キャッシュレス決済の普及が進み、支払いや引き落としでクレジットカードを頻繁に使う人も多いが、いっぽうで不正使用のトラブルが後を絶たない。今年6月に日本クレジット協会が公表した’21年のクレジットカード不正利用被害額の合計額は330億円(千万単位は四捨五入)で過去最高を更新。今年は400億円を上回ることも予想されるという。
「最近の詐欺被害で増えているのは、数百円~1千円程度という、本人が気づきにくい額を毎月不正利用するという手口です」
そう指摘するのは、オールアバウト「クレジットカード」ガイドの松岡賢治さんだ。
「高額な引き落としであれば、本人が気づいたり、カード会社から通知があるなどして不正利用の発覚につながりますが、コンビニでの買い物やランチ1回分程度の金額だと、明細をよくチェックしない人などは見過ごしてしまいがちなのです」(松岡さん・以下同)
その少額が積み重なると、被害額は数万円におよんでしまう。
「被害の大半は、カードの番号と有効期限、セキュリティコードの3つの重要な情報が盗まれてしまう『番号盗用』によるものです。盗んだ側が本人になりすましてカードを利用し、代金が後日請求される手口です。この番号盗用で今、最も行われているのが『フィッシング詐欺』です」
偽のサイトなどに誘導して個人情報を入力させる「フィッシング詐欺」の手口は年々巧妙になり、フィッシング対策協議会によると、今年7月には過去最多の10万7千948件もの報告があったという。
「クレジットカード会社などを装ったメールやSMS(ショートメッセージ)で、『支払いに問題が生じています』などと呼びかけ、掲載しているURLに誘導します。そこに情報を入力する項目が出てきて、カード番号などを入れてしまうと、それから定期的に引き落としされてしまうのです。偽サイトは本物のサイトの画面をコピーしているので、見分けがつきにくいものも多いです」
過去に支払いが滞っていたことなど、身に覚えがあるとついURLをクリックしてしまう。詐欺師たちはそこに付け込んでくる。
万一不正使用に気がついたら、カードの裏面に記載されているカード会社のサポートデスクに連絡して、すぐに利用を停止し、カード再発行の手続きをしよう。
「カードを第三者に不正使用されても、その金額は補償の対象になりますが、カード会社への届け出が、不正使用分の引き落とし日から60日を過ぎてしまうと補償が適用されなくなるので気をつけましょう」
詐欺に遭わないためには、怪しいメールを決して開かないこと。誤ってクリックした場合でも、絶対に個人情報は入力しないように。
「また、カードの利用明細はオンラインでこまめにチェックし、不審な履歴がないか確認しましょう」
キャッシュレスでの支払いも、自分の目で確かめることが大切だ。