発達障害、毒親育ちのA子が殺人未遂で懲役5年の受刑中「被害者のことはどうでもいいとしか思えない」そんなA子に真の更生はあるのかーー。【前編記事】『【獄中手記を公開】「父の言葉が今もトラウマ」「自己肯定感が低い」…女性受刑者が振り返る「両親との関係性』より詳報する。
「IQが80しかない。だから学校というところが死ぬ程嫌いだった」「常に脳みそをフル稼働させていないと他の子供達についていくことができなかった」と自身の学生時代を振り返るA子。現在、受刑中の女子刑務所内でも生き辛さは感じているようだ。
A子は現在、平日は午前8時から午後4時40分まで工場での作業に従事している。生き辛さは、特に作業中に感じるという。
「作業している時、メモを取れないということが辛い。思えば社会にいるときからそうだったが、頭の中が忙しくて、それをアウトプットしておかないと仕事に集中できないのだ」(’25年4月22日消印)
頭の中が忙しいとはどういう状態か? それを詳しく教えてほしいとA子に聞くと、こう返ってきた。
「頭の中の忙しさは、情報処理能力が遅いからかな? と思います。あとは極端に忘れっぽいです。作業の器具を、席を離れる際には担当台に預けなければならないのですが、目の前に器具を置いていても、番号や名前を呼ばれた瞬間に忘れてしまいます。あるあるだと言われていますが、それにしても酷いと自覚してます。それ以外にも、結構空想癖があって、集中力が飛散しやすいです」(’25年5月3日消印)
また、どうしても作業中に混乱してしまい、問題を起こしてしまうこともあるようだ。A子は昨年6月に刑務所内でこんな騒ぎを起こしていた。
「2週間前に工場で大暴れ(作業材料を投げたり机を蹴飛ばした)してしまって、現在謹慎中です。原因は、人間関係がうまくいかなくて、なんだか訳が分からなくなってしまったからです。人間関係がうまくいかない理由はいくつかあるのですが、協調性のなさと態度の悪さのようです」(’25年6月27日消印)
協調性のなさは自覚があるようだ。しかも“まったく悪気がない”とも。
「協調性は、おそらく生まれつき欠如している気がします。悪気は全く無いのですが、むしろよかれと思って動くと邪魔になったり、人の仕事を横取りしてしまったりします。空気とか人の顔色とか、そういうものの読み書き(原文ママ)が不得意です」(’25年6月27日消印)
こういった協調性のなさに加え、PMSによるホルモンバランスの乱れでどうしようもなくイライラする思いと戦い、時に爆発してしまいそうになることもあるようだ。A子は「生理なんていらない」と綴りつつこんなトラブルを明かした。
「案の定、イライラしてちょっとしたケンカをした…。(略)心に余裕がない。下手したらぶん殴りそう。何もかもイライラする。イライラしすぎて最早ケンカのたねを探してる気さえする。何かと理由をつけて誰かをぶん殴ろうとしてるのかも。あー…自分のことが嫌になる」(’25年7月30日消印)
PMSは女性の多くが経験していることだろうが、A子のように「人をぶん殴りたくなる」まで過激なイライラを抱えるのは稀なのではないか。発達心理学が専門の公認心理士の荒谷純子氏は言う。
「発達障害のある女性で、特に自閉スペクトラム症(ASD)の方はもともと持っている過敏な気分の波やイライラがPMSによって増悪するとも言われています。こればかりは刑事施設の中で指導者のもと、本人がその気分の波との付き合い方を学んでいくしかないですね」
また法務省により2025年6月1日から拘禁刑という、国内で118年ぶりに誕生した新しい刑罰は、A子がいる女子刑務所でも導入されたようだ。これまでのように刑事施設で所定の作業を行わせる懲役刑と刑事施設に拘置する禁錮刑を「改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行う」ための拘禁刑に一本化されたというものだ。
ここでA子は、作業とは別に行われたある教育プログラムについて、こんな感想を述べている。
「私の教育プログラムは、被害者感情について考えるプログラム。今の率直な気持ちを書かされた。正直な所、被害者の男について、どうでもいいとしか思えなくて困る」(’25年4月22日消印)
やはり被害者に対し危害を加えたことへの謝罪の気持ちは持てないようなのだ。作業には「処遇目標の達成のために小目標を立てたり、刑務作業を意味を持ってやりましょう、という話を聞かされたりした。(略)仕事は大事だと思う」と意義を感じることができているようなのに、一体なぜなのか。前出の荒谷氏は言う。
「まず発達障害の方の大きな特徴として、相手の意図や感情を読み取ることが苦手で、相手がどう考えているかを想像するのが難しく、他者への配慮が足りないように見えてしまうことがあります。A子さんが与えた傷により被害男性は痛みや苦しみを感じたはずですが、そういった想像もできないために、何度教育プログラムを受けてもその考えを変えることはできないでしょう。ただし、A子さん自身が他者への配慮が足りないと自覚するためにもプログラムを受け続けることが大事と言えるでしょう」
A子は刑務所の中で新たな気づきや自分のものの捉え方の変化は少なくとも感じているようだ。
「(自分の)態度が悪さは、最近まで無自覚でした。私の言葉には、人を見下すニュアンスが多々あるようです。自分では本当に意識してなくて、他人から指摘されてようやく『そういえばそうだな…』と気が付きました」(’25年6月27日消印)
さらにこの人の見下しは、自分の中のこんな思いや人との関係作りにも繋がっていた、とも述べた。
「私は人を見下しているというより、心の内で相手より自分の方が上じゃないと不安なのだと思います。それはきっと、コンプレックスと劣等感の裏返しかと思います。また、自分と相手、という関係ではなく、自分と“外の人”(もしくは自分じゃないヤツ)という、妙に敵視した関係づくりしかできていなかったです」(’25年6月27日消印)
A子が被害者に対し心の底から謝罪の気持ちや生涯かけて償う気持ちが芽生えなければ、真の更生とは言えないだろう。しかし少なくともA子は自分との向き合い方は学んでいそうだ。
「逮捕されてからでいえば2年以上になるけど、この2年で私は何が変わっただろう。(略)自分に対する認識の解像度が上がってきて、自分という人間の育て方の糸口が掴めてきた感覚。これから出所まで、自分が自分らしく生きて他人も自分も大事にできる人生を歩くための勉強をしていきたい」(’25年7月23日消印)
刑務所への面会は基本的に親族や身元引受人のみが行える。しかしA子の元に父母はもちろん、誰も面会人はいない。昨年9月に送られてきた手紙には「私は(身元)引受人はいないので、◯◯◯と言う保護施設に申し込んでいます。出所後1年半程お世話になる予定です」と書かれていた。
面会人はおらず、出所後は保護施設に身を寄せる予定だという。
荒谷氏は言う。
「境界知能の方は、生涯を通じて“伴走者”が必要です。親や支援者など、誰かがそばにいなければ、再犯のリスクは高まります。A子さんにその伴走者が見つかることを願います」
A子が更生できるかどうか。この問題の裏側には、日本の教育問題や行政のゆがみなどが絡んでいると思えてならない。
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