「私人逮捕系」を謳い、市民を勝手に撮影してネットに晒す行為を繰り返したYouTuberが、警視庁に名誉毀損の疑いで逮捕された。このような過激YouTuberがネット空間で猛威を振るうようになったのも、彼らを囃し立て「拡散」する協力者がいるからだ。その1人となったことを後悔している30代の女性に話を聞いた。
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【写真】思えばこの頃から迷惑行為ばかりしていた。コロアキ容疑者が山手線を“無限列車”に見立て、ノーマスクで1周する「反マスク活動」をしていた頃の姿(22年2月)もともと「過激な人」が好きだった 東京郊外在住のA子さんは、今年の春先まで約7年間、引きこもりがちな生活を送っていた。仕事はイラストレーターで職場は自宅。気づいたら誰とも話さず、孤独のまま1日を終えることが日常――。

私人逮捕系YouTuberとして有名だった杉田一明容疑者(本人のSNSより)〈こんな生活を続けていたら廃人になってしまう〉 そんな不安に駆られたA子さんは、刺激を求めて外に出てみたいと考えた。そこで連絡を取ったのが、11月13日、「コンサートのチケットを転売していた」と女性に言いがかりをつける動画を配信したとして、名誉毀損容疑で警視庁に逮捕された「煉獄コロアキ」こと杉田一明容疑者(40 )だった。 今年4月の時点で杉田容疑者はまだ私人逮捕活動はしていなかったが、コスプレ姿で始めた反ワクチン活動や若年女性支援団体への妨害活動などで、徐々にSNSで注目度が上昇。結果は落選だったが、武蔵野市議会議員選挙にも立候補していた。「もともと過激なことをする人が好きで、どんな思考回路を持っているのだろうと興味を持っていました。コスプレ男が本当に市議会議員になったら面白いとも思いました。気づいたら、勢いで会いに行ってしまっていた」(以下、A子さん)仲間が増えて楽しかった 初めて杉田容疑者と会ったのはJR吉祥寺駅前の広場。そこには自分と同じくSNSで呼応した7、8人の選挙応援ボランティアが駆けつけていた。ビラ配りの後、マクドナルドで行われた食事会に参加した時は緊張した。「取り巻きには意外と女性が多かった。中高一貫のお嬢様学校で育ってきたという、一見、普通そうに見える20代の女性もいました。ただ、私もそうですが心療内科に通っているなど、全体としてはコミュニケーションが苦手そうな人が多かった。とはいえ、久しぶりに人と触れ合っているというすごい高揚感がありました。自分がうまくしゃべれているか終始気になりました」 杉田容疑者にはカリスマ性を感じた。「インスピレーションがすごくて、すぐに行動に移す。この人が世の中を動かしたら面白いと感じてしまった」 杉田容疑者の支援者たち二十数名で構成されるグループLINEに加入したことで、一気に交友関係は広がった。やがて、杉田容疑者が新宿・歌舞伎町で行っていた夜廻り活動にも参加するように。杉田容疑者には活動を共にする20代から40代くらいの女性ファンが4、5人いて、「毎晩のように彼女たちと神輿を担いで、わいわい一緒に過ごすのが楽しかった」と振り返る。 ノリで始めた活動だったが、徐々にやりがいも感じ始めるようにもなった。「あの頃、大久保公園のあたりには体を売ることを目的とした若い日本人女性が溢れていて、10代の子もいた。私自身もやんちゃをしていた過去もあったので、親身になって彼女たちの話を聞いてあげました。『ホストなんか信用したらダメ』と諭すと、『やめる』と素直にわかってくれる子もいました」徐々にでき始めた“溝” だが、活動の方針をめぐって杉田容疑者と徐々に距離ができ始めたという。「コロアキにとっては目立つことが全て。活動の中身なんてどうでもいいんです。彼は10代の女の子に『頑張って』と声をかけてホッカイロや飲み物をプレゼントしていました。大人の対応として、それはさすがにおかしいと指摘すると、『この団体のリーダーは俺だ。なぜ歯向かう?』と彼は苛立っていました」 その後、杉田容疑者が精を出すようになったチケット転売ヤーの私人逮捕活動にも複数回同行し、一緒に張り込みも経験。