“おむつ毎月無料配送”育児に奮闘中の男性アナが見た「子育てに寄り添う街」

神戸市の隣に位置する、兵庫県明石市。日本全国で少子化が進む中、なんと9年連続で人口が増加。出生率も全国平均を大きく上回っています。背景に何があるのか。その秘密を、2児の父でもある板倉アナが取材しました。
(取材:テレビ朝日 板倉朋希アナウンサー)
■キーワードは「5つの無料化」 子育て支援で人口増
明石市が運営する親子交流スペース「ハレハレ」。8月のとある日の午後、現地を訪れてみると、多くの家族連れで賑わっていました。実はここ、子育て世帯にとってはうれしい特典があるんです。
利用中の親子:「無料なので、役に立ちますね」
そう、こちらの施設は市民であれば無料で利用できるんです。ショッピングモールなどで同様の施設を利用しようとしたら、ひとり1000円くらいはかかりますよね。私も2人の子供がいるんですが羨ましいなと思いました。他にも市内にある天文科学館やプールなども、子どもは無料。明石市民からは、「暑い日でも遊ばせてあげられていい」「いろんな催しがあって孤独になりにくい」などの声が聞かれました。
そんな明石市ではいま、ある現象が起きています。市内で2人の子どもを育てるご家庭を訪ねると…
西海修平さん(29):「(元々は)神戸市に住んでいたんですが、明石市は子育て支援が充実していて、ここに行き着きました」
子育て政策に魅力を感じて、他の市町村から明石市へ移住するファミリーが増えているんです。その結果、市の人口も9年連続で増加。なぜここまで明石市が人気なのか。そのキーワードは「5つの無料化」です。
◆5つの無料化
1 「遊び場の利用が無料」
2 「満1歳まで、おむつなどを毎月無料で配送」(おむつ定期便)
3 「第2子以降の保育料が無料」
4 「中学校の給食費も無料」
5 「そして高校3年生までの医療費も無料」
子育てにかかる、ありとあらゆるものが「無料」なんです。
妻の紗希さん(29)も「2人目も保育園預けようとした時に、無料というのはとてもありがたい」と話します。お腹の中には、3人目のお子様がいるということです。
妻・紗希さん:「おむつの定期便も利用するし、不安はないです」
若いファミリー層にとって、充実した無料サービスのおかげで、安心して子どもを産み、育てることができるのが明石市の魅力なんだそうです。実際、出生率も全国平均と比べて大幅に高くなっています。
■子育て支援が生む“好循環” 商店街も活気が
このように子育て政策に力を入れた結果、地域経済に好影響が出ています。駅前にある商店街に行ってみると、買い物客で賑わっていて、家族連れの姿も目立ちました。
商店街を訪れた市民:「昔は閑散としているイメージがあったんですけれど、どんどん人が増えてきて、商業施設も増えて住みやすいなと」
市内に移住する人が増えるなか、再開発が進んだこともあって、明石駅周辺の人通りは最大で1.7倍に。新規の出店数も2.4倍に増えたんだそう。
魚の棚東商店街振興組合 安原宏樹理事長:「(市の政策で)子育てにすごく力を入れるということで、商業者からすると『そっちばっかり力入れないで』という本音はあったんですね。ただ子育てを支援することで、人口が増えて、人口が増えるということは結局経済も回ると」
明石市の泉房穂市長に、なぜこのような好循環を実現できたのか聞いてきました。
明石市 泉市長:「子どもに力を入れたら、地域の経済は良くなるはずだと思っていましたけれど、ここまで一気にくるとは正直驚きです。ご商売人の方々が『市長!これからは商売人やなくて子どもや!』と普通におっしゃいますから」
市長によれば、「5つの無料化」は、市の予算の2%弱で可能だといいます。
明石市 泉市長:「子どもを産みたいのに、お金が理由でためらう社会というのはもったいないですよと思うので。基本的に子育てにかかる費用は、みんなのお金でみましょうと」
また「市長への意見箱」などを通じて、市民の声が直接市に届き、職員全体に共有されています。
明石市 佐野洋子統括理事:「市民から直接『助かっている』という声を頂く機会が増えた。職員もモチベーションというか、自分たちの日々の仕事が、子育てしやすさにつながる実感は持てたかなと思います」
明石市 泉市長:「明石市は人口も増えているんですけれど、税収も増えているんですよ。その新たな税収を財源として、今度は高齢者施策も次々とサービス向上できている。『子どもに優しい街は すべての人に優しい街』という考え方ですから、困ったときはお互い様、困ったときに大丈夫だと言い合える街を作りたい」