近ごろ評判が芳しくない岸田文雄総理(65)だが、この人事は“英断”といえるだろう。内閣府特命担当大臣を務めていた野田聖子氏(61)が、今月10日発足の第2次岸田改造内閣で留任を果たせなかった。折しも組閣前、彼女の夫が「元暴力団員だった」との判決が最高裁で確定。彼女は猛反論の構えをみせているのだ。
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【写真4枚】「元暴力団組員」と最高裁が認定した野田聖子の夫・文信氏 今月8日、最高裁第1小法廷で、野田氏の夫・文信氏が、本誌(「週刊新潮」)記事(2018年8月2日号「女性総理」の夢を壊した「野田聖子」総務相の「元反社夫」)を事実無根だとして、発行元の新潮社を相手取り、1100万円の支払いを求めて訴えた裁判の審判が下った。
野田聖子氏 結論から言えば、最高裁は文信氏の上告を棄却。一審の東京地裁と二審の東京高裁の、記事は野田氏の夫の名誉を毀損しておらず、〈原告が指定暴力団・会津小鉄会の昌山(まさやま)組に所属していた元暴力団員であるとの事実の重要な部分は、真実であると認められる〉とした判決が確定したのだった。金融庁の担当者に“圧力”をかけた疑惑 ことの発端は4年前の18年7月にまで遡る。当時、安倍政権で総務大臣を務めていた野田氏の秘書が、文信氏と懇意にしていた仮想通貨事業者を同席させ、金融庁の担当者を事務所に呼びつけて説明を求め、いわば“圧力”をかけたのではないかとの疑惑を、朝日新聞(18年7月19日付)が報じた。 この一件で方々から批判を受けた野田氏は釈明に追われて、“金融庁に一般的な説明をしてもらっただけ”“圧力ではない”と弁明。この出来事を、本誌は前述の記事で報じたのである。 また誌面では、“金融庁への圧力”の背景には野田氏の夫・文信氏の存在があると指摘し、かつて彼が暴力団に所属する構成員であったという経歴を紹介した。こうした内容が、野田氏側にとっては“事実無根”だとして、本誌に対する提訴に至ったというわけだ。ブログ、SNSで持論を展開 冒頭の通り、結果的には裁判を起こしておきながら野田氏側の主張は司法の場で退けられた。しかし、妻である野田氏は判決から2日後、思わぬ行動に出る。 自らの公式ブログやSNS上で持論を展開。その内容を以下に抜粋するが、首をかしげたくなる記述が散見されるのだ。〈上告の後、夫が暴力団に所属していたといわれている時期に、夫と交際関係のあった知人、また、夫が勤務していた会社の関係者の方々から詳細な事実関係を確認しました。これにより、当時、夫がごく普通の会社員として真面目に勤務し、プライベートも含め、暴力団として活動する余地などなかったこと、また、暴力団との関係もなかったことを明らかにしていただきました〉 実は一連の裁判で野田氏側は、同じ主旨の話を“夫の知人”とされる人物の陳述書として提出したが、それを吟味した上で判決は下されている。その点に彼女は触れていないのだ。〈捜査官の方からは…〉 さらに、一審で本誌の証人として法廷に立ち、「夫が元暴力団員」だと証言した元組長についてもこう書く。〈他方、週刊誌に頼まれて夫が暴力団に所属していたと証言をした人物(元暴力団組長※これが真実性に関する唯一の証人)については、昨年、京都府警が偽証罪の疑いがあるとして捜査を開始し、本年5月に至るまで熱心に捜査を続けてくださいましたが、残念なことに、当該偽証をした人物が死亡し、捜査は打ち切りとなってしまいました。ただ、本年7月、捜査を担当した捜査官の方からは、この人物が偽証をしたものと考えていたとの見解を頂いています〉 これにも少々説明が必要だろう。実は元組長が決定的な証言をした後、野田氏側は彼を偽証罪で京都府警に刑事告訴していた。相談されれば政治権力に弱い警察は形だけでも動かざるをえまい。そうした経緯に触れず、警察が自ら捜査へ動いたとも読める記述はアンフェアではないか。 ちなみに、本誌と同時期に文信氏の過去に触れた「週刊文春」も野田氏側に訴えられたが、一審では一部で名誉毀損が認められてしまい、二審で本誌記事の裁判で証人に立った元組長の裁判記録を証拠として追加提出。本誌判決と同じ日、最高裁で「夫は元暴力団員」だと認められている。 ともあれ、野田氏は最後に裁判所へもかみつくことも忘れない。〈最高裁の判断は誠に遺憾ではありますが、最高裁は法律審であり、上記のような事実を踏まえていないものであります〉日本の司法を認めないのか 改めて判決確定で問われるのは、一人の政治家として、また大臣や与党の要職を歴任した野田氏が、夫婦そろって司法の判断と異なる説明を繰り返し、過去をひた隠しにしてきたことだろう。政治アナリストの伊藤惇夫氏も、こう指摘する。「夫が元暴力団員だとしても、立派に更生したのなら責められることではありませんが、野田さんはずっと否定し続けてきました。しかも司法の判決が確定して揺るがないにもかかわらず、なおも反論する姿は、法律を作る立場の立法府に身を置きながら、日本の司法を認めないのかとの疑問を周囲に与えてしまいます」 他にも彼女の反論には看過できない点があった。「ブログで捜査員から聞いた話を明かしていますが、通常、警察が捜査状況を一方の当事者に話すことはありえず、政治家の立場を使い捜査情報を入手したとなれば問題だと思います。このままでは総理はおろか、今後閣僚に選ばれるのも難しいのではないでしょうか」(同) 実際、件のブログなどでも常日頃から「日本初の女性総理を目指す」と公言してやまない野田氏に、改めて見解を尋ねたところ、期限までに回答はなかった。 彼女が目指す内閣総理大臣という仕事は、国民の生命と財産を守るという高度な危機管理が求められるが、果たしてそうした資質を備えているのか。その審判は、もはや我々有権者が下すしかないのか。「週刊新潮」2022年8月25日号 掲載
