人の話を聞く時に、あなたがついやってしまう癖はないでしょうか?(写真:Pangaea/PIXTA)話を聴いてほしい子ども、話を聴かない大人。なぜ大人は子どもの話を聴かないのでしょうか? 「相手を一人の人間として尊重し、話し手の声に寄り添う聴き方」のアクティブリスニングという方法があります。アクティブリスニングは「積極的傾聴」と呼ばれ、話し手の経験やそれに伴う感情・思考を無条件に受け入れ、メッセージや文脈をより深く理解するためのコミュニケーションです。

話を聞くときに相手を批判するのは、なぜダメなのでしょうか? すぐにアドバイスをすることがよくないとされるのはなぜでしょうか? 『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て』を一部抜粋し再構成のうえご紹介します。コミュニケーションのバリケード子どもだけでなく、大人の話を聴く時にも、あなたがついやってしまう癖はないでしょうか?自分と意見が合わない時に、つい否定してしまう、責めてしまう、説教をしてしまう、聞かれていないのにアドバイスをしてしまうなどです。このような癖は、「コミュニケーションのバリケード」と呼ばれ、対話をしている相手との間に壁をつくってしまいます[*4]。私たちの多くは、このような逆効果のコミュニケーションの仕方で育っているため、子どもの話を聴く時にも、無意識にバリケードを使ってしまうのです。あなたの周りにも、こういったタイプの人がいることでしょう。自分のタイプを認識し、アクティブリスニングという新しい習慣を意識して身につけることは、子どもに対してだけでなく、大人との関係性を変えるのにも効果的です。気づいていないこと、見えていないものは変えられません。より良い聴き手(リスナー)になるために、また子どもや周囲の人と心を通わすためにも、自分自身が話を聴く時にどんなバリケードを使いがちなのか、自分の癖を把握しましょう。おざなりリスナーおざなりリスナーとは、興味を持ったふりをしながら、相手の話をほとんど聞いていない人です。いわゆる、聴いているふりです。時折、アイコンタクトを取ったり、うなずいたりしながら、聴いているような姿勢は取っています。しかし、話し手のメッセージを理解しようとする意図はありません。テレビや携帯を見ながら、仕事をしながら、マルチタスキングをして片手間で聞いているのもよくある例です。大人同士でも、一緒にいる相手がテレビをつけたままの状態の時に、思わず、「ねえ、聞いてる?」といった経験がある人もいるでしょう。「すごいね」「そうなんだ」「へえ」とおざなりな相槌でその場を乗り切ることができるので、忙しい時に便利ではあります。場合によっては、相手を傷つけないように、あるいは自分自身が疲れている時に、聴いたふりをすることもあるでしょう。子どもの場合は特に、「見て!」「聞いて!」と1日に何十回もくることがあり、大人側に時間的あるいは精神的な余裕がない時、おざなりリスナーが顔を出すことは仕方のないことです。しかし、おざなりな反応は、聴いていないことが子どもに伝わってしまうほか、子どもが「上手」「すごい」といった外的評価に依存するようになる可能性もあるため[*8]、避けたい習慣です。[例]子ども:「これね、保育園で描いたんだよ。見て」親:「へえ~」子ども:「ねえ、上手?」親:「うん、上手上手!」子ども:「ここ、お花なの」親:「すごいねえ。今忙しいから、あっちで遊んできてね」Lessonおざなりな返答は、実際には子ども自身や子どもがやったことを見ていなくても可能です。「上手」「すごい」「なるほど」を連呼していれば盛り上げられるので、多用してしまうのが現実でしょう。しかし、ここは子どもの気持ちや作品に対して頑張ったことなどを共有するチャンス。いったん作業をやめて、「違う種類のお花をたくさん描いたんだね」と具体的な感想をシェアするほか、子どもがなにを伝えてくれるのかを楽しみに話に耳を傾けましょう。自分が聞きたいことだけを選択的に聞いている決めつけリスナー人には「確証バイアス」があります。私たちの意識は、これまでの自分の経験や信念と一致するような事柄に向かいやすいのが自然です。つまり人は、「決めつけ」を舵にして、自分が聞きたいことだけを選択的に聞いているのです。決めつけリスナーとは、自分の決めつけをフィルターに話を聞く人で、自分の偏見を横に置いて、相手を理解するために心をこめて聴くアクティブリスニングと相反するものです。この決めつけは、関係性が近いほど発生することがわかっています。例えば、友人やパートナーとペアを組んだ時と、見知らぬ人とペアを組んだ時を比べて、どのくらい相手のメッセージの理解度が変わるかを調べた研究があります[*6]。その結果、親しい間柄ほど、見知らぬ相手よりも話し手の本意を理解できないことが多く、むしろ理解度が下がることが多かったのです。これは、家族や子どもなど関係性が近い相手ほど、私たちは相手の言っていることがわかっているし、相手も私たちの言っていることがわかっていると思い込んでいるのが原因だと考えられます。つまり、「あなたはこういう人間で、こう考えているのだろう」という決めつけが、相手のことを本当の意味で理解する妨げになっているのです。