2022年9月16日、名古屋地裁で詐欺罪に問われていた男に判決が下った。河野孝典(47)。累犯前科がある結婚詐欺師で、懲役4年6カ月の実刑だった。河野は「白血病のピアニスト」を名乗り、交際中の女性から治療費名目で計777万3000円を騙し取った罪に問われていた。
【写真】「白血病のピアニスト」を名乗っていた結婚詐欺師・河野孝典(47)音楽系アプリで褒めちぎる「河野に騙し取られた金額は、実際には2000万円を超えています。しかし、私が被った被害を、単なるお金の被害だと捉えないでいただきたい。河野のしたことは、意思を持った一人の人間を私利私欲のため、モノのように使い捨てる行為です。お金がなくなれば、性のはけ口として、ぞんざいに扱われました。

私はこの事件によって生きる希望さえ失い、何度も自殺未遂をしました。河野の行為は人を殺しかねない行為です。河野の行為がいかに残酷なものであって、私が受けた精神的苦痛がどれほど大きいのか、少しでも理解していただきたいと思います」 こう話すのは、この事件の被害者であるA子さん(29)である。A子さんと河野は2018年3月、音楽系アプリを通じて知り合った。A子さんの歌の投稿を聴いた河野が、「才能がある」「出会ったことのない特別な歌声だ」などと褒めちぎり、「自分のライブ配信で紹介したい」などと言って、接触してきたのがきっかけだった。交際中のLINEのやり取り(A子さん提供)すでに2人の女性が同じ手口で被害に その後、A子さんは河野とツイッターでも交流するようになった。ところが河野は2018年11月、突然姿を消してしまう。実はこの時期、河野は懲役1年6カ月の実刑判決を受け、刑務所に行くことになったからだった。別の2人の女性に対し、「自分は白血病で、未承認薬の治療費が払えない」などと騙し、1人を自己破産に追い込み、もう1人から130万円を騙し取ったことが理由だ。 2020年12月、仮釈放された河野はさっそくツイッターでA子さんに連絡を取った。「白血病の治療で連絡ができなかったが、A子さんの投稿が励みとなり、寛解状態まで回復した」とのことだった。これ以降、河野はA子さんに結婚を前提とした交際がしたいと迫るようになり、デタラメな生い立ちを話し、「自分はプロの音楽家だから、一般の人が稼ぐことができないほどの収入がある」などと言って、巧みに関心を引き寄せた。詐欺師の常套手段「不幸な生い立ち話」で同情を引いて「自分は捨て子だった。神戸の病院前で拾われ、児童養護施設で育った。11歳のとき(実際は19歳)、阪神大震災で施設の家族たちが死ぬのを目の当たりにした。ショックでPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、精神治療も兼ねて沖縄の施設に移されて育った。 その後、里親に出されたが、暴力を振るわれて警察に保護された。中学生から一人暮らしを始め、施設で共に育った彼女が拉致されそうになり、犯人と闘って殴り殺してしまい、少年院に入ったこともある。東京音楽大学には特待生で入学した。渡米して海外の音楽を学んだ。ようやく音楽で生計を立てられるようになったら、30歳で白血病を発症した。沖縄で治療を担当してくれた先生が名古屋に移ることになったので、自分も仕事の拠点を名古屋に移すことにした」 不幸な生い立ちを話して同情を引こうとするのは、詐欺師の常套手段である。A子さんは以前に白血病である交際相手の父親を介助した経験があり、その壮絶な闘病生活を知っていたことから、たまたま河野の話を信じる土壌があったのだ。A子さんは河野とLINEを交換し、年齢を10歳サバ読んだ偽りの生年月日を教えられた。白血病患者をよそおい「命を利用した“脅迫”」 河野は2021年1月30日に前刑を終了し、同年2月14日に初めてA子さんに会った。交際を開始して1週間後、「財布や通帳が入ったカバンを落とした」と言って、A子さんから4万円を借りた。