「ああ言えばジョウユウ」と呼ばれたオウム真理教のかつての顔も、30年を経て62歳の初老の頃を迎えていた。その上祐史浩氏が気がかりだと語るのは、麻原彰晃が遺した家族の動きである。
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【秘蔵写真】総額2億2000万円! 札束を抱えてニッコリ…「麻原彰晃」の欲にまみれた“表情”
上祐史浩氏――当時、外報部長や緊急対策本部長の肩書でオウムのスポークスマンを務めた人物である。1995年10月に有印私文書偽造等容疑で逮捕。3年の実刑を受け、99年に出所した後に後継団体「Aleph(アレフ)」を立ち上げたが、やがて麻原ファミリーと対立して新たな団体「ひかりの輪」を作った。“最終戦争(ハルマゲドン)”が起こらなかったことから麻原に疑問を抱き始め、10年かけて呪縛から解き放たれたという。“尊師”と崇めた男を、今は「アサハラ」と呼び捨てにする。
「2007年にひかりの輪を作ってから20年近くたちますが、当時50~60人いたメンバーも亡くなったり介護施設に入ったり、生活保護受給者になった人もいて、今は7人程度、平均年齢60歳くらいです。普段は清掃バイトなどをしています」
挙げる数字は、その容姿とともに30年の歳月を如実に物語るが、今も一般に向けた宗教セミナーを展開しており、警察も公安調査庁も麻原を隠して活動する団体として監視を緩めていない。
そんな上祐氏には、最近気がかりなことがあるという。麻原への絶対的帰依を明示する「アレフ」 のことである。
「現在、麻原の妻(66)と次男(31)がアレフの支配を強めています。妻は、権力は一度手放すと返ってこないと言い、次男を教祖に就かせようとしている」
そして、彼らが求めるものこそ、金だと指摘する。
「18年以降、アレフは被害者賠償を一切やめてしまい、一方で20年ごろからは資産隠しを進めるようになった。公安調査庁は約7億円の資産を持っていると見積もっているようですが、私は10億円くらいはあるとみています」
金に固執し続けた麻原の姿が浮かんでくるが、今なお麻原を信奉する者たちは、何を目指しているというのか。
「現時点でテロを起こすのは難しくとも、組織が大きくなり自信をつけると、かつての麻原のように錯覚してしまう可能性がある。麻原は2人の息子を王権継承者と定めましたが、これが教団内ならともかく、世界の王と勘違いし始めるとどうなるか。麻原は次男にアクショーブヤという教団名(ホーリーネーム)を与えており、これはオウムの中では“悪業を重ねる者は殺していい”と解釈される言葉です」
麻原が説いた“ポア”に通ずる論理であり、麻原とその家族を最も近くで見てきた者が抱く、これからの懸念である。
撮影・福田正紀
「週刊新潮」2025年3月27日号 掲載