親しい仲ほど難しいことではありますが、確証バイアスを認識して、相手の動機や結論を仮定せずにまずは話を聴いてみることが大切です。[例]子ども:「これね、保育園で描いたんだよ。見て」親:「これは、お日様だね。光がいっぱい差しているね。〇〇ちゃんは、晴れの日が大好きだもんね」子ども:「違うよ。これお花だよ。雨がたくさん降ってるの」Lesson子どもが持ってきた絵に対して、描いたものがなにかというのを、大人の目線で最初から決め込んで話を進めています。子どもには子どものストーリーがあり、話を聴くまで真相はわかりません。実際、話を聴いても真相はわからないかもしれません。ただ、子どもの世界を少しでも知るために、「この絵について教えてくれる?」と質問することから始めてみてください。「今日ね、Aちゃんがおやすみだった」と子が言ったら?[例]子ども:「今日ね、Aちゃんがおやすみだった」親:「Aちゃんがいないと、あなたも元気出ないよね。がっかりだったね」子ども:「ううん。Bちゃんと砂場で遊んで楽しかった」Lesson子どもの気持ちに思いをはせるために、想像力を働かせることは大切ですが、本当に子どもの言っていることを聴くためには、決めつけないことが求められます。子どもはあったことを単に事実として伝えていることが多く、そこにどんな感情が付随しているかは、子どもにしかわかりません。「Aちゃんおやすみだったんだ。どう感じたの?」と質問してみてください。勝手にアドバイザー勝手にアドバイザーとは、子どものことを思って、つい「こうしたら?」「こう言ってみたら?」「私があなたならこうするな」などと、助言をしがちな人です。求められていないのにアドバイスをする人には、本人は無意識でも、はっきりとした動機があります。アドバイスをするのは、個人の権力意識を高める対人行動であること、権力を欲する人ほどアドバイスをする動機が高いということがわかっています[*7]。アドバイスに従ってくれる人がいることで、「相手の行動に影響を及ぼすパワーが自分にはある」という感覚を持つのです。また、相手が自分の意向の通り動くことで、自分のコントロール欲が満たされ、安心感が高まります。決めつけリスナーと同じように、関係が近いほど、私たちは聞かれていないのに勝手にアドバイザーになる傾向にあります[*3]。「あなたのことはわかっているから、こうした方がよい」とか、「あなたのことが心配だから、こうしてほしい」という願望が動機です。アドバイスをすることは、相手に自分の思い通りに動いてほしい願望が、相手を想っているからこその親切に見えます。しかしアドバイスをする側が上に立つことを示唆しているため、関係性が不釣り合いになる可能性があります。もちろん会話の中で、子どもがアドバイスを求めている時もあるでしょう。そんな時は、子どもが言った言葉の後ですぐに助言をするのではなく、まずは子どもの話を聴いて、本人の想いを受けとめた上で、あなたの考えもシェアしてみてください。「私が思っていること、提案してもいいかな?」「私が思っていること、提案してもいいかな?」と子どもの許可を得るのも大切なことです。求められていない助言をして勝手に解決しようとすることは、子どもに対して「あなたは自分ひとりではできない」というメッセージを無意識に送っているだけでなく、子どもが自分で考える機会を奪っていることでもあります。アクティブリスニングの原点は、聴き手が自分のニーズをいったん横に置くことです。「あなたのために言っている」という名のもと、不要なアドバイスをすることは、本当に子どものためなのか、それとも自分の権力欲を満たしたいだけなのか、自分自身にたずねてみる必要があるでしょう。[例]子ども:「〇〇ちゃんがおもちゃ貸してくれない」親:「ちゃんと貸してって言った?」子ども:「言ったけど、ダメって言われた」親:「声小さくて聞こえなかったかもよ。大きな声でもう一回聞いたらどう?」Lesson最初の一言目から、まるで子どもに落ち度があるかのような前提で進んでいるほか、その子がどういう気持ちになったのかということに触れていません。すぐに提案することで、状況解決をしようという意欲はあるものの、子ども自身がどうしたいのかという意思確認が置き去りにされています。子どもの年齢にもよりますが、「あなたはどう感じた?」「あなたはどうしたい?」と質問をしながら、本人の気持ちに寄り添うことを忘れないようにしたいものです。文中の出所[*]一覧(表:『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て』)(島村 華子 : モンテッソーリ教育とレッジョ・エミリア教育研究者)
人の話を聞く時に、あなたがついやってしまう癖はないでしょうか?(写真:Pangaea/PIXTA)
話を聴いてほしい子ども、話を聴かない大人。なぜ大人は子どもの話を聴かないのでしょうか? 「相手を一人の人間として尊重し、話し手の声に寄り添う聴き方」のアクティブリスニングという方法があります。アクティブリスニングは「積極的傾聴」と呼ばれ、話し手の経験やそれに伴う感情・思考を無条件に受け入れ、メッセージや文脈をより深く理解するためのコミュニケーションです。
子どもだけでなく、大人の話を聴く時にも、あなたがついやってしまう癖はないでしょうか?