これがA子さんからの最初の借金になった。 その後、財布は見つかったが、「通帳に入っていた3200万円を不正に引き出されていた。3000万円は盗難保険で返ってくるが、ピアノのローンと所得税の支払いが間に合わないので助けてほしい」と言われ、A子さんは菓子店を開くという夢の実現のために貯めていた預金からその費用約500万円を立て替えた。 5月からは一緒に住むようになり、河野はこの頃から本格的に体調不良を訴えてくるようになった。「血尿が出た。体中が痛い。だるい。病院に行きたい。やっとの思いで寛解状態になったのに、このままでは再発してしまう。体に合う未承認薬を打たなければ死んでしまう。金が返ってくれば、すぐに返せるので治療費を貸してほしい」 白血病患者の演技は、日を追うごとにどんどんエスカレートしていった。「暴れたり、身体や頭をきむしったり、腕や足を赤く腫れさせて見せたり、フラフラとおぼつかない足取りで歩いたり、嘔吐物でベッドを汚したり、ボロボロと涙を流したり、食欲がないとか、検査結果で異常が見られたとか、様々な演技をして治療費を貸してほしいと迫ってきました。『苦しいよ、助けて、死にたくない』『一緒に幸せになりたいのにどうして……』などと言って、私が金を用意できなければ、大切な人が死んでしまうかもしれないという、命を利用した“脅迫”を受けていました」(A子さん)被害女性の母親や姉もだまされた迫真の演技 A子さんは預金を使い果たし、消費者金融からも借金した。A子さんが金銭に困窮し、「母や姉に相談する」と言うと、「結婚を反対されるかもしれないからやめて」と言いながら、「1セット27万円の未承認薬に切り替えることになった。金を貸してほしい」などと言って、さらにA子さんを追い込んだ。 7月にはA子さんの母親や姉を交えて話し合いをすることになり、河野はここでも迫真の演技でA子さんの母親や姉を欺いた。「財布の盗難に遭い、主に生活費のために同棲することになった。税金の支払いと白血病の治療費としてA子さんから金を借りているが、保険が下りたら全額返す。A子さんのことは私が必ず幸せにします。仕事面の金銭の動きを一任している社労士を代理人に立て、A子さんの口座に全額振り込むように手続きを進めさせている」コロナに感染、心配で救急車を呼ぼうとしたが… こうしてA子さんの母親や姉からも援助を受けることになった。金を受け取った河野はゲイバーやガールズバー、おっぱいパブなどで散財していた。こうした夜遊びがたたったのか、8月に河野は新型コロナウィルスに感染した。「このとき、私は白血病という基礎疾患のある河野のことが心配でたまらず、救急車を呼ぼうとしたのですが、河野は嫌だ、嫌だと泣きわめいて、私から電話を取り上げてまで、私が119番通報をすることを阻止しました。 今考えれば、河野は救急車を呼ばれたら、白血病のウソがばれて、私からお金を取れなくなってしまうことから、必死に通報を阻止していたのでしょう。その数日後、私も新型コロナウィルスに感染しましたが、そんな私を置いて、急に家から出て行ってしまいました」(A子さん) 11月になり、河野は「退院した」と言って帰ってきた。だが、この日からまた治療費をねだられ、「コロナのせいで身体が弱ってしまったから、さらに薬の濃度を高めないと危険だ」などと話し、A子さんには休日に副業することを提案した。A子さんは治療費と生活費の捻出のため、働きづめに働いた。その間、河野は「身体が辛いから働けない」などと言って、コンビニで好きなものを買って食べながら一日中家でゲームをしていた。 A子さんは、次第に不信感を募らせていく――。結婚詐欺師“白血病のピアニスト”に懲役4年6カ月 「保釈金300万円」を用意した女性の正体とは へ続く(諸岡 宏樹)
