長年にわたってみかじめ料を支払ってきた露天商組合が暴力団との決別を宣言し、再起を図ろうとしている。記者会見で暴力団組長にみかじめ料の返還を求めたことを明らかにした。組合のみかじめ料は暴力団の主要な資金源となってきた経緯があるが、支援する専門家は「過去がどうであれ、こちらから関係を絶つことが重要だ」と話す。
【写真で見る】社会に衝撃を与えた事件 「完全に関係を切って、信用される露天商として頑張っていきたい」。7月下旬、「愛知県東部街商協同組合」(同県豊橋市)が名古屋市内で開いた記者会見で、川合誠理事長(56)は強い決意を示した。

会見では、みかじめ料を支払ってきた特定抗争指定暴力団山口組平井一家(豊橋市)の薄葉暢洋(のぶひろ)総裁に対し、1000万円の返還を求める文書を送付したことや、弁護士らでつくる第三者委員会を設置する方針を明らかにした。第三者委は今月10日の第1回会合で委員が選任された。今後、組合員らへの聞き取りでみかじめ料を支払ってきた経緯などを調査し、組織改革や今後の運営方法について提言する。 決別宣言のきっかけは、金銭の支払いがあったとして、県暴力団排除条例に基づき組合名を公表されたことだ。組合は平井一家に利益供与しないよう同条例に基づく勧告を受けていたにもかかわらず、2021年に500万円を支払ったことから、行政処分として今年2月に県公安委員会から組合名を公表された。 組合は県内に6支部あり、主に三河地方の20~70代の約30人の露天商が所属。祭りなどで屋台を出しているが、公表の影響で主に自治体が主催する祭りへの出店を断られ、組合員の生活は困窮しているという。 別の団体を立ち上げて祭りに出店することもできたが、それでは暴力団との決別は図れないと判断。県警の助言を受け、第三者委の設置を決め、組織を根本から立て直すことを決めた。山口幹夫副理事長(60)は「けじめをつけたい。世間の理解を得て、まっとうにやっていきたい」と力を込める。 みかじめ料はどのように支払われてきたのか。組合関係者によると、みかじめ料には祭りごとに支払う「場所代」と月々の組合費の2種類があり、支部ごとにとりまとめて納めていた。県警によると、みかじめ料の支払いは30年以上前から始まり、合わせて月1000万円以上払っていた時期もあり、平井一家の主な活動資金になっていた。 みかじめ料について、40代の組合員は「その金額を払っておけば面倒なことはないんじゃないかという感覚だった」と振り返る。60代の組合員も「僕らがこの世界に入った時からあったし、テナント料みたいなものだと思っていた」と話す。一般の組合員は暴力団との付き合いはなく、半ば慣習的に支払ってきたという。 今月5日に愛知県岡崎市であった「岡崎城下家康公夏まつり第75回花火大会」(同市など主催)。組合の参加が試験的に認められ、3会場に計10店が並んだ。会場には多くの見物客が訪れ、焼きそばやいか焼き、鶏の唐揚げなどを販売する組合の屋台の前に長蛇の列ができた。県警捜査員が営業を見守ったほか、出店に伴う収支は第三者委に報告され、チェックを受けるという。 ある組合員は「これまでも組合員の多くは暴力団と関係を切ってちゃんとした組織としてやっていくことが一番と考えていたが、刃向かってまでやろうという人はいなかった。(公表が)いいきっかけになったのではないか」と明かす。 組合を支援する元日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会副委員長の宇都木寧(やすし)弁護士は会見で「露天商は非常に弱い立場。暴力団の恐怖と闘っていくのは大きな決意が必要。組合員の勇気、決意を理解してほしい」と呼びかけた。 県警は、組合の取り組みを注意深く見守り、組合と暴力団の関係が解消されたかを確認していく。暴力団排除条例 暴力団を市民生活や企業活動から締め出す目的で、2011年10月までに全都道府県で施行された。愛知県の条例は22年6月に改正され、名古屋市と豊橋市の一部区域でのみかじめ料の供与が禁止行為に加わった。罰則は1年以下の懲役または50万円以下の罰金。これまでは用心棒代としての利益供与が禁止されていた。