自分と意見が合わない時に、つい否定してしまう、責めてしまう、説教をしてしまう、聞かれていないのにアドバイスをしてしまうなどです。
このような癖は、「コミュニケーションのバリケード」と呼ばれ、対話をしている相手との間に壁をつくってしまいます[*4]。
私たちの多くは、このような逆効果のコミュニケーションの仕方で育っているため、子どもの話を聴く時にも、無意識にバリケードを使ってしまうのです。あなたの周りにも、こういったタイプの人がいることでしょう。
自分のタイプを認識し、アクティブリスニングという新しい習慣を意識して身につけることは、子どもに対してだけでなく、大人との関係性を変えるのにも効果的です。
気づいていないこと、見えていないものは変えられません。より良い聴き手(リスナー)になるために、また子どもや周囲の人と心を通わすためにも、自分自身が話を聴く時にどんなバリケードを使いがちなのか、自分の癖を把握しましょう。
おざなりリスナー
おざなりリスナーとは、興味を持ったふりをしながら、相手の話をほとんど聞いていない人です。いわゆる、聴いているふりです。時折、アイコンタクトを取ったり、うなずいたりしながら、聴いているような姿勢は取っています。
しかし、話し手のメッセージを理解しようとする意図はありません。テレビや携帯を見ながら、仕事をしながら、マルチタスキングをして片手間で聞いているのもよくある例です。
大人同士でも、一緒にいる相手がテレビをつけたままの状態の時に、思わず、「ねえ、聞いてる?」といった経験がある人もいるでしょう。
「すごいね」「そうなんだ」「へえ」とおざなりな相槌でその場を乗り切ることができるので、忙しい時に便利ではあります。場合によっては、相手を傷つけないように、あるいは自分自身が疲れている時に、聴いたふりをすることもあるでしょう。
子どもの場合は特に、「見て!」「聞いて!」と1日に何十回もくることがあり、大人側に時間的あるいは精神的な余裕がない時、おざなりリスナーが顔を出すことは仕方のないことです。
しかし、おざなりな反応は、聴いていないことが子どもに伝わってしまうほか、子どもが「上手」「すごい」といった外的評価に依存するようになる可能性もあるため[*8]、避けたい習慣です。
[例]子ども:「これね、保育園で描いたんだよ。見て」親:「へえ~」子ども:「ねえ、上手?」親:「うん、上手上手!」子ども:「ここ、お花なの」親:「すごいねえ。今忙しいから、あっちで遊んできてね」
Lessonおざなりな返答は、実際には子ども自身や子どもがやったことを見ていなくても可能です。「上手」「すごい」「なるほど」を連呼していれば盛り上げられるので、多用してしまうのが現実でしょう。しかし、ここは子どもの気持ちや作品に対して頑張ったことなどを共有するチャンス。いったん作業をやめて、「違う種類のお花をたくさん描いたんだね」と具体的な感想をシェアするほか、子どもがなにを伝えてくれるのかを楽しみに話に耳を傾けましょう。自分が聞きたいことだけを選択的に聞いている決めつけリスナー人には「確証バイアス」があります。私たちの意識は、これまでの自分の経験や信念と一致するような事柄に向かいやすいのが自然です。つまり人は、「決めつけ」を舵にして、自分が聞きたいことだけを選択的に聞いているのです。決めつけリスナーとは、自分の決めつけをフィルターに話を聞く人で、自分の偏見を横に置いて、相手を理解するために心をこめて聴くアクティブリスニングと相反するものです。この決めつけは、関係性が近いほど発生することがわかっています。例えば、友人やパートナーとペアを組んだ時と、見知らぬ人とペアを組んだ時を比べて、どのくらい相手のメッセージの理解度が変わるかを調べた研究があります[*6]。その結果、親しい間柄ほど、見知らぬ相手よりも話し手の本意を理解できないことが多く、むしろ理解度が下がることが多かったのです。これは、家族や子どもなど関係性が近い相手ほど、私たちは相手の言っていることがわかっているし、相手も私たちの言っていることがわかっていると思い込んでいるのが原因だと考えられます。つまり、「あなたはこういう人間で、こう考えているのだろう」という決めつけが、相手のことを本当の意味で理解する妨げになっているのです。親しい仲ほど難しいことではありますが、確証バイアスを認識して、相手の動機や結論を仮定せずにまずは話を聴いてみることが大切です。[例]子ども:「これね、保育園で描いたんだよ。見て」親:「これは、お日様だね。光がいっぱい差しているね。〇〇ちゃんは、晴れの日が大好きだもんね」子ども:「違うよ。これお花だよ。雨がたくさん降ってるの」Lesson子どもが持ってきた絵に対して、描いたものがなにかというのを、大人の目線で最初から決め込んで話を進めています。