新聞紙上の見出しや文章を切り取って五七五を作る「コラージュ川柳」がちょっとしたブームになっている。
考案した男性の作品が「浅いようで深い」とSNSで評判となり、他のユーザーも力作を披露するなど広がりをみせている。(上万俊弥)
考案者は「淀川テクニック」の名前で、大阪市の淀川や瀬戸内海のゴミを使ったアート作品を発表してきた芸術家の柴田英昭さん(46)(鳥取県智頭町)。2010年、古新聞を見てひらめいたという。
見出しや本文の無関係な単語を組み合わせ、川柳を生み出す。「に」や「を」など助詞だけを切り抜くのは禁止だ。「まじめな新聞だからこそ、突拍子もないストーリーが生まれて楽しい。発行する新聞社やページによって微妙に言い回しも違うんです」と話す。
21年11月からツイッターで毎日投稿。計900句以上を発表している。
〈オバチャンが ヤマタノオロチの ダシを取る〉
〈マスク氏は マスクを取れない なんちゃって〉
「絶妙に意味不明」「独特の味わいがある」と「バズり」を連発。中でも「ヤマタノオロチ」の句は8万6000件の「いいね」が集まった。
フォロワーの中には、句を自作する人も。柴田さんは「スマホやパソコンとは違う新聞特有の文字の大きさや字体と相まって、じわじわとくる脱力感も受けている」と分析する。
評判はネット上にとどまらない。1970年大阪万博の「太陽の塔」を制作したことで知られる芸術家・岡本太郎(1911~96年)にちなんだ「岡本太郎現代芸術賞」に昨年度、コラージュ川柳が入選した。
3月中旬、川崎市岡本太郎美術館で、柴田さんの指導でコラージュ川柳を作るワークショップが開かれた。紙面を目で追い、言葉選びに迷う参加者に、柴田さんは「まずは主役になる単語を探してみて」と助言した。
■新聞協会企画に800句
一般社団法人「日本新聞協会」は昨年、新聞に触れるきっかけにと、親子で作ったコラージュ川柳をSNSに投稿してもらう企画を実施し、柴田さんは審査員として参加。応募総数は800句以上にものぼった。
柴田さんは言う。「情報の価値が薄れた古新聞から切り出され、文脈を失い宙に浮いた単語同士が、新たなイメージを生み出す。『価値の転換』というアートの役割を果たしている」