今年8月から、名古屋刑務所では刑務官が受刑者を「さん付け」で呼ぶ取り組みをスタートさせたという。名古屋刑務所での受刑者の扱いは他と比べても酷いとの評価がかねてあり、受刑者が死亡するなど重大な事件も発生していた。しかし一方で刑務官が受刑者にバールで殴られて重傷を追う事件も発生――矯正施設のあり方が改めて問われている。
【写真を見る】懲役太郎の異名も…服役を経験した組長たち 名古屋刑務所の刑務官が受刑者に暴行や暴言を繰り返した問題が報じられた後、検証を重ねてきた第3者委員会は6月21日、まとめた提言を斎藤健法相に提出した。
同刑務所では、2021年11月から22年9月にかけて刑務官22人が3人の受刑者に対し、顔や手をたたいたり、顔にアルコールスプレーを噴射したりするなどの暴行行為が繰り返されてきたという。問題が相次ぐ名古屋刑務所「暴行や不適切な処遇は419件にものぼり、看過できないレベルとされました。加えて刑務官らは受刑者を“懲役”“奴ら”“あいつら”などと呼ぶことがよくあり、第3者委員会から人権意識の希薄さを指摘されました」 と、担当記者。100年ぶりに監獄法が改正 名古屋刑務所では、かつても問題というよりは事件といえるレベルの不祥事が起きている。2001年に男性受刑者が刑務官から消防用のホースで肛門内に放水を受けて直腸破裂で死亡。2002年には男性受刑者2人が腹部を革手錠付きのベルトで締め付けられ、1人が死亡、1人が重傷を負っている。この件で刑務官らが特別公務員暴行凌辱致死傷の罪などで起訴され、1人を除いて有罪判決が確定。これをきっかけに、実に100年ぶりに監獄法が改正されることとなった。「ヤクザ時代に私は5度服役したので、自戒をこめての話になりますが」 と話すのは、竹垣悟氏(元山口組系義竜会会長で、現在はNPO法人「五仁會」を主宰)。「2001年の事件が露見するまで、名古屋刑務所の厳しさは全国でも一二を争うと言われてきました。その後は、刑務所側がかなりの部分で態度を軟化させる必要があったと聞いています。問題は、そうやって刑務所の方が“やさしく”なった分、受刑者の一部が図に乗るというか、刑務官の足元を見るようなことも出てきたと聞いています。となると、冗長する受刑者側を抑えるために刑務官側もより強い態度で接する必要が出てきて……とエスカレートした結果、今回報じられたようなことが発生したという流れのようです」(同)「全治84日」の重傷 暴行はもちろん許されないのだろうが、かといって「さん付け」にすることが良いのか。「懸念されるのが、矯正施設としての体を成さないのではないかということですね。ただでさえ、無料で雨風をしのげる施設だと刑務所を捉えて服役しては舞い戻ってくるという人たちが一定程度いる中で、“さん付け”などで居心地の良さを実感するようになれば、それに拍車がかかりかねませんね」(同) ネット上などでは、そもそも刑務所は居心地の悪い場所であるべきだろう、といった声も少なくない。もちろん刑務所側もそういう世論は承知のうえだろうが、何せ自分たちの不祥事が原因なので、第3者委員会の提言を無視することは当然できない。 もっとも、「さん付け」反対論に追い風となるような事件も判明している。 名古屋刑務所の50代の受刑者が刑務作業中に刑務官をバールで殴り、「全治84日」の重傷を負わせ、8月25日に送検されたことが報じられたのだ。事件そのものは「さん付け」スタートよりも前で、刑務官の指示が気に食わなかったことが犯行の動機だという。こういう受刑者を丁重に扱えばトラブルは減るのだろうか。デイリー新潮編集部
名古屋刑務所の刑務官が受刑者に暴行や暴言を繰り返した問題が報じられた後、検証を重ねてきた第3者委員会は6月21日、まとめた提言を斎藤健法相に提出した。
同刑務所では、2021年11月から22年9月にかけて刑務官22人が3人の受刑者に対し、顔や手をたたいたり、顔にアルコールスプレーを噴射したりするなどの暴行行為が繰り返されてきたという。
「暴行や不適切な処遇は419件にものぼり、看過できないレベルとされました。加えて刑務官らは受刑者を“懲役”“奴ら”“あいつら”などと呼ぶことがよくあり、第3者委員会から人権意識の希薄さを指摘されました」
と、担当記者。
名古屋刑務所では、かつても問題というよりは事件といえるレベルの不祥事が起きている。2001年に男性受刑者が刑務官から消防用のホースで肛門内に放水を受けて直腸破裂で死亡。2002年には男性受刑者2人が腹部を革手錠付きのベルトで締め付けられ、1人が死亡、1人が重傷を負っている。この件で刑務官らが特別公務員暴行凌辱致死傷の罪などで起訴され、1人を除いて有罪判決が確定。これをきっかけに、実に100年ぶりに監獄法が改正されることとなった。
「ヤクザ時代に私は5度服役したので、自戒をこめての話になりますが」
と話すのは、竹垣悟氏(元山口組系義竜会会長で、現在はNPO法人「五仁會」を主宰)。
「2001年の事件が露見するまで、名古屋刑務所の厳しさは全国でも一二を争うと言われてきました。その後は、刑務所側がかなりの部分で態度を軟化させる必要があったと聞いています。問題は、そうやって刑務所の方が“やさしく”なった分、受刑者の一部が図に乗るというか、刑務官の足元を見るようなことも出てきたと聞いています。となると、冗長する受刑者側を抑えるために刑務官側もより強い態度で接する必要が出てきて……とエスカレートした結果、今回報じられたようなことが発生したという流れのようです」(同)
暴行はもちろん許されないのだろうが、かといって「さん付け」にすることが良いのか。
「懸念されるのが、矯正施設としての体を成さないのではないかということですね。ただでさえ、無料で雨風をしのげる施設だと刑務所を捉えて服役しては舞い戻ってくるという人たちが一定程度いる中で、“さん付け”などで居心地の良さを実感するようになれば、それに拍車がかかりかねませんね」(同)
ネット上などでは、そもそも刑務所は居心地の悪い場所であるべきだろう、といった声も少なくない。もちろん刑務所側もそういう世論は承知のうえだろうが、何せ自分たちの不祥事が原因なので、第3者委員会の提言を無視することは当然できない。
もっとも、「さん付け」反対論に追い風となるような事件も判明している。
名古屋刑務所の50代の受刑者が刑務作業中に刑務官をバールで殴り、「全治84日」の重傷を負わせ、8月25日に送検されたことが報じられたのだ。事件そのものは「さん付け」スタートよりも前で、刑務官の指示が気に食わなかったことが犯行の動機だという。こういう受刑者を丁重に扱えばトラブルは減るのだろうか。
デイリー新潮編集部