富の象徴とされていたタワーマンション、通称タワマンですが、昨今、主な購入者層となっているのが、パワーカップルと呼ばれる共働き世帯。夫婦ともに高所得で、少し頑張って夢のようなタワマン暮らしを実現させているとか。しかし「住んでみて初めて知った……」と後悔をにじませる人も後を絶たないといいます。みていきましょう。
株式会社不動産経済研究所『超高層マンション動向 2022』によると、2022年以降に完成予定の超高層マンションは307棟(2022年3月時点)。そのうち首都圏では173棟と半数以上が予定されています。その内訳は東京23区で119棟、東京都下で10棟、神奈川県で23棟、埼玉県で9棟、千葉県で12棟。やはり東京都心部での増加が目立ちます。
超高層マンション、いわゆるタワマンといえば、東京都心と臨海部というのが定番でしたが、都心周辺部や地方中核都市でも、複合再開発プロジェクトとセットで計画されることが増え、以前ほどの特別感は薄れてきています。
それに伴い、タワマンの購入者は富裕層や外国人投資家から、一般の会社員層にまで裾野は広がっているといいます。とはいえ、タワマンというだけで周辺相場よりも1.2~1.5倍程度の坪単価といわれているなか、平均的な世帯では高嶺の花。パワーカップルといわれる、高所得同士の共働き夫婦がメインの購入者層だといいます。
パワーカップルの定義もさまざまですが、よくいわれているのは、夫婦それぞれが年収700万円以上で、世帯年収で1,400万円以上といったもの。マンション購入者の平均年齢である40代前半で年収700万円を超えている会社員、男性正社員で19.3%、女性正社員で3.5%程度。その組み合わせですから、一般の会社員層とはいえ、パワーカップルは特別な存在だといえるでしょう*。
*厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より算出
そんなパワーカップルが仮に1億円のタワマンを購入したとすると、どのような返済プランとなるでしょうか。頭金は物件価格の2割、2,000万円を用意し、残りはローンを活用。返済方式は元利均等で、年利は1%、返済期間は30年とします。
返済総額は9,263万1,998円で、利息分は1,263万1,998円。月々の返済は25万7,311円となります。ペアローンを利用すれば、1人の負担は月12万8,000円ほど。返済負担率は22%程度となり、さすがパワーカップル、無理のない返済プランで、億ションが買えることがわかりました。
適正な月返済額で億超えのタワマンが実現できるパワーカップル。しかし「想定以上にタワマン暮らしは金銭面で大変」という声が聞こえてきます。そこにあるのは、タワマンならではのランニングコストです。
分譲マンションの場合、月々のランニングコストとして通常、管理費と修繕積立金がかかります。
管理費には共用のエントランスや廊下などの清掃費、共用部の光熱費、エレベーターや自動ドアなどのメンテナンス費などが含まれ、主にマンションの共用部の管理に使われる費用です。タワマンの場合、ゲストルームやラウンジ、フィットネスジムなど、通常の分譲マンションにはない設備を売りにしているところが多く、その分管理費も高くなりがち。国土交通省『平成30年度マンション総合調査』によると、タワーマンションの平均管理費は月1万5,726円。通常の分譲マンションの1.4倍となっています。
そしてマンションの建物部分や設備などの修繕費を賄うために毎月徴収される修繕積立金。通常10~15年に1度、大規模修繕が実施され、一般的なマンションでは1戸あたり75万~100万円が相場。しかしタワーマンションの場合はその1.5~2倍程度が必要になるとされています。前出の国土交通省の調査によると、タワーマンションの平均積立修繕金は月1万2,305円でした。
さらに修繕積立金、タワマンの場合「値上げ」は避けられないとされています。新宿区『タワーマンション実態調査報告 書』によると、過半数のタワマンで「修繕積立金が足りていない」と回答。また6割のタワマンで「修繕積立金の値上げを行った」としています。その値上げ幅は、「20%以下」が27.3%、「21~50%」「50%以上」が36.4%と、5割以上の大幅値上げも現実的なのです。
じわりじわりと増えていくタワマンのランニングコスト。それでも修繕費が足りずに、不具合があるまま放置されるといったタワマンも見られるとか。そうなると、タワマンの魅力のひとつでもある資産性についても影響が出てきます。「タワマンは一生住むところではない」といった意見も聞こえてきますが、住んでみないと分からない誤算が関係しているようです。