「河野に騙し取られた金額は、実際には2000万円を超えています。しかし、私が被った被害を、単なるお金の被害だと捉えないでいただきたい。河野のしたことは、意思を持った一人の人間を私利私欲のため、モノのように使い捨てる行為です。お金がなくなれば、性のはけ口として、ぞんざいに扱われました。
私はこの事件によって生きる希望さえ失い、何度も自殺未遂をしました。河野の行為は人を殺しかねない行為です。河野の行為がいかに残酷なものであって、私が受けた精神的苦痛がどれほど大きいのか、少しでも理解していただきたいと思います」
こう話すのは、この事件の被害者であるA子さん(29)である。A子さんと河野は2018年3月、音楽系アプリを通じて知り合った。A子さんの歌の投稿を聴いた河野が、「才能がある」「出会ったことのない特別な歌声だ」などと褒めちぎり、「自分のライブ配信で紹介したい」などと言って、接触してきたのがきっかけだった。
交際中のLINEのやり取り(A子さん提供)
その後、A子さんは河野とツイッターでも交流するようになった。ところが河野は2018年11月、突然姿を消してしまう。実はこの時期、河野は懲役1年6カ月の実刑判決を受け、刑務所に行くことになったからだった。別の2人の女性に対し、「自分は白血病で、未承認薬の治療費が払えない」などと騙し、1人を自己破産に追い込み、もう1人から130万円を騙し取ったことが理由だ。
2020年12月、仮釈放された河野はさっそくツイッターでA子さんに連絡を取った。「白血病の治療で連絡ができなかったが、A子さんの投稿が励みとなり、寛解状態まで回復した」とのことだった。これ以降、河野はA子さんに結婚を前提とした交際がしたいと迫るようになり、デタラメな生い立ちを話し、「自分はプロの音楽家だから、一般の人が稼ぐことができないほどの収入がある」などと言って、巧みに関心を引き寄せた。詐欺師の常套手段「不幸な生い立ち話」で同情を引いて「自分は捨て子だった。神戸の病院前で拾われ、児童養護施設で育った。11歳のとき(実際は19歳)、阪神大震災で施設の家族たちが死ぬのを目の当たりにした。ショックでPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、精神治療も兼ねて沖縄の施設に移されて育った。 その後、里親に出されたが、暴力を振るわれて警察に保護された。中学生から一人暮らしを始め、施設で共に育った彼女が拉致されそうになり、犯人と闘って殴り殺してしまい、少年院に入ったこともある。東京音楽大学には特待生で入学した。渡米して海外の音楽を学んだ。ようやく音楽で生計を立てられるようになったら、30歳で白血病を発症した。沖縄で治療を担当してくれた先生が名古屋に移ることになったので、自分も仕事の拠点を名古屋に移すことにした」 不幸な生い立ちを話して同情を引こうとするのは、詐欺師の常套手段である。A子さんは以前に白血病である交際相手の父親を介助した経験があり、その壮絶な闘病生活を知っていたことから、たまたま河野の話を信じる土壌があったのだ。A子さんは河野とLINEを交換し、年齢を10歳サバ読んだ偽りの生年月日を教えられた。白血病患者をよそおい「命を利用した“脅迫”」 河野は2021年1月30日に前刑を終了し、同年2月14日に初めてA子さんに会った。交際を開始して1週間後、「財布や通帳が入ったカバンを落とした」と言って、A子さんから4万円を借りた。これがA子さんからの最初の借金になった。 その後、財布は見つかったが、「通帳に入っていた3200万円を不正に引き出されていた。3000万円は盗難保険で返ってくるが、ピアノのローンと所得税の支払いが間に合わないので助けてほしい」と言われ、A子さんは菓子店を開くという夢の実現のために貯めていた預金からその費用約500万円を立て替えた。 5月からは一緒に住むようになり、河野はこの頃から本格的に体調不良を訴えてくるようになった。「血尿が出た。