子どもには子どものストーリーがあり、話を聴くまで真相はわかりません。実際、話を聴いても真相はわからないかもしれません。ただ、子どもの世界を少しでも知るために、「この絵について教えてくれる?」と質問することから始めてみてください。「今日ね、Aちゃんがおやすみだった」と子が言ったら?[例]子ども:「今日ね、Aちゃんがおやすみだった」親:「Aちゃんがいないと、あなたも元気出ないよね。がっかりだったね」子ども:「ううん。Bちゃんと砂場で遊んで楽しかった」Lesson子どもの気持ちに思いをはせるために、想像力を働かせることは大切ですが、本当に子どもの言っていることを聴くためには、決めつけないことが求められます。子どもはあったことを単に事実として伝えていることが多く、そこにどんな感情が付随しているかは、子どもにしかわかりません。「Aちゃんおやすみだったんだ。どう感じたの?」と質問してみてください。勝手にアドバイザー勝手にアドバイザーとは、子どものことを思って、つい「こうしたら?」「こう言ってみたら?」「私があなたならこうするな」などと、助言をしがちな人です。求められていないのにアドバイスをする人には、本人は無意識でも、はっきりとした動機があります。アドバイスをするのは、個人の権力意識を高める対人行動であること、権力を欲する人ほどアドバイスをする動機が高いということがわかっています[*7]。アドバイスに従ってくれる人がいることで、「相手の行動に影響を及ぼすパワーが自分にはある」という感覚を持つのです。また、相手が自分の意向の通り動くことで、自分のコントロール欲が満たされ、安心感が高まります。決めつけリスナーと同じように、関係が近いほど、私たちは聞かれていないのに勝手にアドバイザーになる傾向にあります[*3]。「あなたのことはわかっているから、こうした方がよい」とか、「あなたのことが心配だから、こうしてほしい」という願望が動機です。アドバイスをすることは、相手に自分の思い通りに動いてほしい願望が、相手を想っているからこその親切に見えます。しかしアドバイスをする側が上に立つことを示唆しているため、関係性が不釣り合いになる可能性があります。もちろん会話の中で、子どもがアドバイスを求めている時もあるでしょう。そんな時は、子どもが言った言葉の後ですぐに助言をするのではなく、まずは子どもの話を聴いて、本人の想いを受けとめた上で、あなたの考えもシェアしてみてください。「私が思っていること、提案してもいいかな?」「私が思っていること、提案してもいいかな?」と子どもの許可を得るのも大切なことです。求められていない助言をして勝手に解決しようとすることは、子どもに対して「あなたは自分ひとりではできない」というメッセージを無意識に送っているだけでなく、子どもが自分で考える機会を奪っていることでもあります。アクティブリスニングの原点は、聴き手が自分のニーズをいったん横に置くことです。「あなたのために言っている」という名のもと、不要なアドバイスをすることは、本当に子どものためなのか、それとも自分の権力欲を満たしたいだけなのか、自分自身にたずねてみる必要があるでしょう。[例]子ども:「〇〇ちゃんがおもちゃ貸してくれない」親:「ちゃんと貸してって言った?」子ども:「言ったけど、ダメって言われた」親:「声小さくて聞こえなかったかもよ。大きな声でもう一回聞いたらどう?」Lesson最初の一言目から、まるで子どもに落ち度があるかのような前提で進んでいるほか、その子がどういう気持ちになったのかということに触れていません。すぐに提案することで、状況解決をしようという意欲はあるものの、子ども自身がどうしたいのかという意思確認が置き去りにされています。子どもの年齢にもよりますが、「あなたはどう感じた?」「あなたはどうしたい?」と質問をしながら、本人の気持ちに寄り添うことを忘れないようにしたいものです。文中の出所[*]一覧(表:『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て』)(島村 華子 : モンテッソーリ教育とレッジョ・エミリア教育研究者)
Lessonおざなりな返答は、実際には子ども自身や子どもがやったことを見ていなくても可能です。「上手」「すごい」「なるほど」を連呼していれば盛り上げられるので、多用してしまうのが現実でしょう。しかし、ここは子どもの気持ちや作品に対して頑張ったことなどを共有するチャンス。いったん作業をやめて、「違う種類のお花をたくさん描いたんだね」と具体的な感想をシェアするほか、子どもがなにを伝えてくれるのかを楽しみに話に耳を傾けましょう。
決めつけリスナー
人には「確証バイアス」があります。私たちの意識は、これまでの自分の経験や信念と一致するような事柄に向かいやすいのが自然です。つまり人は、「決めつけ」を舵にして、自分が聞きたいことだけを選択的に聞いているのです。