だが、彼の活動に反発する場面は増えるばかりだった。「彼は他の私人逮捕系YouTuberの活動にくっついていくだけで、仕事が雑過ぎる。後先考えずモザイクをかけずに晒したりするのでトラブルも多いし、急にホストを始めたり、あっちこっち手を出して根気もない。『そんなふらふらした活動ではダメでしょう』と私が意見を言ううちに、どんどん疎まれるようになって……」突然、いわれもなき嫌疑で“晒された” そして、知り合って5カ月ほどが経過した9月上旬、“事件”は起きた。 A子さんが杉田容疑者とは別のYouTuberの活動を手伝いに行った時のこと。いきなり街中で誰かから肩を叩かれた。振り向くと4、5人の男性がカメラを回していて、中にいた杉田容疑者がこう言ってきた。「お前、ネットストーカーしただろう」 A子さんが杉田容疑者との間で交わしたLINE画像を偽造して評判を貶めようとしたという身に覚えのない嫌疑だった。A子さんがやってくるのを待ち構えていた杉田容疑者は、自身のYouTubeチャンネルのコンテンツにしようとカメラを回し出したのである。びっくりしたA子さんだったが、その場では気軽に考えていたという。「全く身に覚えのない話でしたし、当時、コロアキもネタに窮していたので、私を利用して動画を1本捻り出したいのだと思いました。だから、彼には『出してもいいけどちゃんとモザイクかけてね』と言っていたんです。けれど……」 杉田容疑者はモザイクなしでA子さんの素顔を晒し、動画を配信した。カメラの前で怯えるA子さんの顔は、瞬く間にネット空間で拡散された。それからA子さんの生活は一気に暗転した。自殺未遂「コロアキらとの活動は周囲に隠してやっていたのですが、バレてしまった。仕事の関係先から『あんな人間と付き合っている人とは仕事はできない』と毎日のように夜中までクレームの電話がかかってくるように。やっと掴んだ大きな仕事もキャンセルになってしまいました」 杉田容疑者には動画を下げてほしいと訴え続けたが、ブロックされて全く聞き入れてもらえなかった。「自分のファンだからいいだろうという軽いノリなんです。暴走機関車のような人だから一度走り出したら止められない。結局、2本も同様の動画を上げられてしまいました」 初めて自分が晒される側に立って感じた恐怖は凄まじかった。このまま自分は社会的な信用を失い、二度と回復できないのかもしれない……。気づいたら、病院で処方されていた睡眠薬を酒と一緒に大量に摂取して風呂場で倒れていた。たまたま部屋を訪ねてきた母親が発見してくれたため一命を取り留めることができたが、入院後4日間も昏睡が続き入院したほど危険な状態だったという。「目が覚めたら、母が泣き叫びながらビンタしてきました。私もそこでようやく冷静になって、自分のした愚かな行為を悔いたのです」「私人逮捕系YouTuber全てが悪いわけではない」 その後、家族の支えもあって、A子さんの心身は快復。仕事も少しずつ再開し、元の生活を取り戻しつつある。今回の杉田容疑者の逮捕を受け、「あんな人間を支援し、調子づかせてしまった自分を、今は恥じています。晒されてしまったのも自業自得。彼のような破天荒な男に興味を持った理由には、社会への不満・鬱屈が溜まっていたこともあったと思う。型破りなやり方で突撃する彼を、ヒーローのように誤認してしまった自分がいた」 だが、そう振り返りながらも、「全ての私人逮捕系YouTuberが同列視して語られるべきではない」と語る。「コロアキ以外にも数人の私人逮捕系YouTuberに会いましたが、ビジネス詐欺をやっているセミナーを徹底的に潰したり、執念で痴漢を捕まえたり、彼らなりの社会正義を貫いていると感じさせる人はちゃんといました。もちろん、世間の大半が彼らに対して『警察がやるべきことであり、社会秩序を乱している』と否定的な意見を持っていることは知っています。ただ、本気で痴漢を退治し、陰で警察から感謝されているような活動家がいるのは事実。仮にそれが再生回数稼ぎのビジネス目的であったとしても、社会貢献の一つして認められていいと思う」 自殺騒動を起こした数日後、もう二度とSNSなど見たくないと、Xのアカウントを削除した。だが、2日後には、「急に居なくなったが、どうしたんだろう?」と心配するフォロワーの投稿を目にして再開した。「戻ると数人のフォロワーが『消えることないじゃん』って励ましてくれて、心が休まりました。SNS上だけの会わない関係でも、イラストや告白している持病のことで大事にしていきたい繋がりがあります。今後はルールを守りながら、SNSとは上手に付き合っていきたいです」デイリー新潮編集部
