栃木県に「特撮の聖地」と呼ばれる場所があるのをご存知だろうか。数々の特撮作品で爆破シーンが撮影された岩船山採石場跡地である。近頃、この“聖地”で実際に爆破を体験するツアーがマニアの間で大盛況なのだという。
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【写真を見る】結婚30年の熟年夫婦が「アムロ&セイラ」にコスプレ 背後には豪快な火柱が 高さ10メートルに届かんとする紅蓮の火柱がたちあがる。耳をつんざく爆音と思わずよろけそうになる爆風――。 8月最後の土曜日、栃木県・岩船山採石場跡地で行われていたのは、読売旅行が主催する「爆破体験ツアー」だ。

岩船山と聞いてピンとくる人は少ないだろうが、特撮マニアの間では知らぬものはいない特別な場所。「ゴレンジャー」などの戦隊ものや「西部警察」の爆破シーンに何度も利用されてきたロケ地なのだ。読売旅行の佐々木浩二課長によると、「岩船山の爆破体験をツアーに組みこむという提案を受けた時、コレだと思いました。アニメ作品の“聖地巡礼”がはやっている昨今、その流れに乗って特撮マニアがどっと押し寄せるだろう、と」映画「マトリックス」風のスタイルで決めた女性たちのバックには高さ10メートルに届かんとする紅蓮の火柱がたちあがるあっという間に満席に しかし6月に開始したツアー募集は当初、動きが鈍かった。ウクライナ情勢もあり、爆破が売り物のツアーを積極的に宣伝・告知できなかったからだ。ところが1本のツイッター投稿がきっかけで、あっという間にツアーは満席。9月開催分も満席となり、以降も月1回の開催が予定されている。 今回第1回のツアーの参加者は約80人。ほとんどの方がキャリーバッグを持っている。聞けば「コスプレ衣装が入ってます」。 マトリックス風コスプレの女性3人組に話を聞いてみると、インスタ映えする写真が撮りたくて東京から参加したのだという。「爆破はすごい迫力。熱風で背中が熱かった」とおおはしゃぎだった。「結婚30年の記念で」 最高齢66歳の女性は茨城・取手から。「『西部警察』や『仮面ライダー』の世界を体験したくてやってきました。バックの岩山は遠い昔にテレビで見覚えがある風景で懐かしい」 とご満悦の様子。 今回のツアーで一番気合が入っていたのは「ガンダム」のキャラクターに扮した横浜の熟年夫婦だろうか。ウール素材の分厚い衣装に大汗をかきながら、「結婚30年の記念で参加しました。今は遠くで暮らす子供たちに元気でやっている写真を送りたくて」 とのこと。 おそらく人生で初めて経験する火柱と爆音と爆風は、参加者にとって、この夏最後の特別な思い出になったに違いない。撮影・西村 純「週刊新潮」2022年9月15日号 掲載
高さ10メートルに届かんとする紅蓮の火柱がたちあがる。耳をつんざく爆音と思わずよろけそうになる爆風――。
8月最後の土曜日、栃木県・岩船山採石場跡地で行われていたのは、読売旅行が主催する「爆破体験ツアー」だ。
岩船山と聞いてピンとくる人は少ないだろうが、特撮マニアの間では知らぬものはいない特別な場所。「ゴレンジャー」などの戦隊ものや「西部警察」の爆破シーンに何度も利用されてきたロケ地なのだ。読売旅行の佐々木浩二課長によると、
「岩船山の爆破体験をツアーに組みこむという提案を受けた時、コレだと思いました。アニメ作品の“聖地巡礼”がはやっている昨今、その流れに乗って特撮マニアがどっと押し寄せるだろう、と」
しかし6月に開始したツアー募集は当初、動きが鈍かった。ウクライナ情勢もあり、爆破が売り物のツアーを積極的に宣伝・告知できなかったからだ。ところが1本のツイッター投稿がきっかけで、あっという間にツアーは満席。9月開催分も満席となり、以降も月1回の開催が予定されている。
今回第1回のツアーの参加者は約80人。ほとんどの方がキャリーバッグを持っている。聞けば「コスプレ衣装が入ってます」。
マトリックス風コスプレの女性3人組に話を聞いてみると、インスタ映えする写真が撮りたくて東京から参加したのだという。
「爆破はすごい迫力。熱風で背中が熱かった」とおおはしゃぎだった。
最高齢66歳の女性は茨城・取手から。
「『西部警察』や『仮面ライダー』の世界を体験したくてやってきました。バックの岩山は遠い昔にテレビで見覚えがある風景で懐かしい」
とご満悦の様子。
今回のツアーで一番気合が入っていたのは「ガンダム」のキャラクターに扮した横浜の熟年夫婦だろうか。ウール素材の分厚い衣装に大汗をかきながら、
「結婚30年の記念で参加しました。今は遠くで暮らす子供たちに元気でやっている写真を送りたくて」
とのこと。
おそらく人生で初めて経験する火柱と爆音と爆風は、参加者にとって、この夏最後の特別な思い出になったに違いない。
撮影・西村 純
「週刊新潮」2022年9月15日号 掲載