「完全に関係を切って、信用される露天商として頑張っていきたい」。7月下旬、「愛知県東部街商協同組合」(同県豊橋市)が名古屋市内で開いた記者会見で、川合誠理事長(56)は強い決意を示した。
会見では、みかじめ料を支払ってきた特定抗争指定暴力団山口組平井一家(豊橋市)の薄葉暢洋(のぶひろ)総裁に対し、1000万円の返還を求める文書を送付したことや、弁護士らでつくる第三者委員会を設置する方針を明らかにした。第三者委は今月10日の第1回会合で委員が選任された。今後、組合員らへの聞き取りでみかじめ料を支払ってきた経緯などを調査し、組織改革や今後の運営方法について提言する。
決別宣言のきっかけは、金銭の支払いがあったとして、県暴力団排除条例に基づき組合名を公表されたことだ。組合は平井一家に利益供与しないよう同条例に基づく勧告を受けていたにもかかわらず、2021年に500万円を支払ったことから、行政処分として今年2月に県公安委員会から組合名を公表された。
組合は県内に6支部あり、主に三河地方の20~70代の約30人の露天商が所属。祭りなどで屋台を出しているが、公表の影響で主に自治体が主催する祭りへの出店を断られ、組合員の生活は困窮しているという。
別の団体を立ち上げて祭りに出店することもできたが、それでは暴力団との決別は図れないと判断。県警の助言を受け、第三者委の設置を決め、組織を根本から立て直すことを決めた。山口幹夫副理事長(60)は「けじめをつけたい。世間の理解を得て、まっとうにやっていきたい」と力を込める。
みかじめ料はどのように支払われてきたのか。組合関係者によると、みかじめ料には祭りごとに支払う「場所代」と月々の組合費の2種類があり、支部ごとにとりまとめて納めていた。県警によると、みかじめ料の支払いは30年以上前から始まり、合わせて月1000万円以上払っていた時期もあり、平井一家の主な活動資金になっていた。
みかじめ料について、40代の組合員は「その金額を払っておけば面倒なことはないんじゃないかという感覚だった」と振り返る。60代の組合員も「僕らがこの世界に入った時からあったし、テナント料みたいなものだと思っていた」と話す。一般の組合員は暴力団との付き合いはなく、半ば慣習的に支払ってきたという。
今月5日に愛知県岡崎市であった「岡崎城下家康公夏まつり第75回花火大会」(同市など主催)。組合の参加が試験的に認められ、3会場に計10店が並んだ。会場には多くの見物客が訪れ、焼きそばやいか焼き、鶏の唐揚げなどを販売する組合の屋台の前に長蛇の列ができた。県警捜査員が営業を見守ったほか、出店に伴う収支は第三者委に報告され、チェックを受けるという。
ある組合員は「これまでも組合員の多くは暴力団と関係を切ってちゃんとした組織としてやっていくことが一番と考えていたが、刃向かってまでやろうという人はいなかった。(公表が)いいきっかけになったのではないか」と明かす。
組合を支援する元日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会副委員長の宇都木寧(やすし)弁護士は会見で「露天商は非常に弱い立場。暴力団の恐怖と闘っていくのは大きな決意が必要。組合員の勇気、決意を理解してほしい」と呼びかけた。
県警は、組合の取り組みを注意深く見守り、組合と暴力団の関係が解消されたかを確認していく。
暴力団排除条例
暴力団を市民生活や企業活動から締め出す目的で、2011年10月までに全都道府県で施行された。愛知県の条例は22年6月に改正され、名古屋市と豊橋市の一部区域でのみかじめ料の供与が禁止行為に加わった。罰則は1年以下の懲役または50万円以下の罰金。これまでは用心棒代としての利益供与が禁止されていた。