決めつけリスナーとは、自分の決めつけをフィルターに話を聞く人で、自分の偏見を横に置いて、相手を理解するために心をこめて聴くアクティブリスニングと相反するものです。
この決めつけは、関係性が近いほど発生することがわかっています。例えば、友人やパートナーとペアを組んだ時と、見知らぬ人とペアを組んだ時を比べて、どのくらい相手のメッセージの理解度が変わるかを調べた研究があります[*6]。
その結果、親しい間柄ほど、見知らぬ相手よりも話し手の本意を理解できないことが多く、むしろ理解度が下がることが多かったのです。
これは、家族や子どもなど関係性が近い相手ほど、私たちは相手の言っていることがわかっているし、相手も私たちの言っていることがわかっていると思い込んでいるのが原因だと考えられます。
つまり、「あなたはこういう人間で、こう考えているのだろう」という決めつけが、相手のことを本当の意味で理解する妨げになっているのです。親しい仲ほど難しいことではありますが、確証バイアスを認識して、相手の動機や結論を仮定せずにまずは話を聴いてみることが大切です。
[例]子ども:「これね、保育園で描いたんだよ。見て」親:「これは、お日様だね。光がいっぱい差しているね。〇〇ちゃんは、晴れの日が大好きだもんね」子ども:「違うよ。これお花だよ。雨がたくさん降ってるの」
Lesson子どもが持ってきた絵に対して、描いたものがなにかというのを、大人の目線で最初から決め込んで話を進めています。子どもには子どものストーリーがあり、話を聴くまで真相はわかりません。実際、話を聴いても真相はわからないかもしれません。ただ、子どもの世界を少しでも知るために、「この絵について教えてくれる?」と質問することから始めてみてください。「今日ね、Aちゃんがおやすみだった」と子が言ったら?[例]子ども:「今日ね、Aちゃんがおやすみだった」親:「Aちゃんがいないと、あなたも元気出ないよね。がっかりだったね」子ども:「ううん。Bちゃんと砂場で遊んで楽しかった」Lesson子どもの気持ちに思いをはせるために、想像力を働かせることは大切ですが、本当に子どもの言っていることを聴くためには、決めつけないことが求められます。子どもはあったことを単に事実として伝えていることが多く、そこにどんな感情が付随しているかは、子どもにしかわかりません。「Aちゃんおやすみだったんだ。どう感じたの?」と質問してみてください。勝手にアドバイザー勝手にアドバイザーとは、子どものことを思って、つい「こうしたら?」「こう言ってみたら?」「私があなたならこうするな」などと、助言をしがちな人です。求められていないのにアドバイスをする人には、本人は無意識でも、はっきりとした動機があります。アドバイスをするのは、個人の権力意識を高める対人行動であること、権力を欲する人ほどアドバイスをする動機が高いということがわかっています[*7]。アドバイスに従ってくれる人がいることで、「相手の行動に影響を及ぼすパワーが自分にはある」という感覚を持つのです。また、相手が自分の意向の通り動くことで、自分のコントロール欲が満たされ、安心感が高まります。決めつけリスナーと同じように、関係が近いほど、私たちは聞かれていないのに勝手にアドバイザーになる傾向にあります[*3]。「あなたのことはわかっているから、こうした方がよい」とか、「あなたのことが心配だから、こうしてほしい」という願望が動機です。アドバイスをすることは、相手に自分の思い通りに動いてほしい願望が、相手を想っているからこその親切に見えます。しかしアドバイスをする側が上に立つことを示唆しているため、関係性が不釣り合いになる可能性があります。もちろん会話の中で、子どもがアドバイスを求めている時もあるでしょう。そんな時は、子どもが言った言葉の後ですぐに助言をするのではなく、まずは子どもの話を聴いて、本人の想いを受けとめた上で、あなたの考えもシェアしてみてください。「私が思っていること、提案してもいいかな?」「私が思っていること、提案してもいいかな?」と子どもの許可を得るのも大切なことです。求められていない助言をして勝手に解決しようとすることは、子どもに対して「あなたは自分ひとりではできない」というメッセージを無意識に送っているだけでなく、子どもが自分で考える機会を奪っていることでもあります。アクティブリスニングの原点は、聴き手が自分のニーズをいったん横に置くことです。「あなたのために言っている」という名のもと、不要なアドバイスをすることは、本当に子どものためなのか、それとも自分の権力欲を満たしたいだけなのか、自分自身にたずねてみる必要があるでしょう。[例]子ども:「〇〇ちゃんがおもちゃ貸してくれない」親:「ちゃんと貸してって言った?」