体中が痛い。だるい。病院に行きたい。やっとの思いで寛解状態になったのに、このままでは再発してしまう。体に合う未承認薬を打たなければ死んでしまう。金が返ってくれば、すぐに返せるので治療費を貸してほしい」 白血病患者の演技は、日を追うごとにどんどんエスカレートしていった。「暴れたり、身体や頭をきむしったり、腕や足を赤く腫れさせて見せたり、フラフラとおぼつかない足取りで歩いたり、嘔吐物でベッドを汚したり、ボロボロと涙を流したり、食欲がないとか、検査結果で異常が見られたとか、様々な演技をして治療費を貸してほしいと迫ってきました。『苦しいよ、助けて、死にたくない』『一緒に幸せになりたいのにどうして……』などと言って、私が金を用意できなければ、大切な人が死んでしまうかもしれないという、命を利用した“脅迫”を受けていました」(A子さん)被害女性の母親や姉もだまされた迫真の演技 A子さんは預金を使い果たし、消費者金融からも借金した。A子さんが金銭に困窮し、「母や姉に相談する」と言うと、「結婚を反対されるかもしれないからやめて」と言いながら、「1セット27万円の未承認薬に切り替えることになった。金を貸してほしい」などと言って、さらにA子さんを追い込んだ。 7月にはA子さんの母親や姉を交えて話し合いをすることになり、河野はここでも迫真の演技でA子さんの母親や姉を欺いた。「財布の盗難に遭い、主に生活費のために同棲することになった。税金の支払いと白血病の治療費としてA子さんから金を借りているが、保険が下りたら全額返す。A子さんのことは私が必ず幸せにします。仕事面の金銭の動きを一任している社労士を代理人に立て、A子さんの口座に全額振り込むように手続きを進めさせている」コロナに感染、心配で救急車を呼ぼうとしたが… こうしてA子さんの母親や姉からも援助を受けることになった。金を受け取った河野はゲイバーやガールズバー、おっぱいパブなどで散財していた。こうした夜遊びがたたったのか、8月に河野は新型コロナウィルスに感染した。「このとき、私は白血病という基礎疾患のある河野のことが心配でたまらず、救急車を呼ぼうとしたのですが、河野は嫌だ、嫌だと泣きわめいて、私から電話を取り上げてまで、私が119番通報をすることを阻止しました。 今考えれば、河野は救急車を呼ばれたら、白血病のウソがばれて、私からお金を取れなくなってしまうことから、必死に通報を阻止していたのでしょう。その数日後、私も新型コロナウィルスに感染しましたが、そんな私を置いて、急に家から出て行ってしまいました」(A子さん) 11月になり、河野は「退院した」と言って帰ってきた。だが、この日からまた治療費をねだられ、「コロナのせいで身体が弱ってしまったから、さらに薬の濃度を高めないと危険だ」などと話し、A子さんには休日に副業することを提案した。A子さんは治療費と生活費の捻出のため、働きづめに働いた。その間、河野は「身体が辛いから働けない」などと言って、コンビニで好きなものを買って食べながら一日中家でゲームをしていた。 A子さんは、次第に不信感を募らせていく――。結婚詐欺師“白血病のピアニスト”に懲役4年6カ月 「保釈金300万円」を用意した女性の正体とは へ続く(諸岡 宏樹)
2020年12月、仮釈放された河野はさっそくツイッターでA子さんに連絡を取った。「白血病の治療で連絡ができなかったが、A子さんの投稿が励みとなり、寛解状態まで回復した」とのことだった。これ以降、河野はA子さんに結婚を前提とした交際がしたいと迫るようになり、デタラメな生い立ちを話し、「自分はプロの音楽家だから、一般の人が稼ぐことができないほどの収入がある」などと言って、巧みに関心を引き寄せた。
