「先輩にやられたと涙ぐんで…」“広陵野球部・集団暴行で右半身麻痺” 被害者兄、同級生の新証言「Aはイジメのターゲットにされていた」

茹だるような残暑が続く甲子園で、決勝進出をかけ、準決勝2試合が行われた8月21日。暴力禍に揺れる広島県の広陵高校は、硬式野球部監督の中井哲之氏(63)、その長男で野球部長の中井惇一氏(30)の離任を発表した。後任監督に副部長兼コーチの松本健吾氏(34)、部長には男子バスケ部顧問の瀧口貴夫氏(64)が就く。
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離任が発表された中井哲之氏(左)とその長男で野球部長の中井惇一氏(右)
「大会途中の出場辞退後も非難や誹謗中傷は収束せず、広陵高校は9月に予定していた高校のオープンスクールも中止に追い込まれた。春の選抜に繋がる秋季広島大会地区予選も迫る中、学校側は『現在の指導体制を継続するのは困難』とし、ついに中井親子を野球部から分離するという“最終カード”を切ったかたちです」(甲子園担当記者)
今夏、甲子園開幕直前に火を噴いた広陵野球部の部内暴力問題。今年1月、当時1年生だった元部員のBくんが複数の2年生部員から暴力行為を受け、広陵は高野連から厳重注意処分を受けていたことが明るみに。別の元部員Cくんも約1年前、部内で暴力や暴言を受けたと告発し、現在、警察や第三者委員会が調査中だ。
「ベスト4が激突するタイミングでの監督交代発表は、まだ開催中の甲子園に水を差すようなもの。過去の暴力事案の調査や検証が済んでいない一方で、『現在の1、2年生による暴力やイジメがないことを確認した』と主張し、秋季大会出場を優先させたようにも映る。広陵に対する風当たりは強いままです」(同前)
同校の部内暴力の根は深い。「週刊文春」でも、2015年に入学したAさんが「あの頃から何も変わっていないことにショックを受けた」として、過去の凄惨な体験を告白した。2016年2月、Aさんは直前に被害を受けた部内暴力を機に、広陵を転校。この件は当時も表面化し、広陵は高野連から「対外試合禁止1カ月」の処分を受けている。Aさんはその約5カ月前の15年9月にも上級生から激しい集団暴行に遭い、一時、右半身麻痺に陥ったと証言。Aさんは病室を見舞った中井氏に言いくるめられ、この暴行事案は本人の不注意による事故として処理されたという。
広陵側は、15年9月の件に関して「A氏が集団暴行に遭った事実はなく、部室の鉄製のドアで頭を打った偶発的な事故」と完全否定し、「週刊文春」の取材に対する回答も公開した。だが今回、Aさんと同期だった野球部OBの1人が、新たに口を開く。
「Aは特定の上級生からイジメのターゲットにされていました。退院して車椅子姿で寮に戻ってきた時、『本当は●●さんにシバかれた』とは聞いていました。部員はみな、Aが先輩にやられたという認識を持っていたと思います。でも、表向きはドアに頭を打った事故になっていましたし、中井監督も『Aは大袈裟や』と言っていましたから、被害者のAの方が部内での立場が弱くなっていました」

さらに、病室で弟の苦悩を見抜いたAさんの実兄も、こう証言する。
「確かに弟は、当初『ドアにぶつかった』と話していました。でも、単なる事故には思えなかった。同じ高校野球を経験した身として、新チームになったばかりの時期で、広陵で野球を続けたいと思っている弟が、真相を隠したい気持ちも理解できる。2人きりになった時、何気なく『本当は何があった?』と聞いてみたんです。すると弟はようやく、『先輩からやられた』と話してくれた。時折、涙ぐんでいたのを覚えています」
取材を続けると「週刊文春」にはAさん以外にも、広陵野球部OBのDさん、Eさん、Fさんらが続々と証言。別稿(広陵元野球部員が怒りの連続告白「集団暴行は日常でした」《元教員は「野球部にモノは言えない」》)で紹介した。そのうちFさんがあらためて証言する――。
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Fさんが改めて証言した、常態化していた広陵高校の暴力支配とは? 第1弾記事では、Aさんの告白全文を掲載。第2弾記事では、広陵の声明を受け、AさんとAさんの父親が発したコメントや元教員の激白など暴力問題を総力取材した結果、第3弾記事では、“中井親子退任”後も止まらない部内暴力告発について掲載している。
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「週刊文春」では、今回の件について引き続き情報を募集しています。文春リークスまで情報をお寄せください。
文春リークス:https://bunshun.jp/list/leaks
(「週刊文春」編集部/週刊文春)