お金が絡めば、人の本質がよくわかる。筆者は複数の「日掛け金融」に勤務してきた経験から、日々そのことを実感する。ちなみに日掛け金融とは、個人・法人を問わず経営者のみを対象に貸付をおこない、債務者から毎日集金をしていた特殊な金融会社である。 今回は、恩給目当てに当時90歳超えの男性に色仕掛けをした70代女性の話を紹介したい。「自分の親は大丈夫」だと思っている人は要注意。色仕掛けが原因での借金は、高齢者でも意外と多いのだ。なお、個人の特定を避けるために名前は匿名とし、事実を一部加工している。
◆審査の甘い金融機関に集まる人たち
類は友を呼ぶという言葉があるように、借金をしている顧客同士がつながっているというパターンは少なくなかった。そして、審査の甘い金融機関やお金になる話などを共有し合う。筆者のもとにやってきた自称自営業の森金ヨシ子(仮名・当時70代)さんにも、そんな仲間が10人程度いた。
遅れていた入金分を支払いに来た森金さんは少し値段の張りそうな衣服や持っていた質のよさそうなバッグを不自然に触って、こう話す。
「最近、私、金払いがよくなったと思わない? いいカモ捕まえたの。ジーサンなんだけど、戦争行ってた人だから恩給をもらってる。しかも、結構な額。これからはお金が入るたび、喜ぶ顔が見たいみたいから、私のために使いたいって。だから今度はもっと高いモノをプレゼントさせるの」
◆90歳超えのジーサンなんて相手にしない
「彼氏ではなく、ただの金づる。そうでないと90歳超えのジーサンなんて相手にしない。紹介してくれた友達は『ちょっとずつ金を引き出せ』って言うんだけど、面倒臭いから近々、デカイ額の保証人になってもらおうと思ってる」
計画としては、数軒の日掛金融や闇金からの返済を一気にまとめ、90歳超えの男性Sさんを保証人にさせるというもの。ただ、Sさんも森金さんも高齢のため、銀行などでは借りられない。個人の金融会社や日掛金融など、金利の高いところで借りる計画だ。
「一気にまとめてくれたら嬉しいんだけど。私は支払えないけど、200万円くらいなら、あのジーサンがサッと全額支払ってくれるはずだから大丈夫」
◆貸付をしぶると態度が一変
金森さんは、思っていても口に出したら絶対に貸付などしてもらえないようなことも、平気でペラペラと言って退ける。さらに「あなたとは、かれこれ10年近くの仲じゃない!」などと続けた。しかし、筆者は「今回は10万円が限度」だと言った。
「こんなに長い付き合いなのに、10万円しか貸してくれないとこないの? こんなシケた金融会社、いまに返済してやるわ! あとで『やっぱり借りてください』って言ってきても、借りてあげないからね」
つい最近までウソ泣きまでしながら「明日は必ず入金します」「来週は、まとまったお金が入る」と支払日を引き延ばしていた人間とは思えない。本人が気づいていたかは不明だが、少し前に遅れた分を支払いに来て退店する際には、ズボンに穴が開いていたこともある。
◆全額を返済しにやってきた女性
その様子を見ていた私の上司は「ちょっとずつ恩給からお小遣いをもらえばいいものを、欲を出して失敗するんだろうな」とポツリ。しかしその予想は外れることになる。
数か月後、金森さんは全額を返済しにやってきた。これまでSさんが貯めていた恩給や貯金の大半を自分の通帳に入金させ、他社では保証人までさせることに成功したらしい。つい、どのような方法を使ったのか尋ねてみた。

◆息子夫婦が見たら「通帳はすっからかん」
それから数か月後「すみません、私の父Sが金森ヨシ子という女性の保証人をしていませんか?」と、弁護士にも相談している最中だという息子夫婦が来店した。
「父からは、ここの金融会社の名前も出ました。恩給などを貯めていた通帳はすっからかん。父は借金もあり、200万円の保証人もさせられています。挙げ句、彼女は行方不明です」
Sさんが自分名義となっていた土地の権利書を持ち出そうとしたことで、金森さんの存在が発覚。貯金もなくなり、借金の保証人までしていることもわかったと息子夫婦は嘆く。そんな2人に、筆者はこう言った。
◆両親に頻繁に声かけてみては
「申し訳ございません。当店には現在、金森ヨシ子さんという顧客はいませんし、Sさんのことも存じません。お気持ちはお察ししますが、こうなる前にSさんと会話を楽しんだり、出かけたりはしましたか? 寂しいときにやさしくされると、人間は弱いものですよ」
この言葉に、Sさんの息子は「あんたは、詐欺師のような女の肩を持つのか!」と逆上して帰って行った。
元顧客の傾向からしても、高齢者がダマされたり、借金を重ねたりする裏側には“寂しさ”が隠れていることが多々あった。両親を心の中で思いやる気持ちも大切だが、まずは「元気?」「いま、何してる?」と、頻繁に声をかけてみてはいかがだろう。
<TEXT/里羽真門>