キックバックの総額約2億円――。
警視庁生活安全特別捜査隊は11月4日、斡旋会社「スタージョブ」の経営者・川南太容疑者(39)、佐野圭容疑者(38)、安田篤史容疑者(42)らを職業安定法違反の疑いで逮捕したと発表した。新宿区歌舞伎町の路上でスカウトされた20代の女性3人を、台東区吉原地区のソープランドへ紹介したとされる。警視庁によると、佐野容疑者らは店から108万円の報酬を受けとったという。
「『スタージョブ』は昨年10月からの1年間で、約1600人の女性を吉原地区を中心とする50ほどの風俗店に斡旋していたようです。キックバックとして得た報酬の総額は、2億円にのぼるとか。調べに対し川南容疑者は犯行を認めています。佐野容疑者は『紹介業務は仲間に引き継ぎ自分は一切関与していない』と否認。安田容疑者は『違法だとは思わなかった』と話しているそうです」(全国紙社会部記者)
佐野容疑者らが、多数の女性を風俗店に斡旋していた手口には驚かされる。
「歌舞伎町などのスカウト約300人と、LINEで連絡を取りあい女性を紹介してもらっていたようです。風俗店での仕事に興味がある女性を路上で見抜くのは、素人には難しい。すでに風俗店で働いている女性を紹介すれば、ルール違反の『引き抜き』で大きなトラブルになりかねません。
街で風俗経験のない女性に声をかけ、働いてもらうまでのハードルはかなり高いんです。佐野容疑者は、その手間をプロのスカウトたちから情報を得ることで省いていたのでしょう。スカウトへは、キックバックの15%を報酬として渡していたそうです」(同前)
元神奈川県警の刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が、風俗斡旋の罪の深さについて解説する。
「仕事を紹介すること自体は、罪に問われません。しかし、公衆道徳上有害とされる風俗の仕事を紹介したとなると話は別です。ましてや容疑者の斡旋会社が、事前に当局へ届け出をせず報酬を得ていたとなれば、明確な職業安定法違反になります。
新型コロナウイルスの影響で、飲食店でのアルバイトなど若い女性向けの仕事は減少傾向にある。彼女たちが生活に困り、ある程度の収入が見込める風俗店で働こうと考えてもおかしくありません。容疑者は、困窮する女性の心理につけ込んだと考えられます」
佐野容疑者らは、スカウトと頻繁に連絡をとり得た情報を悪用していたようだ。