子ども:「言ったけど、ダメって言われた」親:「声小さくて聞こえなかったかもよ。大きな声でもう一回聞いたらどう?」Lesson最初の一言目から、まるで子どもに落ち度があるかのような前提で進んでいるほか、その子がどういう気持ちになったのかということに触れていません。すぐに提案することで、状況解決をしようという意欲はあるものの、子ども自身がどうしたいのかという意思確認が置き去りにされています。子どもの年齢にもよりますが、「あなたはどう感じた?」「あなたはどうしたい?」と質問をしながら、本人の気持ちに寄り添うことを忘れないようにしたいものです。文中の出所[*]一覧(表:『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て』)(島村 華子 : モンテッソーリ教育とレッジョ・エミリア教育研究者)
Lesson子どもが持ってきた絵に対して、描いたものがなにかというのを、大人の目線で最初から決め込んで話を進めています。子どもには子どものストーリーがあり、話を聴くまで真相はわかりません。実際、話を聴いても真相はわからないかもしれません。ただ、子どもの世界を少しでも知るために、「この絵について教えてくれる?」と質問することから始めてみてください。
[例]子ども:「今日ね、Aちゃんがおやすみだった」親:「Aちゃんがいないと、あなたも元気出ないよね。がっかりだったね」子ども:「ううん。Bちゃんと砂場で遊んで楽しかった」
Lesson子どもの気持ちに思いをはせるために、想像力を働かせることは大切ですが、本当に子どもの言っていることを聴くためには、決めつけないことが求められます。子どもはあったことを単に事実として伝えていることが多く、そこにどんな感情が付随しているかは、子どもにしかわかりません。「Aちゃんおやすみだったんだ。どう感じたの?」と質問してみてください。勝手にアドバイザー勝手にアドバイザーとは、子どものことを思って、つい「こうしたら?」「こう言ってみたら?」「私があなたならこうするな」などと、助言をしがちな人です。求められていないのにアドバイスをする人には、本人は無意識でも、はっきりとした動機があります。アドバイスをするのは、個人の権力意識を高める対人行動であること、権力を欲する人ほどアドバイスをする動機が高いということがわかっています[*7]。アドバイスに従ってくれる人がいることで、「相手の行動に影響を及ぼすパワーが自分にはある」という感覚を持つのです。また、相手が自分の意向の通り動くことで、自分のコントロール欲が満たされ、安心感が高まります。決めつけリスナーと同じように、関係が近いほど、私たちは聞かれていないのに勝手にアドバイザーになる傾向にあります[*3]。「あなたのことはわかっているから、こうした方がよい」とか、「あなたのことが心配だから、こうしてほしい」という願望が動機です。アドバイスをすることは、相手に自分の思い通りに動いてほしい願望が、相手を想っているからこその親切に見えます。しかしアドバイスをする側が上に立つことを示唆しているため、関係性が不釣り合いになる可能性があります。もちろん会話の中で、子どもがアドバイスを求めている時もあるでしょう。そんな時は、子どもが言った言葉の後ですぐに助言をするのではなく、まずは子どもの話を聴いて、本人の想いを受けとめた上で、あなたの考えもシェアしてみてください。「私が思っていること、提案してもいいかな?」「私が思っていること、提案してもいいかな?」と子どもの許可を得るのも大切なことです。求められていない助言をして勝手に解決しようとすることは、子どもに対して「あなたは自分ひとりではできない」というメッセージを無意識に送っているだけでなく、子どもが自分で考える機会を奪っていることでもあります。アクティブリスニングの原点は、聴き手が自分のニーズをいったん横に置くことです。「あなたのために言っている」という名のもと、不要なアドバイスをすることは、本当に子どものためなのか、それとも自分の権力欲を満たしたいだけなのか、自分自身にたずねてみる必要があるでしょう。[例]子ども:「〇〇ちゃんがおもちゃ貸してくれない」親:「ちゃんと貸してって言った?」子ども:「言ったけど、ダメって言われた」親:「声小さくて聞こえなかったかもよ。大きな声でもう一回聞いたらどう?」Lesson最初の一言目から、まるで子どもに落ち度があるかのような前提で進んでいるほか、その子がどういう気持ちになったのかということに触れていません。すぐに提案することで、状況解決をしようという意欲はあるものの、子ども自身がどうしたいのかという意思確認が置き去りにされています。子どもの年齢にもよりますが、「あなたはどう感じた?」「あなたはどうしたい?」と質問をしながら、本人の気持ちに寄り添うことを忘れないようにしたいものです。文中の出所[*]一覧(表:『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て』)(島村 華子 : モンテッソーリ教育とレッジョ・エミリア教育研究者)
