東京・狛江の住宅で1月、大塩衣与さん(90)が殺害され高級腕時計などが奪われた事件で、警視庁は23日までに4人の容疑者を逮捕し、さらに1人の逮捕状を取っている。別件で逮捕され、狛江など広域強盗事件での指示役の疑いがある渡辺優樹(38)ら4容疑者の誰かが「闇バイト」の募集で今回の逮捕者らを集め、実行役にした可能性がある。闇バイトは警察が徹底的につぶしにかかっているが、他の犯罪グループは手を替えて募集を続けているようだ。
「ルフィ」などと名乗る指示役が実行犯を動かした広域強盗事件で「闇バイト」が注目されるようになる以前には、SNSに「#闇バイト」があふれていた。誰でも登録、閲覧できるSNSで「#闇バイト」と検索すると、「黒い、グレー、ホワイトお仕事あります。短期間で一気に稼ぎたい方ぜひご連絡ください」「高額バイト運び案件 関東関西両方あります 報酬30―」とさまざまな募集がなされていた。
「ルフィ」の可能性があり、特殊詐欺に絡む窃盗事件で逮捕された渡辺容疑者の手口は、募集してきた人に運転免許証などの画像を送らせ、引き換えに高額な「仕事」を与えていた。仕事とはいっても、特殊詐欺の「受け子」や「出し子」、「たたき(強盗)」の実行役という犯罪だ。「普通のアルバイトに応募する際にも履歴書を書かせるだろ」という理由で個人情報を握り、「ばっくれたら家族に危害を加える」と脅し、盗んだカネを自分の懐に入れないようにして強盗を強制させていた。
一連の事件の影響を受け、警察が徹底的にSNS上の闇バイトの募集、応募をつぶし、現在は皆無といえる状況になった。闇バイトという単語はSNSからすぐに削除され、全国の警察が「#闇バイト」「#裏バイト」を使い、検索した人を警察のアカウントに誘導し、「闇バイトは犯罪です。手を出さないで」「#闇バイトは、詐欺や強盗などの実行犯を募集する書き込みのおそれがあります」と警告を出している。
しかし、いたちごっこでもある。特殊詐欺に詳しい元暴力団関係者は「ルフィは特殊詐欺グループの一部。まだまだ特殊詐欺グループは存在します。SNSで闇バイトという単語は使えなくなったので、『#副業紹介』などと言葉を換えたようです」と語る。
また、古典的なスカウト方法も使われるようになったという。
「SNSで『金がない』『遊ぶ金が足りない』『スマホ代払えない』などと検索し、そういう不満をつぶやいたアカウントに無差別にダイレクトメール(DM)を送るというやり方です。自ら応募してくる人よりもスカウト率は低いですが、かつてはDMでのスカウトが主流だった時もあります。返信する人がいたら、そのアカウントの過去の書き込みから、住所や家族の名前などを徹底的にサーチし、脅して従わせるのです」(同)
ちなみにSNSが普及する前は、闇金からカネを借りている人に借金返済を持ち掛けてスカウトしていたという。また、職業安定所などの前で張り込み、カネに困って何でもやりそうな人に直接声を掛けるというやり方だったという。
「スマホが普及したため、スカウト相手がどんどん若くなってきたんです。だから、特殊詐欺の受け子を中学生がやって、すぐに怪しまれバレたという事件もありました」(同)
これからも犯罪の募集は続き、その担い手も尽きることはなさそうだ。