“あいみょん騒動”で分かった根強い“タトゥー”アレルギー 美容専門医が明かす「年間5000人が除去施術」「若気の至りと後悔する人は多い」知られざる実態

シンガーソングライターとして圧倒的な人気を誇る、あいみょん(30)が自身のタトゥー姿を積極的に公開し、大きな注目を集めている。7月にネット上で公開された写真では、左腕に線のようなものが見え、8月8日発売の雑誌「GINZA」(マガジンハウス)9月号の表紙が公開されると、明らかにタトゥーだと思われる“絵”が左上腕に確認された。
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【写真】たしかに隠すつもりはなそうな…タトゥー疑惑に賛否の声が渦巻いた「あいみょん」の近影
さらに8月下旬、あいみょんは山口県で開催された野外音楽フェスに出演。その際、彼女の衣装はノースリーブで、左上腕だけでなく右上腕にもタトゥーが入っているのがはっきりと見て取れたという。芸能担当の記者が言う。
「ネット世論は『隠す気がない』、『一種のカミングアウト』と受け止めたようです。興味深いのはSNSなどネット上で賛成派と反対派の大論争が起きたことです。最近は『アーティストがタトゥーを入れるのはよくあること』という風潮かと思いきや、想像以上に批判的な声が集まっていた印象を受けました。『かわいい』、『似合っている』と擁護する意見も多いのですが、タトゥーに対する心理的な抵抗、違和感や不快感を表明する投稿も負けていません。今でもタトゥーを嫌う層がこんなに多いのかと驚いたというのが率直な感想です」
タトゥーに寛容なイメージが強い欧米でも、最近は反・タトゥー派が増えているという。世界的な潮流は脱・タトゥーに傾きつつあり、タトゥーの除去施術が市場規模を伸ばしているとの記事を有名モード誌の電子版も報じている。
フィガロジャポン(電子版)は8月5日、「『清潔さ』を求めるトレンドで、『タトゥー除去』が世界的に大ブーム?」との記事を配信した。本家フランスの「Madame Figaro」に掲載された記事を日本語に翻訳したもので、記事によるとフランスでは何と全国民の5人に1人がタトゥーを入れているという。
ところが近年、アメリカの“クリーンガール”というブームがフランスの女性に強い影響を与えるようになったそうだ。“クリーンガール”は裕福な家庭で育った若い白人女性が中心で、健康志向が強く、タトゥーの入っていない白い肌のほうが美しいと考えている。
同誌がフランスの美容外科クリニックを取材したところ、世界ではタトゥーを入れた人の23%が除去を望んでおり、これは年間約1000万人、約2000億円の市場規模と推計される。そのうちフランスの市場は30%を占めるという。
医学博士で高須クリニック名古屋院の高須幹弥院長は「私たちは全国で5つのクリニックを運営していますが、そこに平均して1日に2、3人の方がタトゥー除去のため来院されます」と言う。
「つまり年間で約5000人というところで、確かに年々増えている印象です。除去の施術は基本的に4つあります。第1はレーザーをタトゥーに当てることで色を取ります。第2は切除縫縮。タトゥーを入れた皮膚を切り、縫い合わせることで1本の傷にします。施術後はガラスで切ったような傷跡だけが残ります。第3が剥削、第4が皮膚移植。タトゥーの範囲が広かったり、レーザーに反応しにくい赤色や黄色のタトゥーを消したりするために使われます。剥削は皮膚の表面を削り、残った色をレーザーで消します。皮膚移植は太ももや背中の皮膚を使います。どちらも施術後は火傷の跡のようになります」(高須院長)
気になる価格だが、高須クリニックでは公式サイトで料金を明示している。例えばレーザーなら1センチ×1センチで1万1000円(税込)、剥削ならハガキ大サイズで55万円(税込)──という具合だ。
これまでタトゥーの弊害を伝える新聞記事では「タトゥーを入れると体に悪影響がある」と指摘することが多かった。だが、それは過去の話のようだ。
「昔はタトゥーを入れる際、彫り師が針を使い回しすることがありました。そのためB型肝炎やC型肝炎、HIVなどに罹患することもあったのです。しかし今では滅菌した針を使っている彫り師が多数でしょう。他にも、かつてはタトゥーの色素に金属成分を含むものがあり、その場合はMRI検査が受けられないといった弊害がありました。しかし、現在の色素にほとんど害はありません。女性がメイク代わりに利用する眉のアートメイクも針で色素を入れるわけですからタトゥーと大差ありません。最近のタトゥーは安全性が高くなったと言えるとは思います」(同・須院長)
たとえ健康に害はなくとも、タトゥーを除去したい──こう考える人が増えているのは、いわゆる“ライフステージ”と関係があるという。
「タトゥーを入れた自分の体に満足している人もいます。その一方、『若気の至りで入れてしまった』と後悔する人も少なくありません。最近は欧米だけでなく、日本の芸能人もタトゥーを入れていますし、サッカーのW杯でも人気のサッカー選手の腕にはタトゥーが目立ちます。これに憧れる若者がいるわけですが、少なくとも日本でタトゥーを入れている人は、反社会的勢力だと見なされることが多いわけです。銭湯、スポーツジム、公共施設などの利用は制限されます。率直に申し上げますが、日本で体にタトゥーを入れることは、自分で自分を『生きづらい状態』に置くことだと言えます」(同・高須院長)
若者はまだ社会との接点が少ない。友人を中心とする狭い人間関係ならタトゥーが弊害となることは少ない。だが成長すればいつか社会に出る必要がある。
「タトゥーを入れたことを、人生の節目を迎えた際に後悔したというケースは決して少なくありません。具体的に言えば、進学、就職、恋愛、結婚、出産、という“ライフステージ”の変化です。就職先でタトゥーが見つかったら大問題になるから、子供と一緒にプールで遊べないから、というわけです。タトゥーを入れること自体なら、医師としての私は警鐘を鳴らしません。ただし、後悔する可能性があることは声を大にして指摘したいです」(同・高須院長)
高須院長によると、「腕のいい彫り師のタトゥーはレーザーで消えやすく、腕の悪い彫り師のものは跡が残る可能性が高い」といった、非常に興味深い傾向があるという。
「除去施術の技術が向上しているのは事実です。私たちも来院された皆さまが満足されるよう努力を重ねています。しかし、レーザーを当てて消しても跡が薄く残ったりするなど、施術を受けた方が満足できるレベルに達しないことがあるのも事実です。つまり、タトゥーは簡単に消えるものではないと肝に銘じて、タトゥーを入れてほしいのです。10代の少女が気軽な気持ちでタトゥーを入れ、しばらくすると後悔して慌てて私どもに除去を依頼されたというケースもありました。くれぐれも若気の至りと後悔しないよう、ぜひ熟考してください」
デイリー新潮編集部