「投資詐欺の件でたくさん迷惑をかけ、心配をかけてしまってごめんなさい」と遺書につづり、22歳の若さで自ら命を絶った女性の遺族が、損害賠償を求める訴えを起こしました。
■母親が会見で怒り「本当に腹立たしい」
穂野香さんの母・川上佐永子さん:「直接の勧誘者は、全くおとがめなしになっていまして。自分の責任を棚にあげて、責任をなすりつけているような供述をしている。本当に腹立たしい限りです」
こう語気を強めるのは、投資トラブルに悩み、22歳の若さで自ら命を絶った川上穂野香さんの母親です。
川上佐永子さん:「その日から、ずっと後悔ばかりだったんです。娘の悔しさ、無念を晴らすために、ずっときょうまで、そのことだけ考えて一生懸命やってきた」
穂野香さんが、投資を持ち掛けられたのは2年前の8月。大学を卒業し、社会人になったばかりの時でした。
大学時代の同級生のSNSに気付き、何気なく返信すると、話が一気に進んでいったといいます。
川上佐永子さん:「その日のうちに、すぐにグループLINEを強制的に作られて。リーダー格の男に、色々LINEで説明されています」
同級生に紹介された男から、暗号資産の運用をうたう投資を勧められたのです。これは、その時のLINEのやり取りです。
穂野香さん:「所謂マルチですかね?」
男:「マルチとかネズミでは無いです」
最初は疑っていた穂野香さんに対し、男は言葉巧みに説き伏せ、お金を工面する方法まで指南していました。
男:「借入理由は引越しで60~70万円くらいって言えば、40~50万円は1社で借りられるから、そこから50、50とか借りたらいいよー!」
結局、穂野香さんは消費者金融3社から50万円ずつ借りて、合わせて150万円を男に支払ってしまいました。
しかし、約束の配当はなく、交際相手と一緒に勧誘した男に返金を求めたところ…。
交際相手:「こいつの150万円返してほしい」
勧誘した男:「何で?ハハハ」
交際相手:「僕からしたら(投資を)止めたい」
勧誘した男:「ハハハ」
穂野香さん:「誰が誰にお金を渡して、どういうルートで」
勧誘した男:「(投資先の)会社がやっていることで、僕らは一切関わりない」
投資先の会社に穂野香さんのお金を渡しただけで、自分は関係ないと言い張る男。
この翌日、穂野香さんは、ホテルで自ら命を絶ちました。
母子家庭で育った穂野香さん。残された遺書には、母親への感謝と気遣いがつづられていました。
母親に残した手紙:「お母さんへ。22年間、ずっと私を育ててくれてありがとう。投資詐欺の件で沢山迷惑をかけ、心配をかけてしまってごめんなさい。服とかは売ってね。多少のお金にしか、ならんかもやけど」
川上佐永子さん:「亡くなった日の当日に『私と警察に相談にいこう』と言っていました。でも、私が仕事に午前中だけ行ってしまって、帰ってきたらいなかった。何で、一人で置いて行ってしまったのか。ずっと私が悪いのかなという思いだった」
■穂野香さん亡くなる前…他の被害者も心配
去年11月、穂野香さんが投資した会社のメンバーらが金融商品取引法違反の疑いで逮捕され、主犯格の男に執行猶予付きの有罪判決が下されました。
また、穂野香さんを勧誘した男も、略式起訴されていて、この投資グループによる被害額は650億円に上ります。
こうしたなか、2日に穂野香さんの母親は、勧誘した同級生ら3人に対し150万円の返金と1000万円の慰謝料を求め東京地裁に提訴しました。
川上佐永子さん:「娘は亡くなる前、他の被害者のことまで心配していた。抱え込まずに相談にいってほしい。友達とか知らない人からのおいしい話は、まず詐欺と思って、一切聞かないようにしてほしい」