原子力規制委員会は17日、テロ対策不備で事実上の運転禁止命令が出ている東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)について、命令解除を見送り、追加検査を継続することを決めた。
東電の核物質防護に対する再発防止に向けた取り組みには、さらなる改善が必要と判断した。これにより同原発の再稼働時期は見通せなくなった。
東電は電気料金の値上げ申請に際し、同原発7号機の再稼働を今年10月と見込んでいたが、想定通りに間に合うかは不透明だ。岸田文雄首相も今夏以降の再稼働を表明しており、原発の最大限活用にかじを切った政権肝いりの政策にも少なからず影響を与えそうだ。
規制委は今年3月の定例会合で、昨年9月に提示した27項目の改善方針のうち、核防護上の問題に対する社内意識や不審者の侵入を検知する機器の不具合改善など6項目について不十分と評価した。
17日の会合では、このうち2項目で改善がみられたものの、不祥事の再発防止策を一過性にしない仕組みなど「4つの課題」があると指摘し、「事業者の自律的な改善が見込める状態とはいえない」として命令解除を見送った。
柏崎刈羽原発は、6、7号機の出力が136万キロワットで国内最大級の出力を有する。平成29年に規制委の審査に合格したが、令和3年に侵入検知器の故障やIDカードの不正使用などの問題が発覚。規制委は同年4月に運転禁止の行政処分を下し、再稼働の動きが止まった。
規制委は当初、検査にかかる期間として2千時間を目安としていたが、これまでに3400時間を超えて長期化している。追加検査は今後、100時間程度を見込んでおり、命令解除の判断可否は数カ月後になる見通し。