約6m。8人は2列になり、近隣住民に火の用心などを訴えていました。猪木容疑者の車は後方から猛スピードでパトロール隊に接近し、男性4人を次々にはねたとみられます。猪木容疑者は、居眠りをしていたようです。
亡くなったのは最後尾を歩いていた2人です。司法解剖の結果2人とも頭の骨が折れていました。はねられた衝撃で頭部から地面に強く打ちつけられたのでしょう。現場にはブレーキ痕がなく、減速せずに4人をはねたと考えられます」(全国紙社会部記者)
事故翌日、警察は複数の防犯カメラに映っていた逃走車と酷似したスポーツタイプの多目的車(SUV)を現場から700mほど離れた住宅の駐車場で発見。所有者が猪木容疑者だった。
「猪木容疑者は『電柱にぶつかったと思った』と、容疑を一部否認していました。しかし事故現場付近に電柱はありません。逮捕時は、被害者への謝罪の言葉もなかったそうです。事故翌朝には、作業着を着て仕事へ向かう猪木容疑者の姿も目撃されています。
猪木容疑者は事故直前に酒を飲んでいたことは認めていますが、逮捕は事故から丸一日近くたった12月28日深夜だったため呼気検査ではアルコールが検出されなかった。今後はアルコール運転の危険性を本人が認識していることが前提となる、より罰則の重い危険運転致死傷の罪が適用できるかが捜査のポイントになります」(同前)
警察によると、事故当日の夜8時ごろ猪木容疑者が1人で行きつけの居酒屋に入ったことがわかっている。生ビールやハイボールを計4杯ほど飲み、夜10時過ぎに店を出たとか。猪木容疑者は、さらにもう1軒で酒を飲み事故を起こしたようだ。
「1軒目の居酒屋の店主の証言から、猪木容疑者の重大な嘘も明らかになっています。店主が猪木容疑者に『車で来ていないか』と聞くと『違う』と否定。さらに翌朝、猪木容疑者から『(帰りに車で)電柱に当たったしまった』と電話が入ったそうです。店主が『人ではないのか』とたずねると、『電柱だ』と説明したいたといいます」(同前)
警察は居酒屋への事情聴取などから、猪木容疑者の飲酒量や運転への影響など詳しい状況を調べている。