最初は楽しいこともあったママ友の集まり。だがだんだん中で嫌なことが増えていき、「もう集まりから逃れたい」と嘆く女性がいる。まれに、子どもたちが離ればなれになってもママ友との親しい関係が続いていると言う女性もいるが、「子どもを介して」知り合った関係だから、気の合わないケースも多いようだ。
ARINA株式会社が運営する幼児、小学生の親御さん向けの教育メディア「おうち教材の森」の調査によれば、「ママ友との付き合いで1番大変なこと」の1位は『うわさ話』だという。
ママ友間ではどんな噂が広がり、日常にどのような影響を与えるのか。ママ友の噂に苦しんだある女性の事例をもとに見ていこう。
「うちは2年前、家を購入して今の場所に越してきたんです。前は、とある集合住宅にいたんですが、ここが楽しかったんですよ。近所とはみんな顔なじみで、世代も違っていたけど、今どきおかずの交換までするような家が数軒あって。子どもを預けたり預かったりしても、まったくトラブルがなかった。誰かボスがいるわけでもなく、ひとり暮らしのお年寄りとも仲良くしていて……。越さなければよかった。心からそう思います」
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目を潤ませてそう言うのはユカリさん(40歳、仮名=以下同)だ。集合住宅は楽しかったが、家族4人で暮らすには狭すぎた。長女が小学校に上がるのを機に、夫の両親の援助や、彼女の親からの遺産などもあって今の一軒家を購入した。現在、6歳になる次女と4人暮らし、ユカリさんもパートで働いている。
「夫とは元同僚なんです。次女が生まれたとき、長女は3歳。ひとりで3歳とゼロ歳を育てていくのにフルタイムはむずかしかった。夫婦とも実家は遠方ですし、私のほうは20代のころに両親を亡くしているので。しかたなく会社を辞めたんです」
前に住んでいた集合住宅は、もともと夫が賃貸で借りていたもの。結婚後、ユカリさんがそこに越し、ふたりの子を生んでも住み続けていた。周りのさりげない助けがあったからこそ、やってこられた。
「今の場所も、最初はよかったんですよ」
昔からの住宅街の一角に新興住宅地が入り込んだような形だったので、ユカリさんと隣家のマサコさんは同世代ということもあってすぐに仲良くなった。マサコさんの息子が、ユカリさんの次女と同い年だ。
「このマサコさんが情報通なんです。越してきたのもほぼ同時期だったのに、彼女は1ヶ月もたたないうちに、ママ友勢力図をつかんでいた。いろいろ教えてもらいました。とりあえずボスのところに挨拶に行ったほうがいいらしいと聞き、ふたりで出かけていったんです」
それは徒歩5分もかからないキミエさんの家だ。キミエさんは子どもが4人いて、長い期間、ボスの座に君臨しているという。マサコさんが言うには、キミエさんは太っ腹の大ボスで情に厚い、いい人だということだった。
「キミエさんの家に行ったら、どうやらお姑さんと同居みたいで、いきなりお姑さんが出てきて『うちの嫁は最高の嫁なの。あなたたちよりずっと優秀よ』って。面食らいました。あわててキミエさんが出てきて、お姑さんを奥へ連れて行った。その後、私たちが挨拶してもキミエさんはなんだか心ここにあらずでした。おそらく義母との間がうまくいってないんでしょうね。お姑さんもとってつけたような褒め方だったし」
とはいえ挨拶はした。本音を言えば、ユカリさんはめんどうでたまらなかったという。ママ友などいなくてもいいとさえ思っていた。だが、「子どものためならしかたがないわよ」というマサコさんに同調した。この土地でうまくやっていくためには、長年この土地にいる人に自分から心を寄せていくしかない。そう腹をくくった。
ママ友グループはいくつもできたとユカリさんは言う。LINEのグループが地域と学校だけのときはまだよかった。その後、誰かが新しいグループを作り、知らないうちにどんどん入れられていた。ユカリさんはいちばん多いときで8つものグループに入っていたという。
「どういうつながりかも、よく理解していませんでした。仲間に入れてくれるならそれもいいかと思っていただけ。たまにチラ見はしたけど、どうやらたいしたことを話しているわけではないし、私もパートで仕事を始めたので、読んだり読まなかったりしていたんですよ」
するとマサコさんから忠告があった。いくつかのグループで、ユカリさんが不義理すぎると言われていると。不義理って何だろうとLINEを覗くと、みんなでお茶会をやるから来てとか、何日の昼間にカラオケ大会をやるとか、そういう誘いがあふれていた。
「LINEなんてみんなちゃんと見てないと思っていたんですよ。そうしたらどえらいことになっていて。私は仕事を始めたので、ごめんなさいといくつかを退会しました。そうしたら今度は、あることないこと噂を立てられていたんです」
噂されてるとユカリさんに教えてくれたのは、なんと夫だった。夫は夫なりに地域に溶け込もうと駅前の居酒屋にときどき顔を出していた。そこで顔見知りになった男性と話していたら、次女の通う保育園にやはり子どもを行かせているとわかり、親しくなっていった。
その彼が、「お宅の奥さん、浮気しているという噂が流れてますよ」と教えてくれたそうだ。
「夫は『そんな噂を立てられること自体が嘆かわしい』とけっこうな剣幕で怒っていました。でも火のないところでも煙が立つのがママ友の世界だと思うと私は言ったんです。最初は夫も半信半疑みたいだったけど、私がいつの間にかいくつものLINEグループに入れられ、対応できずにいたら不義理をしたという話になった。だったらグループを抜ければ、そのくらいの噂が流れて当然かもしれない。すると夫は『めんどうだなあ』って。私もそう思う。でもここで暮らす以上、子どもを人質にとられているようなものだからと言うしかなかった。お互いにうまくやっていこう、でも何かあったら助け合おうと約束しました」
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ただ暮らしているだけなのに、どうしてこんなふうに同調圧力をかけられるのか、なぜきめ細かに対応しなければいけないのか、わけがわからなかったとユカリさんは言う。
ママ友といっても、永遠につづく親友になるわけでもない。適度な距離感をとればよいと思うのだが。
しかし、ユカリさんはあのころはただひたすら、「仲間はずれにされたくなかった」し、「誰からも嫌われたくない、うまくやっていきたい」という気持ちが強かったのだそうだ。
ところが、ママ友とうまくやろうというその気持ちが、ユカリさんをさらに追いつめていった。今度は地域のママ友と新たなトラブルが起こり……。くわしくは後編記事〈40歳主婦に「もうウンザリ」と思わせたママ友たちの噂、陰口、マウンティングの「闇」〉でお伝えする。