「国家プロジェクト」をうたう大阪・関西万博が13日閉幕する。万博協会の副会長を務める大阪府の吉村知事は運営費の黒字見込みを強調し、「やって良かった」と胸を張るが、海外パビリオンの工事費の未払い問題については「寄り添う」だけ。未払い問題を解決しない限り、万博は終わらない。
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現在、未払い問題は海外パビリオン計11館に及ぶ。参加国が独自に用意する「タイプA」のマルタ館をめぐっては、元請けの仏イベント会社「GLイベンツジャパン」に対し、1次下請けの建設会社が今年6月に約1.2億円の支払いを求めて東京地裁に提訴した。
兵庫県神戸市でコンサルティング会社を営む高関千尋社長もマルタ館工事に携わったひとり。顔出し実名で被害実態を訴えている。詳しく聞くと……。
「知り合いの工務店からマルタ館の看板製作を依頼され、今年3月21日に現地を訪れました。4月13日の開幕まで約3週間だというのに、内外装すら『間に合うのか』という状況でした。1次下請けの社長さんにお話をうかがうと、工事用図面すら用意されていない、と。現場では大まかに工務店とGLの海外チーム、1次下請けのチームが総勢50~60人で動いていましたが、GLのマネジメントがズサンで工程・予算・品質管理はメチャクチャでした。クライアントであるマルタ側と『どういうものをつくりたいか』を詰めておらず、現場でつくっては都度、変更・修正を迫られるケースが相次ぎました」
■いざ問題が起きたら知らぬふり
米国で学生時代を過ごした高関社長は英語が堪能なため、海外・日本チームのまとめ役を買って出た。
「マルタもGLのスタッフも一生懸命でしたが、結局、現場にシワ寄せがくる。カメラで24時間監視され、満足な食事もなければロクな排泄設備もない。仮眠すらままならない。働きづめで体重は数キロ減った。そうして何とか開幕日に間に合わせたのに、まさか未払いとは思いも寄らないですよね」
現在、国や大阪府、万博協会に立て替え払いなどの救済措置を求めているが、進捗は乏しい。
「万博協会も府も中小企業に『力を貸して欲しい』とお願いしておきながら、いざ問題が起きたら知らぬふり。これも未払いと同じく詐欺です。政治家が主導して万博開催を決めたのだから、行政側の責任は免れません。オリンピックしかり、公益性をうたう国際イベントの商業化を推し進めて甘い汁をすする連中をのさばらせていいのでしょうか」
未払い被害者にとって、万博は始まってすらない。
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大阪・関西万博について日刊ゲンダイは、幾度と会場に足を運び現地の様子を報じてきた。関連記事【もっと読む】【さらに読む】に詳しい。