「自分は捨て子だった。神戸の病院前で拾われ、児童養護施設で育った。11歳のとき(実際は19歳)、阪神大震災で施設の家族たちが死ぬのを目の当たりにした。ショックでPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、精神治療も兼ねて沖縄の施設に移されて育った。
その後、里親に出されたが、暴力を振るわれて警察に保護された。中学生から一人暮らしを始め、施設で共に育った彼女が拉致されそうになり、犯人と闘って殴り殺してしまい、少年院に入ったこともある。東京音楽大学には特待生で入学した。渡米して海外の音楽を学んだ。ようやく音楽で生計を立てられるようになったら、30歳で白血病を発症した。沖縄で治療を担当してくれた先生が名古屋に移ることになったので、自分も仕事の拠点を名古屋に移すことにした」
不幸な生い立ちを話して同情を引こうとするのは、詐欺師の常套手段である。A子さんは以前に白血病である交際相手の父親を介助した経験があり、その壮絶な闘病生活を知っていたことから、たまたま河野の話を信じる土壌があったのだ。A子さんは河野とLINEを交換し、年齢を10歳サバ読んだ偽りの生年月日を教えられた。
白血病患者をよそおい「命を利用した“脅迫”」 河野は2021年1月30日に前刑を終了し、同年2月14日に初めてA子さんに会った。交際を開始して1週間後、「財布や通帳が入ったカバンを落とした」と言って、A子さんから4万円を借りた。これがA子さんからの最初の借金になった。 その後、財布は見つかったが、「通帳に入っていた3200万円を不正に引き出されていた。3000万円は盗難保険で返ってくるが、ピアノのローンと所得税の支払いが間に合わないので助けてほしい」と言われ、A子さんは菓子店を開くという夢の実現のために貯めていた預金からその費用約500万円を立て替えた。 5月からは一緒に住むようになり、河野はこの頃から本格的に体調不良を訴えてくるようになった。「血尿が出た。体中が痛い。だるい。病院に行きたい。やっとの思いで寛解状態になったのに、このままでは再発してしまう。体に合う未承認薬を打たなければ死んでしまう。金が返ってくれば、すぐに返せるので治療費を貸してほしい」 白血病患者の演技は、日を追うごとにどんどんエスカレートしていった。「暴れたり、身体や頭をきむしったり、腕や足を赤く腫れさせて見せたり、フラフラとおぼつかない足取りで歩いたり、嘔吐物でベッドを汚したり、ボロボロと涙を流したり、食欲がないとか、検査結果で異常が見られたとか、様々な演技をして治療費を貸してほしいと迫ってきました。『苦しいよ、助けて、死にたくない』『一緒に幸せになりたいのにどうして……』などと言って、私が金を用意できなければ、大切な人が死んでしまうかもしれないという、命を利用した“脅迫”を受けていました」(A子さん)被害女性の母親や姉もだまされた迫真の演技 A子さんは預金を使い果たし、消費者金融からも借金した。A子さんが金銭に困窮し、「母や姉に相談する」と言うと、「結婚を反対されるかもしれないからやめて」と言いながら、「1セット27万円の未承認薬に切り替えることになった。金を貸してほしい」などと言って、さらにA子さんを追い込んだ。 7月にはA子さんの母親や姉を交えて話し合いをすることになり、河野はここでも迫真の演技でA子さんの母親や姉を欺いた。「財布の盗難に遭い、主に生活費のために同棲することになった。税金の支払いと白血病の治療費としてA子さんから金を借りているが、保険が下りたら全額返す。A子さんのことは私が必ず幸せにします。仕事面の金銭の動きを一任している社労士を代理人に立て、A子さんの口座に全額振り込むように手続きを進めさせている」コロナに感染、心配で救急車を呼ぼうとしたが… こうしてA子さんの母親や姉からも援助を受けることになった。金を受け取った河野はゲイバーやガールズバー、おっぱいパブなどで散財していた。こうした夜遊びがたたったのか、8月に河野は新型コロナウィルスに感染した。