今月8日、最高裁第1小法廷で、野田氏の夫・文信氏が、本誌(「週刊新潮」)記事(2018年8月2日号「女性総理」の夢を壊した「野田聖子」総務相の「元反社夫」)を事実無根だとして、発行元の新潮社を相手取り、1100万円の支払いを求めて訴えた裁判の審判が下った。
結論から言えば、最高裁は文信氏の上告を棄却。一審の東京地裁と二審の東京高裁の、記事は野田氏の夫の名誉を毀損しておらず、〈原告が指定暴力団・会津小鉄会の昌山(まさやま)組に所属していた元暴力団員であるとの事実の重要な部分は、真実であると認められる〉とした判決が確定したのだった。
ことの発端は4年前の18年7月にまで遡る。当時、安倍政権で総務大臣を務めていた野田氏の秘書が、文信氏と懇意にしていた仮想通貨事業者を同席させ、金融庁の担当者を事務所に呼びつけて説明を求め、いわば“圧力”をかけたのではないかとの疑惑を、朝日新聞(18年7月19日付)が報じた。
この一件で方々から批判を受けた野田氏は釈明に追われて、“金融庁に一般的な説明をしてもらっただけ”“圧力ではない”と弁明。この出来事を、本誌は前述の記事で報じたのである。
また誌面では、“金融庁への圧力”の背景には野田氏の夫・文信氏の存在があると指摘し、かつて彼が暴力団に所属する構成員であったという経歴を紹介した。こうした内容が、野田氏側にとっては“事実無根”だとして、本誌に対する提訴に至ったというわけだ。
冒頭の通り、結果的には裁判を起こしておきながら野田氏側の主張は司法の場で退けられた。しかし、妻である野田氏は判決から2日後、思わぬ行動に出る。
自らの公式ブログやSNS上で持論を展開。その内容を以下に抜粋するが、首をかしげたくなる記述が散見されるのだ。
〈上告の後、夫が暴力団に所属していたといわれている時期に、夫と交際関係のあった知人、また、夫が勤務していた会社の関係者の方々から詳細な事実関係を確認しました。これにより、当時、夫がごく普通の会社員として真面目に勤務し、プライベートも含め、暴力団として活動する余地などなかったこと、また、暴力団との関係もなかったことを明らかにしていただきました〉
実は一連の裁判で野田氏側は、同じ主旨の話を“夫の知人”とされる人物の陳述書として提出したが、それを吟味した上で判決は下されている。その点に彼女は触れていないのだ。
さらに、一審で本誌の証人として法廷に立ち、「夫が元暴力団員」だと証言した元組長についてもこう書く。
〈他方、週刊誌に頼まれて夫が暴力団に所属していたと証言をした人物(元暴力団組長※これが真実性に関する唯一の証人)については、昨年、京都府警が偽証罪の疑いがあるとして捜査を開始し、本年5月に至るまで熱心に捜査を続けてくださいましたが、残念なことに、当該偽証をした人物が死亡し、捜査は打ち切りとなってしまいました。ただ、本年7月、捜査を担当した捜査官の方からは、この人物が偽証をしたものと考えていたとの見解を頂いています〉
これにも少々説明が必要だろう。実は元組長が決定的な証言をした後、野田氏側は彼を偽証罪で京都府警に刑事告訴していた。相談されれば政治権力に弱い警察は形だけでも動かざるをえまい。そうした経緯に触れず、警察が自ら捜査へ動いたとも読める記述はアンフェアではないか。
ちなみに、本誌と同時期に文信氏の過去に触れた「週刊文春」も野田氏側に訴えられたが、一審では一部で名誉毀損が認められてしまい、二審で本誌記事の裁判で証人に立った元組長の裁判記録を証拠として追加提出。本誌判決と同じ日、最高裁で「夫は元暴力団員」だと認められている。
ともあれ、野田氏は最後に裁判所へもかみつくことも忘れない。
〈最高裁の判断は誠に遺憾ではありますが、最高裁は法律審であり、上記のような事実を踏まえていないものであります〉
改めて判決確定で問われるのは、一人の政治家として、また大臣や与党の要職を歴任した野田氏が、夫婦そろって司法の判断と異なる説明を繰り返し、過去をひた隠しにしてきたことだろう。政治アナリストの伊藤惇夫氏も、こう指摘する。
「夫が元暴力団員だとしても、立派に更生したのなら責められることではありませんが、野田さんはずっと否定し続けてきました。しかも司法の判決が確定して揺るがないにもかかわらず、なおも反論する姿は、法律を作る立場の立法府に身を置きながら、日本の司法を認めないのかとの疑問を周囲に与えてしまいます」
他にも彼女の反論には看過できない点があった。
「ブログで捜査員から聞いた話を明かしていますが、通常、警察が捜査状況を一方の当事者に話すことはありえず、政治家の立場を使い捜査情報を入手したとなれば問題だと思います。このままでは総理はおろか、今後閣僚に選ばれるのも難しいのではないでしょうか」(同)
実際、件のブログなどでも常日頃から「日本初の女性総理を目指す」と公言してやまない野田氏に、改めて見解を尋ねたところ、期限までに回答はなかった。
彼女が目指す内閣総理大臣という仕事は、国民の生命と財産を守るという高度な危機管理が求められるが、果たしてそうした資質を備えているのか。その審判は、もはや我々有権者が下すしかないのか。
「週刊新潮」2022年8月25日号 掲載