先頃、衆議院本会議において、LGBT法案が可決された。
正式名称を「性的指向及び性同一性に関する国民の理解増進に関する法律」とする、この法案については、「可決の方向に動いている」と報じられた頃から、SNS上では論争が起きていた。
中でも特に目立ったのが「LGBT法に則れば、トランス女性(*身体は男だが性自認が女)が女湯に入って来ても拒否できない」というもの。
実際、自称・女性の男性が女湯に侵入したという事件が勃発しているので、過剰反応を起こすのも無理はないが、現行の「公衆浴場法」における「男女別」の定義は「身体の特徴に基づくもの」となっており、性自認が女性でも男性器がついていれば女湯には入れないのが原則だ。
とはいえ、混浴が認められている施設があるように、「施設管理者の許可があれば」トランス女性が女湯に入ることも可能であり、施設側の胸先三寸とも言えよう。
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昭和23年に制定された、この公衆浴場法。令和2年の12月に一部改定されている。それまで「(概ね)10歳以上」としていた混浴禁止年齢を「(概ね)7歳以上」に引き下げるというもので、7歳以上の子供は異性の風呂に入れないということになる。
確かに、現代の子供たちの肉体的・精神的な発達を考えれば10歳の子供を混浴させるのは不適切である。では、7歳なら問題はないのか?と言うと、首をかしげてしまう。なぜなら、7歳児…場合によってはそれ以下の年齢であっても、混浴に関してはトラブルが後を絶たないからだ。
いくつか実例を挙げてみよう。
関東にある有名温泉ホテル。子供向けの施設やイベントが充実していることから、お客の大半が家族連れなのだが、女将によれば、しばしば子供の混浴トラブルに見舞われるという。
「最近のものですと、30代の母親が6歳の息子さんを女湯に入れた時に一騒動ありました。この息子さんは未就学児でしたが、体格が良くて見た目は小学3~4年生。他のお客様のほとんどが不快な表情や態度を見せたり、入浴を途中で切り上げてしまったりしてたんですけど、当の母子は何喰わぬ顔で温泉を満喫。
その様子に腹を立てたお客さまが『そういう大きな男の子を女風呂に入れるのは非常識なんじゃないですか?』と母親に抗議し、母親が『どこが非常識なんですか?』と言い返したことでバトルが始まったんです。
すぐに他のお客様も加勢して『他のお客さんが嫌がっている』『迷惑だから出て行け』と言っても母親は『違法なことをしているわけではない』と譲りません。『男湯に入れなさい』と言われると『幼児がひとりで風呂に入れるわけがない!』と逆上。どうやら男性の同行者がいなかったようです。言い合いはどんどんエスカレートし、騒ぎを聞きつけて私が駆けつけた時は、大浴場に怒号が飛び交うという異常事態になっていました」
その場に居合わせたお客からは「まともに入浴ができなかった」「非常に不愉快な思いをした」として、宿泊費の返還を求められるなど、踏んだり蹴ったりだったと言うが、お客側の気持ちもわからなくもない。
「結局は施設側の姿勢なんだと思いますよ」と語気を強めるのは「家族旅行の定番が温泉ホテル」だという、沢口裕子さん(仮名・42歳)。彼女もまた、子供の混浴で腹に据えかねる経験を持つ。
「コロナ禍が緩和されて、久しぶりの家族旅行に出かけた時のことです。小6の娘と大浴場に行ったら、10歳くらいの男児が入って来たんです。それだけでも不快なのに、その男児は娘の身体をじろじろ見て、『もう毛が生えてる』とか『おっぱいがある』とか言い出したんです。顔を真っ赤にして泣き出しそうになってる娘を見て、悔しいやら腹立たしいやらで、男児の母親に『ちょっと、お宅のお子さん、無神経じゃないんですか?』って言ったんですけど『子供のやることですから~』と全然悪びれないんです。
男児もニヤニヤしてるだけ。すぐに娘と一緒にお風呂を上がって、フロントに苦情を言いに行ったんですけど、『違法ではないし、ホテルの利用規約にも違反していないので対処のしようがない』と却下されました。
でも、同じ苦情を言いに来たお客さんが何組もいたので、急遽『被害者同盟』みたいなのを作り、団体で抗議したところ、ようやく支配人がその親子のところに注意をしに行ってくれたんですけど、翌朝、懲りずにその親子がまた女湯にいたんですよ。それでまたフロントに苦情を言ったら『注意はしたけど強制はできない』とのこと。せっかくの旅行が台無しになったので、ホテルとあの親子に損害賠償を請求したいくらいです」
後編『女湯で胸を触る息子を咎めない母親、男湯に入る女児を凝視する男性…… トラブル相次ぐ児童の混浴』に続く。