国を被告とした労働裁判の弁論準備手続を、国側の指定代理人が密かに録音していたことがわかった。録音は、国側がいったん退席し、原告側と裁判所が個別に話すときも続いていた。「手札」を盗み見られる形となった原告側は「当事者間の信頼関係を根底から崩す前代未聞の行為」だと憤っている。
「盗聴」騒動は、横浜地裁横須賀支部で10月11日に実施された弁論準備手続で起きた。裁判は原則公開だが、弁論準備手続は原則非公開となっている。
原告側代理人の笠置裕亮弁護士によると、録音機は国側の指定代理人のひとりが開けたままにしていた書類ファイルの下に置かれていたという。国側の退席後、笠置弁護士がファイルの表紙に橙色の点滅が反射していることに気づき、録音が発覚した。
裁判官の問いかけに対し、国側は「うっかり」を強調したが、実際に裁判所がデータを確認したところ、少なくとも2022年7月以降の期日が録音されていたことがわかったという。
「非公開の手続きであることが制度的に担保されているからこそ、和解に向けて率直な意見交換をおこなっていたのに、弁論準備手続の秘密性をまったく理解していない」(笠置弁護士)
仮に同様の行為を弁護士がした場合、弁護士会から重い処分がくだることが予想される。たとえば、2017年には調停室内で録音した弁護士が、業務停止3月という重い懲戒処分を受けている。
笠置弁護士は即日抗議の書面を提出。国側に指定代理人を即刻解任し、厳正に処分することや、再発防止のために法曹資格を持たない指定代理人への研修をおこなうことなどを求めている。
弁護士ドットコムニュースが今回の訴訟を統括する東京法務局に取材したところ、法務省から回答するとのことだった。回答が届き次第追記する。
【追記:2022年10月12日 16:05】
法務省訟務局は、録音があったことを事実と認めた。録音をしたのは防衛省の職員で、法務省と防衛省で経緯などの詳細を確認しているという。