15日午前11時25分ごろ、岸田文雄首相(65)が衆院和歌山1区補欠選挙の応援で訪れた和歌山市・雑賀崎(さいかざき)漁港の演説会場で、登壇場所の近くに筒状のものが投げ込まれ、爆発した。首相にけがはなく無事だった。和歌山県警は威力業務妨害容疑で兵庫県川西市の木村隆二容疑者(24)を現行犯逮捕した。昨年7月に安倍晋三元首相(享年67)が参院選応援で訪れた奈良市で街頭演説中に銃撃されて死亡しており、県警も警戒を強めていた。
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突然の爆発音に悲鳴が上がり騒然とする中、木村容疑者をいち早く取り押さえ、2本目の爆発を防いだのが、容疑者のすぐそばにいた漁師の男性だった。ツイッターでは「漁港のおじさん」というワードがトレンド入り。「SPより反応が早い」など勇気ある行動に称賛の声が上がった。SNS上では、男性が着用していた赤色の派手なベストも、すぐにワークマン製の「防寒ウィンドシェルベスト」と特定された。
1本目の筒のようなものが投げ込まれた直後、男性漁師は人波を分け入るように聴衆の中にいた容疑者に近づいた。右手にもう1本の爆発物とみられる筒のようなものを持った容疑者の背後から、瞬時に左腕を首付近に回した。体重をかけ、ヘッドロック。繰り返しねじ伏せようと奮闘した。その後、別の男性漁師も加勢。SPも加わり、タックルして地面に押し倒した。男性は離脱したが、その後、警察官4人が木村容疑者を制圧した。ちょうどその時に「ドーン」と爆発音がした。
岸田文雄首相はこの日、この男性漁師らに電話をかけ、直接謝意を伝えたと、政府関係者が明らかにした。また首相は、事件後も和歌山市と千葉県内での3か所の街頭演説を無事終えたことについて、自身のツイッターで「最後まで演説に立つことができた」と警備関係者らへの感謝を表明。「大切な選挙を皆さんとともに守っていく」とした。