「このとき、私は白血病という基礎疾患のある河野のことが心配でたまらず、救急車を呼ぼうとしたのですが、河野は嫌だ、嫌だと泣きわめいて、私から電話を取り上げてまで、私が119番通報をすることを阻止しました。 今考えれば、河野は救急車を呼ばれたら、白血病のウソがばれて、私からお金を取れなくなってしまうことから、必死に通報を阻止していたのでしょう。その数日後、私も新型コロナウィルスに感染しましたが、そんな私を置いて、急に家から出て行ってしまいました」(A子さん) 11月になり、河野は「退院した」と言って帰ってきた。だが、この日からまた治療費をねだられ、「コロナのせいで身体が弱ってしまったから、さらに薬の濃度を高めないと危険だ」などと話し、A子さんには休日に副業することを提案した。A子さんは治療費と生活費の捻出のため、働きづめに働いた。その間、河野は「身体が辛いから働けない」などと言って、コンビニで好きなものを買って食べながら一日中家でゲームをしていた。 A子さんは、次第に不信感を募らせていく――。結婚詐欺師“白血病のピアニスト”に懲役4年6カ月 「保釈金300万円」を用意した女性の正体とは へ続く(諸岡 宏樹)
河野は2021年1月30日に前刑を終了し、同年2月14日に初めてA子さんに会った。交際を開始して1週間後、「財布や通帳が入ったカバンを落とした」と言って、A子さんから4万円を借りた。これがA子さんからの最初の借金になった。
その後、財布は見つかったが、「通帳に入っていた3200万円を不正に引き出されていた。3000万円は盗難保険で返ってくるが、ピアノのローンと所得税の支払いが間に合わないので助けてほしい」と言われ、A子さんは菓子店を開くという夢の実現のために貯めていた預金からその費用約500万円を立て替えた。
5月からは一緒に住むようになり、河野はこの頃から本格的に体調不良を訴えてくるようになった。
「血尿が出た。体中が痛い。だるい。病院に行きたい。やっとの思いで寛解状態になったのに、このままでは再発してしまう。体に合う未承認薬を打たなければ死んでしまう。金が返ってくれば、すぐに返せるので治療費を貸してほしい」
白血病患者の演技は、日を追うごとにどんどんエスカレートしていった。
「暴れたり、身体や頭をきむしったり、腕や足を赤く腫れさせて見せたり、フラフラとおぼつかない足取りで歩いたり、嘔吐物でベッドを汚したり、ボロボロと涙を流したり、食欲がないとか、検査結果で異常が見られたとか、様々な演技をして治療費を貸してほしいと迫ってきました。『苦しいよ、助けて、死にたくない』『一緒に幸せになりたいのにどうして……』などと言って、私が金を用意できなければ、大切な人が死んでしまうかもしれないという、命を利用した“脅迫”を受けていました」(A子さん)
A子さんは預金を使い果たし、消費者金融からも借金した。A子さんが金銭に困窮し、「母や姉に相談する」と言うと、「結婚を反対されるかもしれないからやめて」と言いながら、「1セット27万円の未承認薬に切り替えることになった。金を貸してほしい」などと言って、さらにA子さんを追い込んだ。
7月にはA子さんの母親や姉を交えて話し合いをすることになり、河野はここでも迫真の演技でA子さんの母親や姉を欺いた。
「財布の盗難に遭い、主に生活費のために同棲することになった。税金の支払いと白血病の治療費としてA子さんから金を借りているが、保険が下りたら全額返す。A子さんのことは私が必ず幸せにします。仕事面の金銭の動きを一任している社労士を代理人に立て、A子さんの口座に全額振り込むように手続きを進めさせている」
