神戸市北区のヤマト運輸の集配所で2020年10月、従業員2人が元パート社員の男に殺傷された事件で、犠牲になった広野真由美さん(当時47歳)の遺族4人が、ヤマト運輸を相手取り、計約1億1000万円の損害賠償を求めて神戸地裁に提訴した。
提訴は昨年12月27日付。
訴状などによると、パート社員だった筧真一受刑者(48)は20年10月6日、ヤマト運輸の「神戸北鈴蘭台センター」で広野さんを包丁で刺殺し、男性従業員(62)にもけがを負わせるなどした。
1審・神戸地裁は昨年2月の判決で、「被害者2人が結託して自分を辞めさせるよう仕向けたと思い込み、殺害を考えた」と指摘し、殺人罪などに問われた筧受刑者に懲役27年を言い渡した。2審・大阪高裁と最高裁も支持し、今年1月に判決が確定した。
遺族側は訴状で、事件前日に筧受刑者と男性従業員のトラブルを仲裁した広野さんがけがをする事案があり、上司がこれを理由に筧受刑者を退社させようと、広野さんに病院や警察へ行くよう指示したのに、筧受刑者には広野さんが積極的に被害を訴えているような言い方をしたと指摘。上司の言動が男の逆恨みを招いたのに、会社は被害を受けないよう配慮する注意義務を怠ったと主張している。
広野さんの夫は3月下旬、読売新聞の取材に書面で応じ、「筧受刑者の粗暴さは目立っていたはずで、事件が起きる前に何か対処できたのではないか」と訴えた。
ヤマト運輸は「係争中のため、コメントできない」としている。