Lesson子どもの気持ちに思いをはせるために、想像力を働かせることは大切ですが、本当に子どもの言っていることを聴くためには、決めつけないことが求められます。子どもはあったことを単に事実として伝えていることが多く、そこにどんな感情が付随しているかは、子どもにしかわかりません。「Aちゃんおやすみだったんだ。どう感じたの?」と質問してみてください。
勝手にアドバイザー勝手にアドバイザーとは、子どものことを思って、つい「こうしたら?」「こう言ってみたら?」「私があなたならこうするな」などと、助言をしがちな人です。求められていないのにアドバイスをする人には、本人は無意識でも、はっきりとした動機があります。アドバイスをするのは、個人の権力意識を高める対人行動であること、権力を欲する人ほどアドバイスをする動機が高いということがわかっています[*7]。アドバイスに従ってくれる人がいることで、「相手の行動に影響を及ぼすパワーが自分にはある」という感覚を持つのです。また、相手が自分の意向の通り動くことで、自分のコントロール欲が満たされ、安心感が高まります。決めつけリスナーと同じように、関係が近いほど、私たちは聞かれていないのに勝手にアドバイザーになる傾向にあります[*3]。「あなたのことはわかっているから、こうした方がよい」とか、「あなたのことが心配だから、こうしてほしい」という願望が動機です。アドバイスをすることは、相手に自分の思い通りに動いてほしい願望が、相手を想っているからこその親切に見えます。しかしアドバイスをする側が上に立つことを示唆しているため、関係性が不釣り合いになる可能性があります。もちろん会話の中で、子どもがアドバイスを求めている時もあるでしょう。そんな時は、子どもが言った言葉の後ですぐに助言をするのではなく、まずは子どもの話を聴いて、本人の想いを受けとめた上で、あなたの考えもシェアしてみてください。「私が思っていること、提案してもいいかな?」「私が思っていること、提案してもいいかな?」と子どもの許可を得るのも大切なことです。求められていない助言をして勝手に解決しようとすることは、子どもに対して「あなたは自分ひとりではできない」というメッセージを無意識に送っているだけでなく、子どもが自分で考える機会を奪っていることでもあります。アクティブリスニングの原点は、聴き手が自分のニーズをいったん横に置くことです。「あなたのために言っている」という名のもと、不要なアドバイスをすることは、本当に子どものためなのか、それとも自分の権力欲を満たしたいだけなのか、自分自身にたずねてみる必要があるでしょう。[例]子ども:「〇〇ちゃんがおもちゃ貸してくれない」親:「ちゃんと貸してって言った?」子ども:「言ったけど、ダメって言われた」親:「声小さくて聞こえなかったかもよ。大きな声でもう一回聞いたらどう?」Lesson最初の一言目から、まるで子どもに落ち度があるかのような前提で進んでいるほか、その子がどういう気持ちになったのかということに触れていません。すぐに提案することで、状況解決をしようという意欲はあるものの、子ども自身がどうしたいのかという意思確認が置き去りにされています。子どもの年齢にもよりますが、「あなたはどう感じた?」「あなたはどうしたい?」と質問をしながら、本人の気持ちに寄り添うことを忘れないようにしたいものです。文中の出所[*]一覧(表:『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て』)(島村 華子 : モンテッソーリ教育とレッジョ・エミリア教育研究者)
勝手にアドバイザー
勝手にアドバイザーとは、子どものことを思って、つい「こうしたら?」「こう言ってみたら?」「私があなたならこうするな」などと、助言をしがちな人です。
求められていないのにアドバイスをする人には、本人は無意識でも、はっきりとした動機があります。
アドバイスをするのは、個人の権力意識を高める対人行動であること、権力を欲する人ほどアドバイスをする動機が高いということがわかっています[*7]。アドバイスに従ってくれる人がいることで、「相手の行動に影響を及ぼすパワーが自分にはある」という感覚を持つのです。また、相手が自分の意向の通り動くことで、自分のコントロール欲が満たされ、安心感が高まります。
決めつけリスナーと同じように、関係が近いほど、私たちは聞かれていないのに勝手にアドバイザーになる傾向にあります[*3]。「あなたのことはわかっているから、こうした方がよい」とか、「あなたのことが心配だから、こうしてほしい」という願望が動機です。
