《懲役は…》「私も死刑にしてください」生活苦を理由に“妻の首をノコギリで切断”…凄まじい犯行現場からは想像できないほど軽かった「男の罰」とは(平成23年)

〈「痛いッ!」寝ている妻の首を「ノコギリで切断」…パートナーはうつ病、給料は未払い、31歳男性が妻を殺害した“あまりにも切ない事情”(平成23年)〉から続く
「被害者は娘に間違いないと確信した。悲痛な死に顔を見て怒りが込み上げてきた」
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あまりに凄惨な犯行現場から、両親が激怒する場面も……。2011年、夫が生活苦を理由に、うつ病の妻の首をノコギリで切断した事件。その後、警察に自首した彼はどんな罰を受けたのか? 彼の犯行に対する両親の嘆きとは? なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/最初から読む)
写真はイメージ getty
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「恵理を殺した。110番してほしい。こうするしかなかったんだ」
犯行後、野沢は再び祖母宅を訪れ、警察を呼んでくれるよう頼んだ。駆けつけた警察官が現場に踏み込み、血まみれの包丁やノコギリ、苦悶の表情を浮かべて転がっている恵理さんの生首を見つけて仰天した。
「なぜ恵理さんを殺した。動機は何だ?」
野沢は警察に問い詰められても、「殺して楽にしてやりたかった」と言うばかりだった。
恵理さんの遺体を司法解剖した法医学者は次のように話した。
「頸部のノコギリの傷には弱いながらも生活反応があった。胸、腹、背中にも傷があり、胸の傷は肺を貫いていた。こうした刺し傷とノコギリで切った面の生活反応はさして変わらなかった。つまり、被害者は刃物で刺された後はまだ生きていて、頸部離断によって死亡した。死因が頸部離断であることは確実に言える。先に胸などを刺して、時を置かずに首を切断したことは認められるが、本人が言うように3分で頸部離断したというのは難しいのではないか」
警察はあまりに凄まじい犯行現場から、怨恨や痴情のもつれを疑ったが、野沢の周囲からは何も出てこなかった。

「私は恵理を愛していた。何の不満もない。でも、自分は幸せにしてやれない。かと言って、誰にも恵理を渡したくなかった。確実に死刑になろうと思って、首を切断した。お互いに生きているのが辛かった。私も死刑にしてください」
唖然とするような犯行動機に恵理さんの両親は激怒。恵理さんの死に目に会うどころか、野沢と再婚していたことも知らず、テレビのニュースで事件を知ったのだ。
恵理さんの母親は次のように話した。
「4カ月前に荷物を取りに来たのが最後の姿になった。離婚して1カ月ほどで『彼氏ができた』とニコニコしながら報告してきたので、子どもの面倒も見られないのに、いい加減にしなさいと怒った。それでも『彼は私と同じ病気にかかっている。私のことをよく分かってくれる』と言って泣き出し、結局は家を出て行った。恵理は何でも相談なく決めてしまう。最後はケンカ別れみたいになってしまったが、私たちは恵理に落ち着いて考えてもらいたかっただけ。それでもあんなひどい殺され方をしたのは許せるはずがありません」
恵理さんの父親は次のように話した。
「出先にいたら妻から電話があり、『ニュースでやっている殺された人が恵理かも知れない』と知らされた。警察に連絡すると、『すぐに来てほしい』と言われた。霊安室で対面し、被害者は娘に間違いないと確信した。悲痛な死に顔を見て怒りが込み上げてきた。私も離婚して早々に新しい男と暮らすと聞いて怒った。1度だけ恵理から電話があり、『許してもらえないか?』と言われたが、ふざけるな、それでいいと言って出て行ったんだろう、同棲を解消するまで許さないと言って突き放してしまった。今はまだ娘が亡くなった現実味がありません。野沢の首を叩き切ってやらなければ気が済みません」
だが、野沢は「犯行時は心神耗弱状態だった」と認められ、罪が減刑され、懲役5年を言い渡された。恵理さんが「死にたい」と言っていたのは事実だが、本望だっただろうか。
(諸岡 宏樹)