2022年の「家計調査」が発表され、最新の家計の状況が明らかになりました。今回は「子どもの教育費」、そして「子どもへの仕送り額」に注目してみていきます。
総務省『家計調査 家計収支編』(2022年)が発表され、昨年の家計の状況が明らかになりました。
いま、なにかと賑わせている物価高は昨年の1月あたりからニュースになり、食費や光熱費などが上昇。消費支出全体では前年比104.2%。「食費」は103.1%、「光熱・水道費」は前年比113.9%。また行動制限が緩和されたことで、レジャーなどの「教養娯楽費」が増え、前年比109.4%となりました。
一方、家計における「教育費」は年13万7,262円(2人以上世帯)で、昨年比96.1%とマイナスを記録しました。細かくみていくと学費にあたる「授業料等」は前年比93.8%、学校に付随する「教科書・学習参考教材費」は98.9%と前年比マイナスを記録する一方で、学校外の教育費となる「補習教育費」は前年比103.1%とプラスを記録しました。
都道府県ごとにみていきましょう。トップは「埼玉県」で年間33万5,521円。続いて「神奈川県」が25万3,936円。「滋賀県」「東京都」「岐阜県」と続きます。一方で最も少ないのが「青森県」で6万6,495円。続く「宮城県」が6万7,633円。「島根県」「山梨県」「鳥取県」と続きます。
ただし、1世帯当たりの18歳未満の人数に注目すると、トップの埼玉県は0.73人。2位の神奈川県は0.45人と差異があります。そのあたりを補正して、改めて1世帯当たりの教育費を比べてみましょう。
補正後のトップは「神奈川県」で年間教育費は56万4,302円。続く「埼玉県」は45万9,618円。「東京都」「岐阜県」「滋賀県」と続きます(図表1)。一方で補正後、最も教育費が低かったのが「宮城県」で11万2,722円。続く「島根県」は11万9,153円。「青森県」「鳥取県」「福井県」と続きます(関連記事:『都道府県「子どもの教育費」ランキング…』)。
【図表1】都道府県「子どもの教育費」上位5 出所:総務省『家計調査 家計収支編』(2022年)より算出※数値は1世帯当たりの18歳未満の人数で補正※実際の家計調査は県庁所在地等ごとの調査であり、地域の実情とは異なる場合がある
1位の「神奈川県」と47位の「宮城県」には実に5倍もの差が生じていますが、どこにそれほどの差が生じる原因があるのでしょうか。「授業料等」を比較すると、「神奈川県」は41万1,629円、「宮城県」は7万8,952円と、5倍以上の差が生じています。「教科書・学習参考教材費」は1.9倍、「補習教育費」は4.7倍です。
さらに詳しくみていくと、「神奈川県」では小学校から大学まで通じて私立志向。一方、宮城県は完全な国公立志向です。さらに大学の授業料等の支出も低く抑えられています。私立志向の強い神奈川県では、補習教育費も割かなければならないのでしょう。子どもの進路によって、教育費は左右されているようです。
もうひとつ、教育に関連する支出として、子どもへの仕送りにあたる「国内遊学仕送り金」についてもみていきましょう。国内遊学仕送り金は学校教育法に定める学校と、国内の予備校在学者に対する仕送り金。生活費、下宿料、家賃、教育費などの全部、または一部を継続的に補助するための支出で、クラブ活動費なども含みます。
1世帯当たりの18歳未満の子どもの人数で補正した数値で、全国平均は年間9万8,485円。そのなかで最も仕送り額が多いのは「群馬県」で38万3,069円。「大分県」「三重県」「山梨県」「静岡県」と続きます(図表2)。一方で最も仕送り額が少ないのは「千葉県」でわずか649円と、圧倒的に仕送りによる支出が少なくなっています。大学の多い大都市とその近郊は子どもへの仕送りが少ない傾向にあります(関連記事:『都道府県「子どもへの仕送り額」ランキング…』)。
【図表2】都道府県「子どもへの仕送り額」上位5 出所:総務省『家計調査 家計収支編』(2022年)より算出※数値は1世帯当たりの18歳未満の人数で補正※実際の家計調査は県庁所在地等ごとの調査であり、地域の実情とは異なる場合がある
地域によって、教育費のかけ方はさまざま。ただひとついえることは、色々な支出を削ってでも子どもには“良い教育を受けさせたい”という親の思いではないでしょうか。とはいえ、人生の三大支出のひとつに数えられる「教育費」は、費用のかけ方によっては家計破綻を引き起こすもの。いつごろ、どれくらいかかるかはある程度わかるものなので、計画的に準備をしたいものです。
なお家計調査は、実際には県庁所在地等単位の調査であり、今回紹介した数値が地域の実情と異なる場合があること、また教育世帯の実際の支出額ではないことに留意する必要があります。