「遺族はあなたの法廷での発言に、怒りをあらわにしています。それはなぜなのか……。あなたは考える必要がある」
4月19日、京都地裁で増田啓祐裁判長は元トラック運転手の岩瀬徹郎被告(42)をこう諭し禁錮2年8ヵ月(求刑4年)の有罪判決を言い渡した。岩瀬被告の運転するトラックが軽ワゴン車と衝突し、乗っていた高齢の夫妻が死傷。自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われていた。
「事故が起きたのは昨年9月21日の午後1時半頃です。京都府笠置町の国道163号線で、岩瀬被告はトラックを居眠り運転していました。トラックのドライブレコーダーには蛇行を繰り返し、10回以上センターラインをオーバーする様子が記録されています。
蛇行を初めてから約10分後、対向車線にはみ出して軽ワゴン車と正面衝突。運転手の山本隆雄さん(当時65)が亡くなり、同乗していた妻の倫代さん(65)は脳に強いダメージを受け一時意識不明となる重体になりました」(全国紙社会部記者)
現場は片側1車線の道路。逃げ場はなく、軽ワゴン車の車体の前方は原形をとどめないほど大破した。裁判を傍聴したジャーナリストの柳原三佳氏が語る。
「隆雄さんはヒザから下の両脚がちぎれ、多発内蔵破裂もあったそうです。しばらくうめき声をあげていたそうなので、即死ではなかったのでしょう。車の損傷が激しかったため、救出には2時間近くかかったとか。苦しみながら亡くなったのだと思います」
裁判では、岩瀬被告の運転するトラックの後続車につけられたドライブレコーダーの記録が公開される。そこには、生々しい映像とトラックの蛇行運転を危ぶむドライバーの声が残されていた。
〈(岩瀬被告のトラックが)めっちゃフラフラするな~〉
〈大丈夫? 前の車〉
〈何しとるん、ヤバい!〉
次の瞬間「ガシャーン!」という衝撃音とともに、トラックは軽ワゴン車に衝突する。逮捕後、岩瀬容疑者は「眠気を催していることはわかっていた」「ヤバい運転をした」などと供述し居眠り運転を認めていた。しかし……。
「裁判が始まると、言い分を一転させたんです。『居眠りはしていないが記憶にない』『運転の過失はない』と主張し、執行猶予つきの判決を求めます。遺族に対し、本気で謝ろうという意思も感じられませんでした。ご遺族の方は、あまりの理不尽さに激怒しています」(前出・柳原氏)
判決は前述の通り禁錮2年8ヵ月と、求刑(4年)通りにはいかなかった。隆雄さんと倫代さんの長女・星野亜季さんは、次のようなコメントを発表している。
〈被告は判決が出ると顔を覆って泣くだけで、こちらへの謝罪は一切ありませんでした。ここまで来ても自分のことしか考えられないのだと改めて怒りがわきました〉
隆雄さんと倫代さんは長年営んでいた新聞店を’21年3月にたたみ、第二の人生を夫婦で楽しんでいた最中の悲劇だった。