岸田文雄首相が議長として5月に広島市で開催する先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)は19日で開幕まで3カ月に迫った。
岸田首相は広島サミットで「核兵器のない世界」実現に向けたメッセージを発信したい考えだ。ロシアに対する制裁とウクライナ支援の継続・強化も打ち出す見通し。ウクライナのゼレンスキー大統領が出席すれば国際社会への強いメッセージとなり、実現できるのか注目される。
ロシアは核兵器を使用する可能性をちらつかせ、威嚇している。岸田首相は、自身の地元でもある被爆地・広島市で開くサミットで、G7の意思として「使用は許せない」と改めて確認したい考えだ。気候変動対策も重要な議題となり、岸田政権が掲げる「GX(グリーントランスフォーメーション)」など脱炭素社会を目指す取り組みをアピールする。
ロシアによるウクライナ侵略は終結が見通せず、広島サミットで最大のテーマになりそうだ。侵略開始から1年を迎える今月24日、岸田首相はG7首脳によるオンライン会議を開催する。20日にも開催を正式発表するとみられる。
オンライン会議では、ウクライナ支援強化を明記した首脳声明の発表を調整している。この会議にゼレンスキー氏を招くことを検討しており、同氏が広島サミットへの参加に言及する可能性もある。昨年のG7エルマウ(ドイツ)サミットはオンライン参加だったが、コルスンスキー駐日大使は15日の共同通信のインタビューに対し、招請があればゼレンスキー氏の現地参加を本格的に検討したいとの意向を示した。
岸田首相は「ロシアに一刻も早く侵略をやめさせるために必要なのは、国際社会が結束し、強力な制裁、ウクライナ支援を継続していくことだ」と強調している。この観点からも、ゼレンスキー氏が広島入りすれば、その意義は大きい。ただ、戦況や日本国内の警備体制など課題も多く、松野博一官房長官は17日の記者会見で「招待国は現在検討中であり、何ら決まっていない」と説明した。
一方、岸田首相が1月のゼレンスキー氏との電話会談で要請されたウクライナ訪問は、いまだ実現していない。日本は議長国でありながらG7で唯一、侵略開始後に首脳や閣僚がウクライナ入りしていない。
18日にもドイツ・ミュンヘンで、林芳正外相がウクライナのクレバ外相と会談し、「岸田首相のウクライナ訪問実現が重要だ」と伝えられた。岸田首相は現地を訪問し「G7議長国として強い意思を示したい」(首相周辺)考えだが、安全確保や国会日程との兼ね合いの問題で決断できずにいる。(田中一世)