コロナに感染、心配で救急車を呼ぼうとしたが… こうしてA子さんの母親や姉からも援助を受けることになった。金を受け取った河野はゲイバーやガールズバー、おっぱいパブなどで散財していた。こうした夜遊びがたたったのか、8月に河野は新型コロナウィルスに感染した。「このとき、私は白血病という基礎疾患のある河野のことが心配でたまらず、救急車を呼ぼうとしたのですが、河野は嫌だ、嫌だと泣きわめいて、私から電話を取り上げてまで、私が119番通報をすることを阻止しました。 今考えれば、河野は救急車を呼ばれたら、白血病のウソがばれて、私からお金を取れなくなってしまうことから、必死に通報を阻止していたのでしょう。その数日後、私も新型コロナウィルスに感染しましたが、そんな私を置いて、急に家から出て行ってしまいました」(A子さん) 11月になり、河野は「退院した」と言って帰ってきた。だが、この日からまた治療費をねだられ、「コロナのせいで身体が弱ってしまったから、さらに薬の濃度を高めないと危険だ」などと話し、A子さんには休日に副業することを提案した。A子さんは治療費と生活費の捻出のため、働きづめに働いた。その間、河野は「身体が辛いから働けない」などと言って、コンビニで好きなものを買って食べながら一日中家でゲームをしていた。 A子さんは、次第に不信感を募らせていく――。結婚詐欺師“白血病のピアニスト”に懲役4年6カ月 「保釈金300万円」を用意した女性の正体とは へ続く(諸岡 宏樹)
こうしてA子さんの母親や姉からも援助を受けることになった。金を受け取った河野はゲイバーやガールズバー、おっぱいパブなどで散財していた。こうした夜遊びがたたったのか、8月に河野は新型コロナウィルスに感染した。
「このとき、私は白血病という基礎疾患のある河野のことが心配でたまらず、救急車を呼ぼうとしたのですが、河野は嫌だ、嫌だと泣きわめいて、私から電話を取り上げてまで、私が119番通報をすることを阻止しました。 今考えれば、河野は救急車を呼ばれたら、白血病のウソがばれて、私からお金を取れなくなってしまうことから、必死に通報を阻止していたのでしょう。その数日後、私も新型コロナウィルスに感染しましたが、そんな私を置いて、急に家から出て行ってしまいました」(A子さん) 11月になり、河野は「退院した」と言って帰ってきた。だが、この日からまた治療費をねだられ、「コロナのせいで身体が弱ってしまったから、さらに薬の濃度を高めないと危険だ」などと話し、A子さんには休日に副業することを提案した。A子さんは治療費と生活費の捻出のため、働きづめに働いた。その間、河野は「身体が辛いから働けない」などと言って、コンビニで好きなものを買って食べながら一日中家でゲームをしていた。 A子さんは、次第に不信感を募らせていく――。結婚詐欺師“白血病のピアニスト”に懲役4年6カ月 「保釈金300万円」を用意した女性の正体とは へ続く(諸岡 宏樹)
「このとき、私は白血病という基礎疾患のある河野のことが心配でたまらず、救急車を呼ぼうとしたのですが、河野は嫌だ、嫌だと泣きわめいて、私から電話を取り上げてまで、私が119番通報をすることを阻止しました。
今考えれば、河野は救急車を呼ばれたら、白血病のウソがばれて、私からお金を取れなくなってしまうことから、必死に通報を阻止していたのでしょう。その数日後、私も新型コロナウィルスに感染しましたが、そんな私を置いて、急に家から出て行ってしまいました」(A子さん)
11月になり、河野は「退院した」と言って帰ってきた。だが、この日からまた治療費をねだられ、「コロナのせいで身体が弱ってしまったから、さらに薬の濃度を高めないと危険だ」などと話し、A子さんには休日に副業することを提案した。A子さんは治療費と生活費の捻出のため、働きづめに働いた。その間、河野は「身体が辛いから働けない」などと言って、コンビニで好きなものを買って食べながら一日中家でゲームをしていた。
A子さんは、次第に不信感を募らせていく――。
結婚詐欺師“白血病のピアニスト”に懲役4年6カ月 「保釈金300万円」を用意した女性の正体とは へ続く
(諸岡 宏樹)