兵庫県姫路市の県立高校で、卒業式に出席した3年生の男子生徒が、髪形を理由に他の卒業生がいない2階席に隔離されたことが問題になりました。生徒は父親がアメリカ国籍で、父親のルーツである黒人文化で伝統がある編み込む髪形「コーンロウ」にしたところ、大多数の卒業生と離れた体育館の2階席に着くよう求められました。この問題を報じた毎日新聞のスクープ記事を受けて、自身も両親が海外出身で、高校時代に「くせ毛・茶系毛髪証明書」を常備するよう強いられた男性AさんがTwitterに当時のくせ毛証明書を公開しました。
【写真】高校時代のAさんイランとアゼルバイジャンにルーツをもつAさんは「自称進学校の私立高校から常備するように強制されたカード」としてくせ毛証明書を投稿しました。一方、Aさんは他の生徒たちと比べて特段くせが強い髪質ではなかったといいます。「日本の学校システムは異様かつ暴力的」と振り返るAさんに話を聞きました。自分以上にくせ毛の生徒いたのにAさんは両親がイランとアゼルバイジャンにルーツを持つ大学院生です。埼玉県の私立中高一貫校に通い、高校に進んだ際、私立校が発行する「くせ毛・茶系毛髪証明書」を取得しました。「中学時代から校則が厳しく、数ヶ月に一度、生徒指導部が『頭髪服装検査』なるものを行っていました。男子であれば髪が短く、眉毛や耳、シャツの襟などにかかっていないか。女子であれば髪を結び、そして靴下やシャツが規定のものか。アクセサリーなどを着けていないか、などなどが学年付きの教員ら総出で検査されました」Aさんは「くせ毛・茶系毛髪証明書」を高校入学時(2014年)に取得しました。しかし、自身よりくせの強い他の生徒には証明書が求めらないことに違和感を抱いたといいます。「私のくせ毛はさほど強くはなく、むしろ日本人の生徒に私以上のくせ毛は多くいました。ただ、軽いくせ毛でも、検査で不利に働く可能性があり、検査に落ちれば翌日までに散髪を強制されます。『頭髪証明書を取得する方が賢明だ』と思いました」ーーくせ毛について、学校で差別的な発言をされたことはありますか。「『本当は校則違反なのに』という主旨の発言は、年配の体育教師などから吐き捨てるように言われた記憶があります。当時、彼ら年配の教員は人事や指定校推薦において強い権力を保持していました」ーー中学、高校に根強く残るブラック校則について、思うところがあったら教えてください。「日本の高等教育を含めた学校システムは、異様かつ教育的意義を欠いた暴力的なものです。校則の大半は、醜悪な偏見に裏打ちされたものです。人間は多様だという前提で見ようとせず、見かけの同質性を確保するべく、生徒の自由を剥奪する人権侵害がまかり通っています。今後ますます多様な特性、発達段階、ルーツ、家庭的文脈を持った生徒が増えていくにあたって、紋切り型の規則や学習方法を押し付ける学校システムは行き詰まると思います」◇ ◇Aさんが通っていた埼玉県の私立中高一貫校に問い合わせたところ、「現在はくせ毛・茶系毛髪証明書を発行していない」「当時は頭髪検査のたびに教師から指摘されれば、生徒の心の負担になるだろうと思って毛髪証明書を出していた。今は『証明書がなくても対応できる』という理由で証明書発行を取りやめた」と回答しました。多様性の尊重を掲げる一方、制服や頭髪規制で外見を均一化し、問題を内面化してきた日本の校則。Aさんが通っていた高校のように、ルールを見直す時が来ているのかもしれません。(まいどなニュース・伊藤 大介)
イランとアゼルバイジャンにルーツをもつAさんは「自称進学校の私立高校から常備するように強制されたカード」としてくせ毛証明書を投稿しました。一方、Aさんは他の生徒たちと比べて特段くせが強い髪質ではなかったといいます。「日本の学校システムは異様かつ暴力的」と振り返るAさんに話を聞きました。
Aさんは両親がイランとアゼルバイジャンにルーツを持つ大学院生です。埼玉県の私立中高一貫校に通い、高校に進んだ際、私立校が発行する「くせ毛・茶系毛髪証明書」を取得しました。
「中学時代から校則が厳しく、数ヶ月に一度、生徒指導部が『頭髪服装検査』なるものを行っていました。男子であれば髪が短く、眉毛や耳、シャツの襟などにかかっていないか。女子であれば髪を結び、そして靴下やシャツが規定のものか。アクセサリーなどを着けていないか、などなどが学年付きの教員ら総出で検査されました」
Aさんは「くせ毛・茶系毛髪証明書」を高校入学時(2014年)に取得しました。しかし、自身よりくせの強い他の生徒には証明書が求めらないことに違和感を抱いたといいます。
「私のくせ毛はさほど強くはなく、むしろ日本人の生徒に私以上のくせ毛は多くいました。ただ、軽いくせ毛でも、検査で不利に働く可能性があり、検査に落ちれば翌日までに散髪を強制されます。『頭髪証明書を取得する方が賢明だ』と思いました」
ーーくせ毛について、学校で差別的な発言をされたことはありますか。
「『本当は校則違反なのに』という主旨の発言は、年配の体育教師などから吐き捨てるように言われた記憶があります。当時、彼ら年配の教員は人事や指定校推薦において強い権力を保持していました」
ーー中学、高校に根強く残るブラック校則について、思うところがあったら教えてください。
「日本の高等教育を含めた学校システムは、異様かつ教育的意義を欠いた暴力的なものです。校則の大半は、醜悪な偏見に裏打ちされたものです。人間は多様だという前提で見ようとせず、見かけの同質性を確保するべく、生徒の自由を剥奪する人権侵害がまかり通っています。今後ますます多様な特性、発達段階、ルーツ、家庭的文脈を持った生徒が増えていくにあたって、紋切り型の規則や学習方法を押し付ける学校システムは行き詰まると思います」
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Aさんが通っていた埼玉県の私立中高一貫校に問い合わせたところ、「現在はくせ毛・茶系毛髪証明書を発行していない」「当時は頭髪検査のたびに教師から指摘されれば、生徒の心の負担になるだろうと思って毛髪証明書を出していた。今は『証明書がなくても対応できる』という理由で証明書発行を取りやめた」と回答しました。
多様性の尊重を掲げる一方、制服や頭髪規制で外見を均一化し、問題を内面化してきた日本の校則。Aさんが通っていた高校のように、ルールを見直す時が来ているのかもしれません。
(まいどなニュース・伊藤 大介)