アドバイスをすることは、相手に自分の思い通りに動いてほしい願望が、相手を想っているからこその親切に見えます。しかしアドバイスをする側が上に立つことを示唆しているため、関係性が不釣り合いになる可能性があります。
もちろん会話の中で、子どもがアドバイスを求めている時もあるでしょう。そんな時は、子どもが言った言葉の後ですぐに助言をするのではなく、まずは子どもの話を聴いて、本人の想いを受けとめた上で、あなたの考えもシェアしてみてください。
「私が思っていること、提案してもいいかな?」と子どもの許可を得るのも大切なことです。求められていない助言をして勝手に解決しようとすることは、子どもに対して「あなたは自分ひとりではできない」というメッセージを無意識に送っているだけでなく、子どもが自分で考える機会を奪っていることでもあります。アクティブリスニングの原点は、聴き手が自分のニーズをいったん横に置くことです。「あなたのために言っている」という名のもと、不要なアドバイスをすることは、本当に子どものためなのか、それとも自分の権力欲を満たしたいだけなのか、自分自身にたずねてみる必要があるでしょう。[例]子ども:「〇〇ちゃんがおもちゃ貸してくれない」親:「ちゃんと貸してって言った?」子ども:「言ったけど、ダメって言われた」親:「声小さくて聞こえなかったかもよ。大きな声でもう一回聞いたらどう?」Lesson最初の一言目から、まるで子どもに落ち度があるかのような前提で進んでいるほか、その子がどういう気持ちになったのかということに触れていません。すぐに提案することで、状況解決をしようという意欲はあるものの、子ども自身がどうしたいのかという意思確認が置き去りにされています。子どもの年齢にもよりますが、「あなたはどう感じた?」「あなたはどうしたい?」と質問をしながら、本人の気持ちに寄り添うことを忘れないようにしたいものです。文中の出所[*]一覧(表:『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て』)(島村 華子 : モンテッソーリ教育とレッジョ・エミリア教育研究者)
「私が思っていること、提案してもいいかな?」と子どもの許可を得るのも大切なことです。求められていない助言をして勝手に解決しようとすることは、子どもに対して「あなたは自分ひとりではできない」というメッセージを無意識に送っているだけでなく、子どもが自分で考える機会を奪っていることでもあります。
アクティブリスニングの原点は、聴き手が自分のニーズをいったん横に置くことです。
「あなたのために言っている」という名のもと、不要なアドバイスをすることは、本当に子どものためなのか、それとも自分の権力欲を満たしたいだけなのか、自分自身にたずねてみる必要があるでしょう。
[例]子ども:「〇〇ちゃんがおもちゃ貸してくれない」親:「ちゃんと貸してって言った?」子ども:「言ったけど、ダメって言われた」親:「声小さくて聞こえなかったかもよ。大きな声でもう一回聞いたらどう?」
Lesson最初の一言目から、まるで子どもに落ち度があるかのような前提で進んでいるほか、その子がどういう気持ちになったのかということに触れていません。すぐに提案することで、状況解決をしようという意欲はあるものの、子ども自身がどうしたいのかという意思確認が置き去りにされています。子どもの年齢にもよりますが、「あなたはどう感じた?」「あなたはどうしたい?」と質問をしながら、本人の気持ちに寄り添うことを忘れないようにしたいものです。文中の出所[*]一覧(表:『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て』)(島村 華子 : モンテッソーリ教育とレッジョ・エミリア教育研究者)
Lesson最初の一言目から、まるで子どもに落ち度があるかのような前提で進んでいるほか、その子がどういう気持ちになったのかということに触れていません。すぐに提案することで、状況解決をしようという意欲はあるものの、子ども自身がどうしたいのかという意思確認が置き去りにされています。子どもの年齢にもよりますが、「あなたはどう感じた?」「あなたはどうしたい?」と質問をしながら、本人の気持ちに寄り添うことを忘れないようにしたいものです。
文中の出所[*]一覧(表:『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て』)(島村 華子 : モンテッソーリ教育とレッジョ・エミリア教育研究者)
文中の出所[*]一覧
(表:『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て』)
(島村 華子 : モンテッソーリ教育とレッジョ・エミリア教育研究者)