最悪の事態をなぜ防げなかったのか――。
通園バスに取り残されて熱中症で死亡した河本千奈ちゃん(3)が通った静岡県牧之原市静波の認定こども園「川崎幼稚園」は7日、初めて記者会見で経緯を説明した。これに先立って行われた保護者説明会は混乱の末に中断になった。保護者の怒りは収まらず、疑念は解消されなかった。
記者会見では、園側が事故原因と考える四つのポイントが示された。〈1〉乗降車時の人数確認〈2〉複数人での車内点検〈3〉最終的な出欠情報の確認〈4〉登園するはずの園児がいない場合の保護者への連絡――。全てを怠った「四重のミス」があったと説明し、増田立義理事長(73)は「安全管理がきちんとできていなかった」と謝罪した。
事件当日、用事があった運転手の代理で増田理事長が急きょ通園バスを運転していた。増田理事長は「運転するのが不慣れだった。近年では数えるほどしか運転していない」と話し、「(到着後に)病院で待ち合わせの予定があり、焦りがあった」とも述べた。バスの窓がイラストで覆われて外から車内が見えにくい不備も認めた。
園では、園児を休みと勘違いしてバスに乗せないケースや、帰りの迎えが来るのに乗せてしまうような事案が繰り返されていたことも明かされた。
増田理事長は「千奈ちゃんの名前は把握していなかった」と述べた。車内で中身が空の千奈ちゃんの水筒が見つかったことについては、「本当に苦しい思いをさせ、かわいそうだ」と語った。増田理事長は後任が決まり次第、引責辞任する。園の存続は、近く実施される県の特別監査を踏まえて判断するとしている。
この日の午前、100人超が集まった保護者説明会は、思わぬ展開を見せた。出席者によると、増田理事長は冒頭の発言にとどまり、保護者から次々と投げかけられる疑問には、主に杉本智子副園長(58)が答えたという。
■保護者説明会で13人救急搬送
出席した千奈ちゃんの父親が「こんな園、廃園にしてください」と訴え、事件後の悲痛な思いを語ると、参加者の一人が悲鳴を上げて倒れた。伝染するように他の出席者も体調を崩し、保護者7人、園関係者6人の計13人が救急搬送された。静岡市消防局は「集団心理で、こういったことがまれにある」と指摘した。
説明会に参加した保護者は「友達関係も考えると、このまま卒園させたい。今後、朝の点呼など最後までしっかり確認してほしい」と祈るように語った。
■川崎幼稚園の記者会見のポイント
▽理事長は退任する。後任は未定
▽理事長がバスを運転するのは「近年では数えるほど」だった
▽担任は欠席と思い込んで保護者に連絡せず。副担任も最終的な出欠確認をしなかった
▽園の存続は、県による特別監査の後に判断する