東京郊外在住のA子さんは、今年の春先まで約7年間、引きこもりがちな生活を送っていた。仕事はイラストレーターで職場は自宅。気づいたら誰とも話さず、孤独のまま1日を終えることが日常――。
〈こんな生活を続けていたら廃人になってしまう〉
そんな不安に駆られたA子さんは、刺激を求めて外に出てみたいと考えた。そこで連絡を取ったのが、11月13日、「コンサートのチケットを転売していた」と女性に言いがかりをつける動画を配信したとして、名誉毀損容疑で警視庁に逮捕された「煉獄コロアキ」こと杉田一明容疑者(40 )だった。
今年4月の時点で杉田容疑者はまだ私人逮捕活動はしていなかったが、コスプレ姿で始めた反ワクチン活動や若年女性支援団体への妨害活動などで、徐々にSNSで注目度が上昇。結果は落選だったが、武蔵野市議会議員選挙にも立候補していた。
「もともと過激なことをする人が好きで、どんな思考回路を持っているのだろうと興味を持っていました。コスプレ男が本当に市議会議員になったら面白いとも思いました。気づいたら、勢いで会いに行ってしまっていた」(以下、A子さん)
初めて杉田容疑者と会ったのはJR吉祥寺駅前の広場。そこには自分と同じくSNSで呼応した7、8人の選挙応援ボランティアが駆けつけていた。ビラ配りの後、マクドナルドで行われた食事会に参加した時は緊張した。
「取り巻きには意外と女性が多かった。中高一貫のお嬢様学校で育ってきたという、一見、普通そうに見える20代の女性もいました。ただ、私もそうですが心療内科に通っているなど、全体としてはコミュニケーションが苦手そうな人が多かった。とはいえ、久しぶりに人と触れ合っているというすごい高揚感がありました。自分がうまくしゃべれているか終始気になりました」
杉田容疑者にはカリスマ性を感じた。
「インスピレーションがすごくて、すぐに行動に移す。この人が世の中を動かしたら面白いと感じてしまった」
杉田容疑者の支援者たち二十数名で構成されるグループLINEに加入したことで、一気に交友関係は広がった。やがて、杉田容疑者が新宿・歌舞伎町で行っていた夜廻り活動にも参加するように。杉田容疑者には活動を共にする20代から40代くらいの女性ファンが4、5人いて、「毎晩のように彼女たちと神輿を担いで、わいわい一緒に過ごすのが楽しかった」と振り返る。
ノリで始めた活動だったが、徐々にやりがいも感じ始めるようにもなった。
「あの頃、大久保公園のあたりには体を売ることを目的とした若い日本人女性が溢れていて、10代の子もいた。私自身もやんちゃをしていた過去もあったので、親身になって彼女たちの話を聞いてあげました。『ホストなんか信用したらダメ』と諭すと、『やめる』と素直にわかってくれる子もいました」
だが、活動の方針をめぐって杉田容疑者と徐々に距離ができ始めたという。
「コロアキにとっては目立つことが全て。活動の中身なんてどうでもいいんです。彼は10代の女の子に『頑張って』と声をかけてホッカイロや飲み物をプレゼントしていました。大人の対応として、それはさすがにおかしいと指摘すると、『この団体のリーダーは俺だ。なぜ歯向かう?』と彼は苛立っていました」
その後、杉田容疑者が精を出すようになったチケット転売ヤーの私人逮捕活動にも複数回同行し、一緒に張り込みも経験。だが、彼の活動に反発する場面は増えるばかりだった。
「彼は他の私人逮捕系YouTuberの活動にくっついていくだけで、仕事が雑過ぎる。後先考えずモザイクをかけずに晒したりするのでトラブルも多いし、急にホストを始めたり、あっちこっち手を出して根気もない。『そんなふらふらした活動ではダメでしょう』と私が意見を言ううちに、どんどん疎まれるようになって……」
そして、知り合って5カ月ほどが経過した9月上旬、“事件”は起きた。
A子さんが杉田容疑者とは別のYouTuberの活動を手伝いに行った時のこと。いきなり街中で誰かから肩を叩かれた。振り向くと4、5人の男性がカメラを回していて、中にいた杉田容疑者がこう言ってきた。
「お前、ネットストーカーしただろう」
A子さんが杉田容疑者との間で交わしたLINE画像を偽造して評判を貶めようとしたという身に覚えのない嫌疑だった。A子さんがやってくるのを待ち構えていた杉田容疑者は、自身のYouTubeチャンネルのコンテンツにしようとカメラを回し出したのである。びっくりしたA子さんだったが、その場では気軽に考えていたという。
「全く身に覚えのない話でしたし、当時、コロアキもネタに窮していたので、私を利用して動画を1本捻り出したいのだと思いました。だから、彼には『出してもいいけどちゃんとモザイクかけてね』と言っていたんです。けれど……」
杉田容疑者はモザイクなしでA子さんの素顔を晒し、動画を配信した。カメラの前で怯えるA子さんの顔は、瞬く間にネット空間で拡散された。それからA子さんの生活は一気に暗転した。
「コロアキらとの活動は周囲に隠してやっていたのですが、バレてしまった。仕事の関係先から『あんな人間と付き合っている人とは仕事はできない』と毎日のように夜中までクレームの電話がかかってくるように。やっと掴んだ大きな仕事もキャンセルになってしまいました」
杉田容疑者には動画を下げてほしいと訴え続けたが、ブロックされて全く聞き入れてもらえなかった。
「自分のファンだからいいだろうという軽いノリなんです。暴走機関車のような人だから一度走り出したら止められない。結局、2本も同様の動画を上げられてしまいました」
初めて自分が晒される側に立って感じた恐怖は凄まじかった。このまま自分は社会的な信用を失い、二度と回復できないのかもしれない……。気づいたら、病院で処方されていた睡眠薬を酒と一緒に大量に摂取して風呂場で倒れていた。たまたま部屋を訪ねてきた母親が発見してくれたため一命を取り留めることができたが、入院後4日間も昏睡が続き入院したほど危険な状態だったという。
「目が覚めたら、母が泣き叫びながらビンタしてきました。私もそこでようやく冷静になって、自分のした愚かな行為を悔いたのです」
その後、家族の支えもあって、A子さんの心身は快復。仕事も少しずつ再開し、元の生活を取り戻しつつある。今回の杉田容疑者の逮捕を受け、
「あんな人間を支援し、調子づかせてしまった自分を、今は恥じています。晒されてしまったのも自業自得。彼のような破天荒な男に興味を持った理由には、社会への不満・鬱屈が溜まっていたこともあったと思う。型破りなやり方で突撃する彼を、ヒーローのように誤認してしまった自分がいた」
だが、そう振り返りながらも、「全ての私人逮捕系YouTuberが同列視して語られるべきではない」と語る。
「コロアキ以外にも数人の私人逮捕系YouTuberに会いましたが、ビジネス詐欺をやっているセミナーを徹底的に潰したり、執念で痴漢を捕まえたり、彼らなりの社会正義を貫いていると感じさせる人はちゃんといました。もちろん、世間の大半が彼らに対して『警察がやるべきことであり、社会秩序を乱している』と否定的な意見を持っていることは知っています。ただ、本気で痴漢を退治し、陰で警察から感謝されているような活動家がいるのは事実。仮にそれが再生回数稼ぎのビジネス目的であったとしても、社会貢献の一つして認められていいと思う」
自殺騒動を起こした数日後、もう二度とSNSなど見たくないと、Xのアカウントを削除した。だが、2日後には、「急に居なくなったが、どうしたんだろう?」と心配するフォロワーの投稿を目にして再開した。
「戻ると数人のフォロワーが『消えることないじゃん』って励ましてくれて、心が休まりました。SNS上だけの会わない関係でも、イラストや告白している持病のことで大事にしていきたい繋がりがあります。今後はルールを守りながら、SNSとは上手に付き合っていきたいです」
デイリー新潮編集部